第六十話
「やっと! 海ですー!」
会長の提案で一週間缶詰め状態で課題を終わらせ、やっと解放されたのが昨日の夜。
俺と陽斗、会長は事前にちょこちょこやってあった甲斐あって三日で終了。
まぁ想像ついてると思うけどその他の三人がやばかった。三人とも、長期休み最終日に泣きながら課題を終わらせるタイプで、今回も会長が「まだかかるようなら私達三人だけで夏を楽しませてもらうわ」と言ってやっと動いた。
結果、死に物狂いで課題に向かい、四日。晴れて課題と言う呪縛から解放された。
そして今日、目の前には青い海、白い砂浜、圧倒的美少女四人。こんな贅沢セットが揃う。
もちろん男の方が着替えは早いので、パラソルの設置やらビーチボール、浮き輪なんかを膨らませるのは男子の仕事だ。
「待たせたわね、二人共。主にハルくん」
「おまたせしました! それと準備ありがとうございます!」
「……おまたせ」
「二人とも待ったー?」
パラソルを立て、レジャーシートを敷いてビーチチェアを置いたところで後ろから声がかけられた。
(覚悟はいいか、陽斗)
(おう、死ぬ時は一緒だ)
素早くアイコンタクトで意思疎通をして、同時に振り向く。
「「…………神は存在した」」
しかも複数。
「ハルくんまで巻き込んで変なこと言ってないで感想ぐらい言ったらどうなのかしら」
腰に手を当て、こちらをジト目で見下ろす神の一柱、もとい会長。黒のモノキニで、普段の清廉さと逆の妖艶さが引き立っている。
「そうですよ! わ、私達だって今日のために準備してきたんですから!」
葵衣は水色のフリルのついたビキニ。いつもと違い緩くウェーブのかかった髪が新鮮で、とてもよく似合っている。
「葵衣はダイエット頑張ってたもんねー、あ、緋彩もかー」
葵衣と緋彩をからかうように笑うオフショルダーのビキニでパレオを巻いた叶恵。スレンダーなモデルのような体型で、少し焼けた肌が眩しい。
「……うるさいまな板」
そして最後に緋彩。着ていたのは白のクロスホルタービキニ。だと言うのに、真っ白な肌がより一層際立っている。
「三人ともめっちゃよく似合っててかわいい。あと会長もいつもと印象違っていいですね」
「そうでしょうそうでしょう! カナちゃんと何時間もかけて選んだかいがありました!」
どやぁ、と胸を張る葵衣と両脇で苦笑する緋彩と叶恵。うーん、絵になるなぁ……。
本当はもっと熱く語りたいところだが、緋彩の一件で反省したので今はグッと抑えておく。
で、準備再開しようとしたら、抑えが効かなくなってるバカップルが一組。
「和香奈めっちゃかわいいしいつもと全然印象変わるしもうやばい」
「ありがとハルくん」
「髪型も変わってていい!」
「う、うん。褒めてくれるのはとっても嬉しいわ」
「いつも神様みたいなかわいさだけど今日は一段とかわいい!」
「ちょっともうそれぐらいに……」
「やっぱり和香奈は俺だけの女神様だな!」
「あぁうぅぅ〜……」
……まぁ放置でいいかな。変に絡むのも悪いし。好きにさせとこ。
「いいなぁ……」
「あんな風に言ってもらいたいなー」
こっちをチラチラ見るんじゃない……。そんなわざとらしくおねだりしないで我慢してますみたいな顔されても今は絶対言わないからな!
「……二人とも、海楽しめなくなる。うたのん止まらなくなるから死んじゃう」
「「え」」
「……体に力入らなくなって顔も見せられない状態になりたいなら止めない」
二人を止めてくれたのはありがたいけど素直にありがとうって言いづらいなぁ! 一個も間違えてないけど! 言い方よ!
「そ、それはちょっと困るので“今は”やめときます……」
「そうだね!“今は”やめとこっかー!」
二人も期待しすぎでしょ。一体何されると思ってんだ。ただ褒めるだけだぞ。
「それに今日は色々計画も練ってきましたし、それを無駄にするわけにもいきません」
……コソコソ話してるけど俺の真後ろで喋ってたら全部聞こえるんだよなぁ……。なんか荷物漁ってる音も聞こえるし、俺何させられんだろ……。
まさか日焼け止め塗れとかそんなベタなこと言われたりはしないだろうし。……言われないよな?
「詩乃ー、ちょっといいー?」
「……女の子にとって、日焼けは天敵」
「日焼け止め、塗ってください!」
言われたわ。日焼け止め塗れって。




