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第二十六話

「……あー、悪い、お取り込み中だったか?」


 できるだけ、意識をこっちに向けるように。神経を逆撫でするように。


「特にそこのおっさん達、よくもまぁそんな派手にやったね、俺が写真撮ったらどうなるのかな?」


 服を破られ、半分裸のようになっている緋彩と叶恵に群がっている奴らには腹が立つなんてもんじゃない。正直この世からいなくなって欲しいぐらいには。


「詩乃……」


 ……葵衣は釣られてるだけか……擦り傷とかは多いけど、それだけ。多分浜名楓しか手を出してないんだろうな。


「大丈夫、任せてくれ。ちょっと、二人を助けてくる」


 待っててくれ、と頭を撫でて、二人の元に近づく。


「っ! 貧乏人如きが、なにアタシを無視してんの……よ!!」


 後ろから風を切るような音が鳴る。近くにあったガラスに反射して見えるのは、前に見たのと同じフォーム。


 はぁ……また回し蹴りか……考え方が甘いんだよな。


「空手の有段者だか経験者だか知らないけど、一回使ったの二回も使って当たると思うなよ」


 しゃがんで、浜名楓の足が通るであろう位置に木刀掲げると、ゴンッと鈍い音が鳴った。


「いっつぅ……」


 振り返ると、足を押さえてしゃがみこむ浜名楓。本気の蹴り。多分当たってたら俺が死にかけてたはずの一撃を自分に打ち返されたんだから、しばらくは動けないかな?


「んじゃ、おっさん達もやるか。まぁ俺は避けるだけだけど」


 実際、俺筋力ないし。殴る蹴るは陽斗に任せる。わざとらしくにこぉっと笑うと、早速ブチ切れて殴りかかってくるやつが一名。


「んだとテメェ! 舐めやがって!!」


 助走つけての右の大振り。対する俺がやるのは、頭下げて、ガラ空きのお腹に握りこぶし置くだけ。


「ぐふっ」


 また自滅したやつが増えましたと。


 一応、自分でも誰に対しての説明かわかんないけど説明しておくと、俺がこんなことが出来るわけっていうのは、ゲーセンで陽斗と二人で遊んでる時にヤンキーに絡まれて、そいつがめちゃくちゃ弱くてそこからちょっと強いやつ、そのまたちょっと強いやつって感じに仲間呼ばれてって、いい感じに目が慣れちゃっただけで、俺が喧嘩が強い訳じゃない。てかそもそも暴力が嫌い。当たったら痛いしな。


 あれ? 次は来ないのか……このまま全員乗ってくれたら楽だったのに。……んー、真ん中の白スーツが止めてるからか、他の奴らみんな飛び出したそうにしてるし。


「あ、兄貴! 裏からも、なんかやべぇやつが来ます!! 木刀二本持って、デタラメに振り回して団員なぎ倒して来ます!!」


 焦った様子でおっさんが奥から走ってくる。て事はあっちも始めたな?


「おらぁ! ……と、さっきぶりだな、ウタ!」


「……早くね?」


 今奥で荒らしてるって聞いたばっかだよ? まぁ俺より全然強いの知ってるけどさぁ……。


「いや、これでも追われてた頃より鈍ってるぞ?」


 まぁいいか、今はこいつらぶっ潰すのが先。


「親玉だけ頼むわ、それ以外は俺がやる。ほら、かかってこいよ」


 流石にブチ切れた白スーツが合図をすると、残りのおっさん達が一斉に飛びかかってきた。


「ナイフとか完全に殺る気できてるじゃん……」


 右に避けて木刀で横薙ぎ、そこからしゃがんで……あーもうめんどくさい!


 五人ほどのおっさんを一気に薙ぎ倒してこっちから駆け出す。


 避けつつ顎と相手の息子を中心に木刀で殴る。……いらないかもとか思ってたけど案外重宝するなこれ。相手より長いリーチで戦えるし。


「うらぁ! ぐぉ……」


 今やったの除いてあと十人ぐらいか……。


「あと十人、まとめてこいよ」


 多分いけるだろ、飛び道具無しなら。あ、フラグじゃないぞ? ちゃんと手元は見てるからな。


 また性懲りも無く走ってくる……。まだ中学の頃のヤンキーどもの方がちゃんと学習したわ。てかこの人数なら木刀逆に邪魔だな。やっぱいらないや。


 避けて、顎。避けて、顎。避けて、鳩尾と息子。顎と鳩尾。脛、首。顔、顔。


 入ってから五分もしないで殲滅か……。まぁ半分以上陽斗だけどな。っと、向こうも終わったっぽいな。


「ふぅ……それじゃ、二人とも、今下ろすからな」


 手錠とかじゃなくてロープでよかった……手錠は流石にとけないからな……。


「……遅い、うたのん」


「ほんとそうだよー……私達、疲れちゃった……」


「自分らで解決しようとしてたくせに何言ってんだ。……二人とも、よく頑張ったな。後ちょっとだからここで待っててくれ」


 強がってはいるけど、体、震えてるんだよな。それでも弱みを見せようとしないのは、強いな……。


「一枚しかなくてごめん、二人で羽織っててくれ……俺はあのクズとケリをつけてくる」


 着てきたジャケットを頭から被せて、地面に向かって悪態をついている浜名楓の前に立つ。


「クソ! クソ! クソ!! なんでよ! なんでアンタは毎回邪魔ばっかり!! あの二人だって、黙って私についてくればいいものを!」


 はー、ここまで来てもそんなこと言うかね。なんかもう、怒り超えて滑稽だな。


「お前、そんなんだからダメだって気づかないわけ?」


「は!? なんで私が周りに合わせなきゃいけないのよ! 私がルール、絶対なの! それに従わないあんたらが悪いのよ!!」


「そう思うなら白昼堂々今日やったみたいなことやってみろよ!!」


 だめだ、もう我慢できない。私がルール!? いい加減にしろ!!


「堂々と人前で! 今日葵衣達にやった事をしてみろよ! それが出来ないんだったらお前なんてルールでもなんでもないんだよ!! お前だって、周りの目ェ気にして生きてんだよ!!」


「お前の幼稚園児みたいな都合で、人が大切にしてるものを壊すな!! お前も良い親持ってんだから、葵衣達みたく見習えよ!!」


 ……ふぅ、言いたい事言ったし、そろそろ通報しといた色々が来る頃かな。浜名楓に今言ったことがちゃんと刺さってるといいんだがな……。まぁ、今は話したくもないし、あとは差し出して終わりだな。


 まずは葵衣解放して、と。


「葵衣も、自分らで解決しようとするんじゃない。俺だっているんだ。それに陽斗だって。友達がこんな酷い目に遭うのはごめんだ」


 頭を撫でると幸せそうに目を細める。体も震えてないし、大丈夫だな。


 葵衣はまだ二人より元気がありそうだし、もう少し頑張ってもらえると嬉しいんだけど……。


「二人の事は任せてください。詩乃は、事情聴取とかありますもんね?」


「助かる」





 こうして、俺と陽斗は事情聴取、葵衣達三人は救急車で病院へ運ばれた。


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