第四十二話
ついに、この日がやってきた。全校生徒が熱狂する、体育祭の日が!
朝から盛り上がりは最高潮。一つ一つの競技が行われる事に雄叫びや黄色い悲鳴が上がる。
が、その分熱中症などで倒れる人や怪我人も多いわけで。
看護係に入っている俺は大忙しである。
「見るのは自分達の軍だけでいいとは言われたものの……」
それでも百人以上を見て回るのはちょっと厳しいよな……。今だってこっちに走ってくる女子の先輩が急にコケたりしないとは限らない──ってまじで足ひねった!?
「きゃっ」
「っと、大丈夫ですか? 足ひねったみたいですけど怪我は?」
危なかった……抱きとめられてなかったら他のとこも擦りむいたりしたかもしれないし、よかった……。
「だ、大丈夫です……足は少し痛い、ですけど」
「そうですか……じゃあ念の為救護スペースまでお連れしますね」
よいしょ……やっぱり女子って軽いな。申し訳ないけど、大人しくお姫様抱っこされててくださいねー……ってあれ? 顔赤い……?
「あの、水分とかって──」
「べ、別にそんなんじゃないので大丈夫です早く連れてってください!」
「あ、はい……」
心配だっただけなんだけどな……そんなすごい勢いで否定しなくても……まぁいいけど。
先輩を救護スペースに連れて行って、とりあえず空いていた椅子に座らせて、先生が来るまで安静にしておいてくださいね、とだけ言って救護スペースを出た。
「そういえばあの人最初に俺の事フツメンみたいなこと言ってた人じゃね?」
綺麗な人なのになぁ……集団の中だし悪い空気に流されただけだと信じたいな。さっきはすごい素直だったし。
──────────
まじでなんでだ……? 俺が担当する人女子ばっかりなんだけど……。しかも皆さん綺麗な人ばっかり。女子の方が体が弱いのは分かる。でもおかしいだろ、午前中二十人ぐらい見つけたうちの十六人女子って……!
あと皆さん楽しいのは分かるけどちゃんと水分とったり怪我に注意したりして欲しい。
熱中症とか怪我とか、程度は違えどどれも危ないことですからね。
「生徒会執行部より連絡致します。これにて、午前の部を終了致します。各自昼食をとり、一時三十分に各軍の桟敷に集合してください。繰り返します。午前の部──」
……もうそんな時間か。てか会長自ら放送すんのな。放送部もいるのに。
「ま、いいや、昼飯だ昼飯〜!」
今日は水筒に味噌汁も入れて持ってきた。家での食事メニューをほぼ完全再現できている……!
「……あ、うたのん。おつかれ」
「そっちこそおつかれ、緋彩。二人は?」
「……屋上。うたのん連れてきてって言われた」
それでわざわざこの人の波に逆らって進んできたのか……かわよ。
「……むぅ、まだ撫でるタイミングじゃない。子供扱いしないで」
顔はにっこにこですよ、緋彩さんや。でもまぁ、やめろって言うなら辞めるけどね?
「……あっ、やめるな」
「はいはい」
「…………さっさとあおちん達の所行く」
そっぽ向いて頬を膨らませていても、手をぎゅっと握ったままの緋彩。
ちょっと周りの方々、ニヤニヤしすぎじゃないですかね……?
「やー、待ってたよ。詩乃君」
「なんであなたがいるんですか……」
「ごめんなさい、詩乃……」
「強引に入られちゃったー」
葵衣達と一緒にいたのは、和希先輩。葵衣に預けた弁当を開けて、勝手に食べようとしているところだった。
俺が来たのを見るなり二人は俺の後ろに回って、ビビりながら和希先輩を睨んでいる。
「さっさと出てってください」
「嫌だと言ったら?」
「この場であなたの顔がぐちゃぐちゃになるまで殴ります」
「おー、怖っ……でもここ、割と人多いよ?」
「俺がどうなろうと関係ないです」
「そっか、じゃあ僕は退散するよ。じゃあね〜」
葵衣ちゃん達、午後も頑張ってねー、と言いながら、和希先輩はどこかに行ってしまった。
まじで毎日毎日懲りないなあの人も……。これでも前よりしつこくなくなってるけどさ……。後ろの三人まだなんかぶつぶつ文句言ってるし。聞こえないふり聞こえないふりっと。
こういう時はさっさと切り替えないとな。
「それじゃ、変なやつもいなくなったし、昼飯食べるぞ三人とも。腕によりをかけて作ったから、お残しは許さないからな?」
「「「はーい!」」」
……なぁ、早く切り替えないととは言ったけど、早過ぎないか三人とも……?




