第三十二話
無事テストも終わり一週間が経ったLHR。先生が来ないため無法地帯になっていた。
「なぁ詩乃! 全教科二位で学年一位でどんな気分だ?」
「うるせぇよちょっと傷付いてんだから!!」
なんで今回はちゃんと全教科九十点以上とったのに全教科二位なんだよ! 理数科目は叶恵に取られ、文系科目は緋彩に取られ、その他は葵衣に取られ……はぁ、まじで予想通りで最悪だ……。
学年順位だけで言えば俺、緋彩、葵衣、叶恵の順だったけど、全教科敗北は心にくる……!
「お前らー、下の階まで声届いてるぞーうるさいからやめろなー?」
寝癖のついた頭で欠伸をしながら教室に入ってくる担任。絶対今の今まで寝てただろって見た目すぎて誰も突っ込まない。
何事もなかったかのように黒板にでかでかと文字を書いて、こちらを向く。
「えー、テストも終わり、無事赤点者の補習も決まったところでー」
机を叩いてニヒルに担任が笑った。
男子みんなして食い入るように担任の方見てるけど、後ろに今から言うこと書いてあるから。
「体育祭、やるぞ」
「「「「「う、うおおおおおお!!!!」」」」」
まぁでもすげぇかっこつけて言われたら盛り上がるよね。俺も叫んだ。
「そんで、みんな喜べー、生徒会長の熱い署名活動により、今年から新競技が追加された」
え、そんなのあったの?俺知らないんだけど、何それ?確かに会長が紙もって走り回ってるのは見てたけど、そういう事だったのか。
「「「ま、まさか……!?」」」
どうやらクラスメイト達は内容まで知ってるらしい……。俺だけ置いてけぼり感があるけど、これはこれで、楽しみになるからいいか。
「今年追加されたのは、男女ペアで行う障害物競走、そして人借り競走だ」
「思いっきり会長の私情の塊じゃねぇか!!」
思わず突っ込んでしまった。
──────────
ゴリゴリに私利私欲に塗れた競技が発表されてすぐに、担任からルール説明が行われた。
一つ目のペア障害物競走はその名の通り、ペアで行う障害物競走。なんだが……。距離がグラウンド一周とかいう頭のおかしい設定になっていて、しかもペア作りは体育祭の軍が同じクラスなら学年問わず作れるといった、完全に年の差カップル応援仕様。てか会長優遇。
二つ目の人借り競走は、ざっくり言えば借り物競走の借りるものが人に限定されたもの。でも多分こっちもお題が多分酷いことになってるんだと思う。
「障害物競走は各軍二十ペアずつ選出、人借りは各クラス十人だー。人借りは二日目、障害物競走は一日目のメインイベントにするって会長が意気込んでたからな、お前らも気合い入れてけよー」
そのまま流れるように軍も決まったことを報告され、案の定会長のクラスと同じ軍になっていたことも判明。まじで自分の欲に忠実すぎるわ。
言い忘れていたが、うちの高校は体育祭、文化祭、球技大会の三つの行事全てが二日間に渡って行われる。そのため一人一人が多くの競技に出ることができ、さらに一つ一つの競技に時間をかけれるというなんとも賛否が別れる感じになっている。俺は嫌いじゃないし、パンフレットとかに書いてあったらから多分みんなも乗り気のはず。
少なくとも男子は大盛り上がりだから問題ないだろ。
「じゃあここからは自分達で決めてくれー。一応、軍団ごとの集会は明日の放課後からあるが、それ以外の競技も決めなきゃだからなー」
学級委員の二人が前に出て、担任から受け取った競技の名前を書き出していく。
「じゃあまず、ペア障害物競走のペア決めたいと思います。三クラスで一軍なので、六ペアと、補欠一ペア作りたいと思います」
クラスメイトのほぼ全員が、俺の方を向いた。
そして、男女の睨み合いが始まる。
待て待てなんで俺の方見てから睨み合ってんの?俺関係なくね?俺出るとも出ないとも言ってないし!
「「「「「っ!」」」」」
ピリピリした雰囲気の中、クラスの中でも中心にいる女子が、恐る恐るという感じに声をかけてきた。
「ね、ねぇねぇ小野寺君。小野寺君は、ペア競走、出るの?」
「んー、出てって頼まれたら出──」
「いや、詩乃は出させねぇぞ!!」
「「「「そうだそうだー!!」」」」
いやなんでお前らが答えるんだよ……。六ペアも作れるのに必死かよ……俺がでてもあと五ペアできるじゃん。補欠含めたら六ペア作れるじゃん!
「黙れ男子。そんなんだから誰も選んでくれる人がいねぇんだよ。いい加減学べよ?」
「「「「「はい!すいませんでした!!」」」」」
「で、小野寺君はどうするの?」
めちゃくちゃドスの効いた声で男子を一喝してすぐ、さっきの明るい声音に戻ってニコニコ笑う女子。
……さっきと同じだよね?なんか全然圧が違う気がするし、よく見たら後ろの女子の目も血走ってない……?
『……逃げるな』
分かりました了解です……。
一番後ろにいる緋彩からも圧かけられるなんて思わなかったよ……。助けて欲しくて見たのにさぁ……。
「じゃあ、俺は出ようかな」
俺の声に被るぐらいの勢いで、男子の悲鳴と女子の雄叫びが響いた。




