第四十七話
体育祭、二日目。
今日も救護係の仕事は忙しい。というか、俺が忙しい。
なぜって、俺が指名されて女子生徒の所に行かなきゃ行けないから。自分で言うのは申し訳ないが、どうやら昨日のあれのせいで人気が爆発したらしい。三人がほっぺた膨らませて怒ってきたから間違いなさそうだった。
「俺なんて全然普通なんだけどなぁ……」
めちゃくちゃ恥ずかしいことをしてたのはもうわかってる。でもさ、俺だよ? ただのフツメン、陽斗と一緒にいる名前も知らない人、ぐらいのポジションだったよ多分。普通、キモッ、ってなって終わりぐらいじゃない?
「小野寺くーん!!」
「はい、どうされましたか?」
「ちょっと、頭クラクラしてきちゃって……。救護スペース連れてってくれないかな」
「分かりました……けど、本当に体調悪いのかだけ、チェックさせてもらいますよ?」
こんな感じでわざわざ名前を呼んでくる人が多いんだよな。しかも本当に体調崩している人がいると困るから断れないのがまた大変。
「立ちくらみとか目眩とかはありますか?」
「んー、多分大丈──あれ?」
「──っと、大丈夫じゃないですね」
訂正するわ。体調崩してるのに気づかない人見つけられるからよし。立った瞬間に倒れ込むぐらいってやばいな。支えられてよかった。
「……汗もかいてないのか」
「そうそう、気合い入れて化粧してきたから流れなくてよかったんだけど……って、え!?」
えっ!? じゃないんだよ。こんなフラフラな状態の人歩かせるわけないだろ。何も言わずにおぶったのは申し訳ないけど静かにしててください。
てか普通に熱中症の症状出てるのに呑気だなこの人。ちょっと怒りが湧いてくるまであるぞ。さっさと救護スペースまで連れてかないと。
「目眩や立ちくらみ、発汗異常は熱中症の症状です。気をつけないと本当に手遅れになりますよ?」
「は、はい……」
ただ俺の語気が強くてビビってるだけなのか反省してるのかわかんないけど、まぁいいかな。印象に残っててくれれば再発は防げるし。
「この人よろしくお願いします」
救護スペースに運んできた先輩をおろして、先生にパス。「君がモテモテなおかげで小さい体調不良とかも見逃しにくくて助かってるよ」とか言われたけどスルーしておいた。別にモテてないし……多分。
多分陽斗とか和希先輩とかが俺の今やってる事してたらもっと人集めてただろうし。
「まぁ、好意寄せられて嫌なことなんて──」
「「「詩乃」」」
「……スゥー。……えーと、三人とも頑張ってる?」
今絶対聞かれちゃいけないとこ聞かれたなぁ……。またお説教ですか三人とも。
あ、そうみたいですね。みんななんか視線が冷たいや。
「……そんなことより」
「今のってどういうことですか?」
「ちゃんと説明してくれるんだよねー?」
さっきのお説教って本気じゃなかったんだな……。ガチの時は目が冷たくなって圧がやばい、と。
はい、現実逃避終了。
「俺はただ仕事してるだけだぞ?」
間違ったことはなにも言ってない。ただちょっと呼ばれるのが多いだけ。多分三人が怒ってるのはそこじゃないかもしれないけど。
「……そこじゃない。問題は──」
「「「詩乃がデレデレしてること」」」
やはりといえばやはりなんだけど、そんなにデレデレして見えるのか?
「綺麗な先輩に呼ばれたと思ったらイチャイチャデレデレ! 私たちだけじゃ不満ですか!?」
「い、いや──」
「言い訳は結構です! マンネリですか? そうなんですか!?」
唸るような声をあげながら葵衣が睨んできて、それに同調するように緋彩と叶恵もすっごい深く頷いている。
こらそこ、「修羅場だー」とか言いながら笑わない。こっちは割とマジでピンチなんだよ。弁明の余地なんてなさそうだし。
ていうか、はぁ……。
「こんな可愛い三人に囲まれてて他の人に目移りなんてするわけないだろ……」
「「「なっ!?」」」
「……え? ……あっ」
久々にやらかした……? 反応見る感じそうだよね……。いや、本心だよ? 本心だけどさ。恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ!!
三人も顔真っ赤だし俺も顔めちゃくちゃ熱い。
あ、叶恵と目が合った。
「あ、えっと……ま、また後でー!!」
二人は?
「わ、わわわ私もこの後の競技でなきゃなので、失礼しました!!」
「……恥ずかしいからばいばい」
「お、おう」
二人もどこかに走っていってしまって、残されたのは俺一人。
「あ、弁明できてない」




