第二十二話
「う……なんか、重い……」
起き上がれないし、なにコレ……?左腕の方が柔らかいけど、軽くて、右腕の方が硬くて重い。あでも、右も左もなんかふにふにしてる。
「ん、んぅ?」
「んー……」
左右から緋彩と叶恵の声が聞こえて、うっすら昨日の事を思い出した。
昨日は緋彩と叶恵が泊まりにきて、かくかくしかじか色々あって一緒に寝たんだっけか。寝たと言ってもまじでただ寝ただけで何もないけど。
にしても、暖かいし、せっかく起きたのに眠いな……。
「……うたのん」
んー、それにしても柔らかいなー、なんだろこれ?すべすべしてるし、めっちゃ触り心地いいな。
「詩、乃?」
でもこれ、なんだろ?布団はこんな感じじゃないし……。んー、まぁいっか、気持ちよければ。
結構触ってみたけど……うーん、わかんないなぁ……。
「……ふっ、んん♡……はぁっ///」
「ひゃ、ぅんっ♡……ぁあっ///」
なんか触ってたの動いてるって事は、コレ、二人だったのか……。申し訳ないなぁ……。なんか布団の中で声聞こえた気がしなくもないけど、でもまぁ、そんなに気にするほどのことでもないだろうし、まだ寝ててもいいか……。
──────────
「おはよー」
「おはようございます! 詩乃! 今日は遅かったですね!」
リビングでテレビを見ている葵衣に言われて時計を見ると、確かにいつもより二時間ぐらい遅いな。
んー? でもなんか、一回起きたような気がしなくもないんだけど……覚えてないな……。
「二人も、はよー」
「「………………」」
え、なんで二人は挨拶返してくれないの……? 顔真っ赤で睨んでるし、えぇ……?
「……なんで、知ってる。ばか」
「朝から焦らされるとねー?」
目が合ったらそんなことを言われて目を逸らされた。え、え? なんで!?
「……俺、なんか悪い事した……?」
答えは返ってこなかったので、取り敢えず朝食の準備をすることにした。
「……なぁ葵衣」
キッチンに二人で並んで朝食を作る。今日は何故か機嫌が悪い二人のために少し豪華にしようと思っている。
「なんで、二人は機嫌悪いんだと思う?」
ご飯を盛っている葵衣に声をかけると、意外な答えが返ってきた。
「多分、全然悪くないと思いますよ?」
「え?」
あの態度で? だって、赤い顔で睨まれたけど。なんもやってないのに。
「私も、詳しくは言えないんですけど、多分びっくりしちゃっただけだと思います。……詩乃に敏感なところ触られてどうしようもなくなってたなんて絶対言えないです……」
「ん? 後半よく聞こえなかったんだけど」
「な、なんでもないです!」
そ、そうか……。まぁ深く追求することはないしな。それに、機嫌が悪いわけじゃないならよかった……。
「そういえば今、何作ってるんです? もう朝食に出すものは揃い始めてますよね」
魚焼き器で焼いている鮭に、葵衣が盛っているご飯。いつも通り安定の味噌汁と目玉焼きにサラダ。いつもより多いので、一つ一つは少なめになっている。でも俺はまだカットフルーツの缶を開けてもうひと品を作ろうとしている。
「ん? あぁそうだなでも内緒だ」
まぁ簡単に作れるフルーツゼリーだし、すぐ分かるけどな。勉強の休憩時間にでもサプライズで出すためのやつだから教えないけど。まぁカモフラージュにカットフルーツはデザートに出すか。
「そ、それはそうと……! やっぱり、詩乃は、私の事、妹みたいに見えないですか?」
期待するように葵衣が見上げてくるんだが、これはどう返せばいいんだ? 実の所、見える瞬間と見えない瞬間ってのがあるし、家族愛とか勘違いしてるだけで絶対違うしさぁ……。まぁ葵衣が望んでるのは妹である事だし、それでいいか。
「最近は結構妹として見れるようになってきたぞ? ほら」
ちょっと恥ずかしいが、頭をぽんぽん撫でてやる。いつもこれをすると抱きついてきてもっとって要求されるされるぐらい好きなやつ。
「あぅ……」
おい……なんで普段と違う反応するんだよ……。顔真っ赤にして照れたみたいな声出さないでくれよ、まったく……こっちまで顔熱くなってきただろうが。
「あぁ……」
手離したらそんな残念そうな顔しないで、また手が伸びるだろ……。
「ふふっ」
……くそ……勝てないってあの顔は、あんな捨てられた子犬みたいな顔されたら勝てないって!
「でもまぁ、妹ですか。今はまだ、それに甘えててもいいかもしれないですね♪」
ご機嫌で何よりー……。
「じゃあくっつくのやめて兄貴のために朝飯運んでくれ」
「まだダメです♡」
結局、できた朝食を運ぶのも俺がやることになった。……はぁ、甘すぎかね、葵衣に。
それであの天使の笑顔が見れるんだから安いもんかもしれないけど。
ところで、リビングに二人がいないからと思って呼んだら二人ともなんか生き生きした感じで寝室から出てきたんだがなんだったんだ?




