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第五十四話

昨日はコロナワクチンの副反応でダウンしておりました申し訳ないです

 ショッピングモール内の全国チェーンのカフェ、奇跡的に一番クーラーの風が当たる位置に席を取る事ができてしまったため、快適すぎてその場から動けなくなっていた。


「あー、そろそろ動くか?」


 もうカフェに入ってから一時間近い時間が経っていて、いくら席に余裕があるからと言ってここに居座ることも申し訳なくなってきた。


「……んー、じゃあお支払いしたら呼んで」


 ……まだ緋彩はそんなこと思ってなさそうだが。


「なんか目的があって来たんじゃないのか?」


 適当にプラプラするだけでも楽しいとは思うけど、今みたいにダラダラするのが好きな緋彩が自分から動くなんて何か理由があると思うんだけど、違うかな。


「……はっ!」


 やっぱりなんかあったっぽいな。てか思い出したら準備が早い……。ものの数秒でテーブル綺麗に片付けられてるし。


「……うたのん、早くお支払い」


 急かすくらいなら自分でやってもいいんだけどな……!



 ──────────



「で、今日はなんの用事があってショッピングモールへ?」


「……内緒」


 俺がお金使うような事にならないといいなぁ……。割とさっきのとこの出費が大きかったからもう使いたくない。


 本当は自分の分ぐらい払って欲しいんだけど、さらっと「……奢ってくれてありがと」って言われて金返せって言いづらくなった。


 ……ごめんな葵衣、しばらく豪華なご飯は食べれないかもしれない。でも文句は俺じゃなくて緋彩と叶恵に言ってくれ、毎回出かける度に結構持ってかれるんだ……庶民の感覚とちょっとズレてるから……。


 そんなことを考えながら、緋彩に手を引っ張られて歩いていたので、急に緋彩が止まってぶつかりそうになる。


「ごめん、緋彩。ちょっと考え事してて……」


「……いい、それより……ここ」


「え? ……あー」


 緋彩が立ち止まったのはいつか葵衣ときたあの店。現在女性用水着フェアだそう。


 ……流石に水着選び手伝ってなんて──


「……水着きつくなってた、買う」


「……やっぱそうなるよね……」




「いらっしゃいませー、ってあれ?」


 店に入ってすぐ、いつかの店員さんが駆け寄ってきて、首を傾げる。


「浮気……?」


「違いますよ! そもそもあの子とも付き合ってないです!」


「じゃあ誑しですね」


「誑しじゃ……ないと、思います」


 段々自信なくなってくるな……緋彩達三人のみならまだ否定できたけど、体育祭のあれがあったあとだとなぁ……。


「否定しきれないような状態……いいご身分ですね!」


「その言葉そんなにっこにこで言うものじゃなくないですか?」


「心の中はなんでだよクソ野郎と思ってますよ? 私モテないので」


「前半は置いておいて店員さん美人なんですからモテないわけないでしょ」


「へ?」


 目を丸くしてさっきまでのからかうような言葉も出てこなくなった店員さん。そんな驚くことでもないだろ、逆にこんなに綺麗でモテない方が謎まであるのに。


 そしてしばらく固まったあと、はっとしたように俺の方を見て一言。


「そういうところだぞ少年」


「どういうところだ……」


「女の子といるのにほかの女の子を口説くところ」


「ッスゥー……」


「……むぅ」


 チラッと横を見ると、あからさまに不機嫌そうなオーラを出して、「私の!」とぎゅっと俺の腕にしがみついてくる。


「わぁ、愛されてますねぇ……。浮気されても取り返しに来てくれる女の子なんて少ないですよ?」


「そうですか」


「はい。じゃあ私も満ぞ──お客様との仲も深まったところかと思いますので……今日は何をお探しで?」


「満足って言いかけてませんでした?」


「言ってないです。それで、何をお探しですか!」


 これは、誤魔化し続けるつもりか……これ以上追求しても意味なさそうだな。


「ほら、緋彩。何探しに来たのかは自分で言えよ?」


「……私の、水着。うたのんと、海に行くため……!」


 更に腕の締め付けが強くなってますよ緋彩さん。いくら柔らかくても、その柔らかさにも限界があってね、もう腕に血が回ってないんだよ。


 ん? なんですか店員さん。ま・か・せ・て? この状況理解できるのもちょっと頭おかしいけど、どうやって?


「そうですかぁ……いいですね、海」


「……でしょ」


 自慢げに緋彩が胸を張る。


 店員さんが「はい」と言ってウインク。


 その結果俺の腕は開放される。


 ……緋彩チョロすぎん?


「ではあちらの試着室にてお待ちください。えーと、今回も彼氏さん呼びでいいですか、めんどくさいですし。彼氏さんは私と一緒に来ていただいて……。彼女さん、因みに上のサイズは……」


「E」


「E……分かりました」


 俺はこの日見た店員さんの俺にウインクをしてから緋彩の胸のサイズを聞いた時の一瞬で感情が抜けた瞬間を忘れることはないと思う。

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