第五十八話
「よーしお前ら、明日から夏休みだが……はしゃぎすぎには注意しろよ? そんじゃ解散〜! 掃除あるやつと補習の奴は残れよ〜」
担任の一言でLHRが終わり、ソワソワしていたクラスメイト達が一斉に動き出す。
ある者は葵衣の元へ、ある者は緋彩の元へ。そしてまたある者は叶恵の元へ、どこから持ってきたのか粉砕覚悟と書かれたバンダナを腕に巻き、戦場へと赴く戦士のような顔をして歩いていく。
その覚悟はすごいけど百パーセント粉砕されるって気づいてるのかな。葵衣達だけじゃなく、そのほかの女子にまでドン引きされてるが……?
「「「「「あ、あの──」」」」」
「「「ごめんなさい!!」」」
「「「「「グハァ!?」」」」」
一撃必殺! 男子達は倒れた!!
一発で致命傷を食らった男子達はその場に崩れ落ち、それでも諦めきれない一部がアンデッドのようにもう一度立ち上がる。
「私達は」
「……うたのんと遊びたいから」
「ごめんねー?」
「「「「……………………」」」」
連携プレーによりアンデッドも壊滅。教室は真っ白になった男子とドン引きする女子、そしてそれを眺める俺と陽斗。
明日から夏休みですがいつも通りカオスです。
……ところでなんで俺は葵衣達に抱きつかれて拘束されてんの? さっきまで男子の対応してなかったっけ?
「それじゃあ私達はこれで失礼します」
「さぁ葵衣の島へレッツゴー」
「ちょ!?」
待て待て待て待て! バイトの予定とか入ってるからまだ行けないんだが!? 流石に葵衣達にバイト先がどことかは言ってないしそれこそ葵衣と俺の生活かかってるんだけど、死ねと?
って、電話? この忙しい時に誰──店長?
「はい、もしもし小野寺ですが──」
『あー小野寺くん? 今この夏休みの間君の代わりに仕事してくれるって人が来ててね? そういうことだからバイト来なくて大丈夫だよ! 友達とお泊まり楽しんでねー!』
それじゃ、と言って一方的に電話を切られ、かけ直しても応答なし。
「詩乃のバイト先には連絡済みで、うちの使用人を一人代理で寄越してありますのでご安心を」
ちなみに家で一番優秀な人を派遣したので仕事面はバッチリです! と葵衣がにっこり笑顔で胸を張る。絶対戻ってきたらバイトクビになるって。俺じゃ満足出来ない体にされそう。
夏休み中最大の問題であったバイトの量が解決。この行動力お化けがなぜホテル街なんかでずっとウロウロしてたのかと改めて問いたい。あと権力ってすっごい。
「あーでも陽斗と遊ぶ約束とかもしてたんだけど」
それこそ陽斗の家に泊まりに行くとかそういう約束もあったし、何より陽斗と二人でっていうことが今年入ってから全然なかったし。
「その点も心配ご無用です! そうですよね!」
「そうだな」
葵衣が同意を求めるように視線を動かした先にいたのは陽斗。
「陽斗!?」
おう、と軽く返事をして、拘束されたままの俺の頭に手を置く。
「俺と和香奈も連れてってもらえることになってんだわ」
「まじか……」
なんかもう最早強制の域に達してるんだが……。なんかグラウンドにヘリも来てるし……。
まぁここまでやってくれたなら心置きなく楽しめるってものかな?行きたくないとかそういう訳でもないし。
「じゃあ私達はこれで」
「……失礼」
「また夏休み明けー」
葵衣達に引っ張られるように教室を出ると、葵衣が大きく息を吐いて、ここまで長かったです……、と呟く。
「金に物言わせたやり方すぎるけどな」
「いいんですよ! これが私のやり方です! それにみんなも招待したんだからいいじゃないですか」
「……いいのか?」
葵衣以外のみんなの顔を見回すと、全員が複雑な笑みを浮かべていた。
そんな中一人俺の目の前に立った葵衣は、
「いいんです! この夏休み中は私の家の島で監禁──幽閉……コホン、ずっと一緒にいてもらいますから!」
と清々しい笑顔で言い切った。




