第三十四話
「ん〜、おいしー!」
「そりゃあよかった……はは……」
今回は前回の反省を活かしてケーキバイキングを選択したのだが
「もう一時間半食べ続けてまだ延長するの?」
「えー? もちろん、女の子は甘いものに目がないんだよー?」
叶恵様の底なしの腹は一時間半では満たされないようです……。
前回に比べれば値段も安いし、その割においしいと噂のお店ではあるけどね? 背に腹は変えられないからカップル割も使ったけどね? それでもアルバイトしかしてない男子高校生には痛い出費ではあるんだよ……。
テーブルの近く通る店員さんみんな顔真っ青にしてるし、絶対これ叶恵がおかしいって。他のお客さんこんな皿が山になるぐらい食べてないし!
「でも、周り見てみ?」
「………………」
周りをゆっくりと見回して、最後に真顔で俺と目が合った。
「あ、あああと、あげるねー?」
冷や汗をかいて手が震えていたのは可哀想だけど面白かった。
──────────
「次何行こっかー?」
食べ終わったばっかりなのにどっからその元気は湧いてくるのさ……。
ちなみにあのあと叶恵から渡されたのは十皿程。結構きつかったので俺はもうあんまり動きたくない。というか動いたら吐く。
「あんまり動かないので、食べ物系じゃないので頼む……」
「も、もう食べないからー! ……これ以上食いしん坊って思われたくないしー」
後半何言ってたんだ? 全然聞こえなかったけど、顔真っ赤だし……。
「具合でも悪いのか?」
それなら帰らないとだし……でも、おでこはそんなに熱くないな。
「ひゃん!? な、ななななんでもないよー!? どうしたの急にー!?」
え、そんな逃げるようなことですか……? ただちょっと熱あるか確認しただけなんだけど……。
「え、あ、いや、ごめんねー! そうだよね、まず熱あるか確認するよねー! うん! びっくりしちゃったよー!」
だからそんなしょんぼりしないでよー、と叶恵が笑う。そんなしょんぼりしてたかな。まぁ自分じゃわかんないからいいけど。
切り替えて、次どこに行くか考えようとした時、隣で叶恵が「あっ」と声をあげた。
「そうだ、あれいこー!」
「え、まじ?」
叶恵が指さしたのは、いわゆるプリクラというやつ。俺の人生で今まで頭に出てきたことすら数えたほどしかない機械。うん、遠回しに言うのやめるわ。陰キャとは無縁の陽キャの機械だ。これで遊ぶなんて全く頭になかったわ。
「まじまじー! せっかくデートなんだし、ねー?」
確かに放課後二人で遊び行くかって誘ったのは俺だけどさぁ……デートではない…………ことないかもしれない……。ちょっと前まで男女二人で遊び行ったらデートだと思ってたし。じゃあデートなのか。
そう考えるとめちゃくちゃ恥ずかしな。
元々プリクラに抵抗はあるけど、デートとか考えたらもっと行きたくねぇ……!
「あ、でももうちょっと詩乃も楽しめそうなやつやるー……?」
口ではそんな俺の事も考えてる風なことを言ってる叶恵。
顔にプリクラ撮りたいって書いてあるけどね。目がプリクラしか向いてないけどね……!
そんな雰囲気出されたら「プリクラはちょっと……」なんて言い出しづらいったらありゃしない。
「腹いっぱいであんまり動けないし、プリクラでいいぞ」
「やったー! 詩乃愛してるー!」
万歳して喜ぶぐらいなのか……。女子ってわからん。てかそもそも俺があそこで別のがいいって言ってても結局プリクラは撮らされた気がする。なんとなくだけど。
「はいはい、前も言ったけどそんな軽々しく愛を叫ばない」
そしてさらっと抱きつかない。ドキドキしちゃうでしょうが。
「はーい!」
まぁ、すごいにこにこだし、今日は叶恵の日だからいいか。




