第三十三話
「私が、軍団長になった柊和香奈よ。よろしく」
壇上に立った会長がそう言うと、うちのクラス含め、同じ軍の三クラス全員が雄叫びを上げた。
「やるからには全力で勝ちに行きます。ついてくる覚悟はよろしいですか?」
また雄叫びが上がる。やっぱすげぇな、雄叫び上げてるの男子だけじゃなく女子もだもんな。カリスマがあるってこういう感じなんだと思う。
「そして今年は、新たな試みをたくさん取り入れた。その一つ、軍団長による幹部の指名を行うわ」
うん、でもやっぱり欲には忠実だったわ。辞退もできるとは言ってるけど、ほぼ拒否権ないだろうし、第一これ陽斗指名するためだろ。
「全部で八人、内五人は一年生から選んだわ」
……五人、五人ね……なんか大体想像ついたわ。覚悟して聞いてよっと。なんか拒否権ないの多いなぁ……俺。
三年生から一人、二年生から二人幹部が指名されて、ついに一年生の番がやってきた。
「それでは、一年生を発表するわ」
ザワザワと、一年生だけじゃなく二、三年生も期待するように盛り上がり始める。……はぁ、この感じだと本当に拒否できなそうだな……。
周りがザワつく中、俺と目が合った陽斗も肩を竦めていた。
「赤坂陽斗、千代ケ崎葵衣、橘緋彩、小鳥遊叶恵、そして小野寺詩乃の五人よ」
…………やっぱり辞退しようかな……なんか、俺の時だけ、え? 誰? って感じだったしさぁ。うちのクラスの奴しか拍手してくれないのは心にくるって……!
あとそこの名前も知らない先輩方、あの人だけフツメンじゃんとか言わないでください。俺だって自覚はあるんです。だって周りみんな美男美女だし!
「辞退を希望する人はいないわね?」
「あの、俺──」
「いないと言うことで、決定。みんな、拍手!」
辞退、させて貰えませんでした……。
──────────
「それでは、まずはペア障害物競走のメンバーを決めるわよ。多分クラス毎に十二人と、補欠二人、えらばれているはず、その人達はこちらに集まってくれるかしら」
呼ばれて集まってすぐ、「それじゃ、好きな人とペア組んでいいわよ」と言われ、戦争が始まった。
主に葵衣達と会長と陽斗のところで。それ以外の人達はほぼ全員その人達を囲んで俺が私がって感じになっている。
カップルで参加してる人達は平和でいいっすね。
「う、詩乃……」
「……助けて」
「なんかすごい人くるんだけどー……」
玉砕された男子の山の奥から三人がこっちに歩いてくる。
可哀想だけど、仕方ないことといえば仕方ないのかな……? あんながっつかれたら男子でも怖いわ。
あ、陽斗と会長合流できたみたいであっちもあっちで山ができてんな。まぁ会長は目的がこれだったわけだし、見向きもされなかった方達はどんまいということで。
「お疲れ様、で、やっぱり三人は──」
「もちろん詩乃のペアになるためですよ!」
あーうん、そうだよねぇ……。二人も頷いてるし。
後ろの山が怖ぇな……会長のとこの山もこっち流れてきてるし。しかも山の中普通にサッカー部とかのそこそこイケメンな人とかいるんだよなぁ……。
「……誰にする」
誰にするって言われてもなぁ……後ろ怖すぎて迂闊に何も言えないんだよ。それこそ誰か一人選ぶみたいな。
「ハッキリしてよー」
「う……」
三人からの圧にも耐えられないし、後ろの山に攻撃されたらまじで命が危うい。
考えろ、考えるんだ小野寺詩乃。こういう時の最適解になるものは必ず────あ、あったわ。
「じゃあ、三人でじゃんけんして決めてくれ。そしたらみんな平等だろ?」
「……異議あり」
「……聞こうじゃないか」
某逆転が売りの裁判ゲーの主人公のようにポーズを決めた緋彩。この平等極まりない判断基準に異議があるなら聞こうじゃないか!
「……じゃんけんで判断した場合、その後はどうなる?」
「と言うと?」
「……私なんかは、体で見られることが多い」
「なる、ほど……」
緋彩のとこに行ってた男子諸君は……全員目ェ逸らしやがった。後でなんかしらの形で報復してやろうかな。
「……体目当てで来る人達とやりたくない。から、私がペアになる」
「「…………………………」」
いやまじでぐうの音も出ないな。二人も反論出来なくなってるし……。なんか、緋彩って体の使い方上手いよなぁ……。あ、言葉としての体ね?
「葵衣達、なんか言いたい事あるか?」
俺はもう言い返せる言葉は持ってないし、二人も持ってないよなぁ……。
「何も言えないです……」
「体はずるいよー……私なんて、はぁ……」
叶恵はその分他のところにいってるから……身長とか、ね?
「中途半端なフォローは入れないでねー?」
なんかまじで叶恵が不遇になってきた……。また今度放課後どっか連れてってあげようかな……。
結局このままの流れでペアは緋彩になり、二人のペアは男子の中で殴り合いをした結果、殴り合わなかった人が選ばれるというよく分からない結果となった。
余談だが、後日緋彩の元に謝罪の言葉が沢山届いたとか何とか。




