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第二十八話

 次に入ったのは、緋彩の病室。勉強を教えるために来たのに申し訳なかったが、叶恵にはひとまず課題だけ置いてきた。それでも一時間叶恵のところにいたけどな。


 ちょっと叶恵の所に長居して申し訳ないと思いながら緋彩の病室の扉を開ける。


「緋彩は──相変わらずだなぁ……」


「……何故目を逸らした」


「いや、普通に着替えてたら目逸らすでしょ」


 白いブラジャーはしっかり目に焼き付いてるけど。そもそもなんでこんな時間に着替えてるんだよ。まだ夕方だぞ?


「……それで、ブラの感想は?」


「清楚っぽい白なのが逆に──じゃなくてなんでこんな時間に着替えてんだよ!」


「……看護師さんにいつもより小さいの渡されて苦しかった」


 うん、そりゃあ着替えるわ。袖とか余りすぎてるからと思ってやってくれたのかもしれないけど……うん、よく胸部を見てあげてほしい。


「着替え終わったか?」


「……終わった」


 緋彩の言葉を信じたらまだ着替えてないどころか逆に上全部脱いでた。


「嘘じゃねぇか!」


「……途中から体が痛くて動かない」


「ほんとにか?昨日まで着てただろ?」


「……あれは看護師さんが着せてくれた。今日の人優しくない」


 これも置いていっただけで着せてくれなかった、と緋彩が言う。


 いやでも、緋彩は表情から感情読み取るのが難しくて本当なのか嘘なのかわからんからな……恥ずかしがってたり、あからさまに喜んでたり怖がってたりしたらわかるんだけど……。


 これで断って本当に体が痛いんだったら悪いし、やるしかないか。下着姿はできるだけ見ない方向で頑張ろ。


「分かった、それじゃあ失礼するぞ」


 緋彩の正面に座って息を吐く。ふー、……やるか。



「……ん、きて」


 言い方よ……。なんかエロいことしてるみたいな言い方しないでよ! ただ服着せてるだけなんだから!


「ほら、終わったぞ……」


 お腹しか見ないようにしてたけど、逆にお腹に魅力感じそうでやばかった。細いのに柔らかそうでずっと触りたい気持ちを抑えてた。


 顔をあげると、不満げにほっぺたを膨らませる緋彩。


「……全然見てくれなかった」


「いや見ないから!」


「……でも好きでしょ?」


「好きか見れるかは違うわ!」


「……じゃあこう」


「うおっ!?」


 え、目の前真っ暗なんですけど!? 手引っ張られて……え、どうなったんだ!?


「……胸の中、物理」


 は!? 天国──じゃなくて離れないと!!


「むー!! もごごー!!」


「あ、ん♡」


 離れられない!? それにぎゅって抱きつかれると息が!?


「……喋らないで」


 そんな事言われても、このままだと死ぬ! 何とかして伝えて解放して貰わないと!?


「むぐ!? む、ごご……」


「はふっ……は、あぁ♡」


 息、出来な──。



 ──────────



「……あ、うたのん目、覚めた」


 視界の上半分が入院着で顔が全く見えないんですけども。


「悪い、なんでか分からないけど、怪我人にさせる事じゃないな」


 すごい柔らかい感触は覚えてるんだけど、それ以外を全く思い出せない。


 てか、この部屋の中でそんな柔らかいものなくないか……?


 まぁいいや、さっさと起き上が──らせて貰えないんだけどなんで? あと緋彩ってこういう時だけ力強くない?


「……まだ三十分ぐらいしか経ってないから問題ない」


「そういう問題?」


「………………そういう問題」


 ん? なんかいつもより間が長い……? て事はなにか言えないことでもあるのか? 普段隠し事とかしないからバレバレだな。


「なんか隠してる?」


「…………ちょっと顔見せられない理由がある」


 ……めちゃくちゃ気になるじゃん! ちょっとこれは起き上がらない選択肢はないのでは!?


「あっ、だ、だめ!」


「………………………………」


「……起きないでって言ったのにぃ……」


「え……めっちゃ可愛い」


「はぅん!?」


 あ……やば、声出てた。それで反応する顔も可愛い……。なんでか知らないけど、緋彩に表情があった。しかもめっちゃにこにこっていうか、とろけてるっていうか……んー、なんとも表現しづらいんだけど、とにかく、めちゃくちゃ可愛い。


「……ばかぁ」


 口調まで変わるとか……どこのヒロインですか……。ぽかぽか胸叩いてきたり、行動がヒロインすぎて……。


「ふぁ……」


 あー、またやってしまった……。叶恵で反省しようと思ってたのになぁ……。


 どうしてこう、手が伸びちゃうのかね……。なんでまーた頭撫でてんだろうなぁ……。


「……気持ちいい」


 それはこっちのセリフなんだよなぁ……サラサラで。触ってるこっちが気持ちいいぐらいだ。


 表情は元の感情の見えないものに戻っちゃったけど、それでも嬉しそうなのが伝わる。




「……実は、昨日寝れてない」


「は?」


 撫で始めてから少し経つと、緋彩がそんなことを言ってきた。さっきまで元気そうだったのに……空元気だったのか。


「大丈夫、寝るまでこうしててやるから」


「……ん」


 座っていた緋彩を布団の中に戻らせて、また頭を撫でてやる。


「……助けてくれた時、かっこよかった」


「ありがと。じゃあもう寝な。誰か来ても、俺が守ってやるから」


 布団に入ってすぐなのに、もう緋彩は眠そうで、目がとろんとしている。


「……うん、おやすみ」



 それからまたしばらくして、完全に緋彩が寝たのを確認して、俺は病室を出た。





 また勉強教えてないじゃん……。

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