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第五十話

 後夜祭。体育祭二日目の夕方から体育館で行われるうちの学校の名物でもあり、これのために体育祭に出ている、という人もいるらしい人気イベント。


 競技、パフォーマンス、パネル、総合四部門の優勝発表。そして各競技毎のMVP。そして一日目二日目それぞれの全体MVP、そして一日目二日目の総合MVPの発表の後、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎって感じだ。


 ちなみに優勝発表はもう終わって、うちの軍は競技、パフォーマンス、パネル二位で総合優勝した。


 俺がめちゃくちゃ煽られたのは言うまでもない。


『さて、まぁ恐らく皆さん予想がついているであろうMVPの発表に入りましょう。まず、各競技のMVPから──』


 副会長がMVP発表を開始するのとほぼ同じタイミングで、二人の人影がこっちに近づいてくる。


 と言ってもまぁ、先に伝えてもらってたから俺は誰だか分かるんだけど。葵衣達も交えての話だから、今一緒にいるのは割と都合が良くて助かる。


「やぁ、詩乃君……と、御三方」


「どうも、和希先輩と、柊会長も」


「「「……………………」」」


 やっぱり警戒してるな三人とも……。いやまぁそれだけ上手くヒール役ができたってことなんだろうけど……重すぎるわ。


「詩乃ちゃん、この空気どうにかしなさい」


「無理です」


 和希先輩と三人の溝が深すぎてもうどうすることも出来ないです。


「……うたのん、別のとこ行こ」


「私も、この人と一緒はいやです」


 ド直球だな……。本人目の前にいるよ? てか叶恵に至ってはもう結構離れたところに場所確保してるし……。


「謝ることすら許されないのか……」


 和希先輩もがっつりへこんでるな……。


(どうにかしてくださいよ柊会長)


(こんな深い溝ができた人達の間をどうやって取りもてって言うのよ!)


(さっきあんたが俺に言ったことだよ!)


(それは会長権限よ!)


(じゃあそれ使って話させろよ!!)


「「あっ……確かに」」


 俺の事を引っ張っていこうとしていた葵衣と緋彩、そしてがっつりへこんでる和希先輩は頭にクエスチョンマークを浮かべてこっちを見ている。


「会長権限よ。小鳥遊さんも連れてきて和希と話しなさい」


「「横暴だ!」」


 まぁごもっともだな。



 ──────────



「──と、言うことなんだけど、信じてはくれないかな? 本当に、すまなかったと思ってる」


 今までヒール役をやっていたことを洗いざらい話して三人に向かって頭を下げる和希先輩。なんだけど、葵衣達の目は厳しい。


「「「………………」」」


 何度見ても……と言ってもこれが二回目だけど、すっごい胡散臭いよなぁ……。なんて言うか、謝罪っていう行動自体が似合わないっていう感じ。


 多分結構時間が経って、一番最初に口を開いたのは葵衣だった。


「……まず第一に、何故こんなことを?」


 さっき説明したのはヒール役をやっていた、ということだけで、その理由については説明していない。まぁ、妥当な質問ってところな気がする。


「それは、私から説明するわ。……端的に言えば、あなた達三人のうちの誰かと詩乃ちゃんをくっつけようとしたのよ」


「……いまいち要領が掴めない」


 正直俺も上手く理解出来ていない。先に連絡をもらって、大雑把には説明してもらってはいたけど全く理解できなかった。


「えーと……じゃあ緋彩さん」


「名前で呼ぶな」


「ご、ごめんね……。橘さんは、この体育祭の期間で、僕に、嫌がらせをされて、そうしたら詩乃君に慰めてもらって。今、詩乃君のことをどう思ってる?」


 ……なるほどな。簡単に言えば、浜名楓の時の真似事ってことか。


 明確な敵を作って、そのストレスを俺が受け止めてあげれば……ってやり方。確かに最近は前よりもアピールがあからさまになった感じはするよなぁ……。私“達”のものって言うことも多くなってる気がするし。


 三人とも悔しそうな表情で和希先輩と柊会長を見てる。まぁこんな完璧に嵌められたんだから当然か。


「でもなんで私達のことを?」


「それは、とある人が私に頼んできたのよ」


「陽斗か」


「赤坂君ですね」


「……赤坂陽斗」


「陽斗くんだねー」


 自慢げに隠し通せると思ってるとこ悪いけどバレバレだぞ会長。


「だ、だだだ誰もハルくんに頼まれたなんて言ってないじゃない!」


 うん、この反応は間違いないな。なら種明かしだな。種ってほどでもないけど。


「じゃあ柊会長陽斗以外からの頼みなんて聞きますか? ましてや他人の恋愛に首突っ込むようなこと」


「絶対聞かないわ!! ……はっ!? 言わないでって言われてたのに!?」


「あーもう私の馬鹿ー!」と頭を振り回す会長。


 陽斗のことになると急に全てのスペックが落ちる女、柊和香奈。ちょろすぎだ。


「この作戦を考えたのも陽斗ですか?」


「違います私ですだからハルくんいじめな──ああああああああ!!」


 ……もういいやこの人ほっといとこ。


 まず和希先輩に謝罪しなきゃだし。これ全容見るとただ単に和希先輩が可哀想なんだよね。


 頼まれたから悪役やったら初対面の後輩の女の子三人に「嫌い!」って言われて避けられて、でもやり遂げなきゃいけない。完全な詰みじゃん。


 それに気づいた三人は冷や汗ダラダラでこっちを見ている。うん、じゃあ謝ろっか。


「「「「和希先輩、大変申し訳ございませんでした!!」」」」



 和希先輩の困惑したような「えぇ……」という声で、俺達の体育祭は幕を閉じた。

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