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第二十話(葵衣視点)

 やっぱり詩乃の匂いはいい匂いです〜。


 今、私は掛け布団にくるまって芋虫みたいになっています。これが一番匂いを感じられますから!


「むふふー!」


 私だけの特権、これだけは譲りません。落ちたら危ないからというもっともな理由をつけて三人にはリビングで寝てもらっていますが、その実私がここを譲りたくなかっただけなんですよね。私は駄々っ子な妹なので!


「それにしても、ひーちゃんとかなちゃんが詩乃を好きになるとは……」


 喜ばしいことですけど、複雑ですね……。


 詩乃がどちらかを選べば、隣は私の席じゃなくて、その人の席になります。それは、悲しいです……。


 でも、二人が心から笑って幸せに過ごす事ができるなら、それは私にとってもすごく嬉しいことです。


「でも、私じゃ勝てないです……」


 詩乃の持っている、ライトノベル、でしたか? それにいる妹は、みんなサポート役みたいな役割で、兄と結ばれるものはほとんどなかったです。最近はコソコソそのライトノベルと言うものを読むのが楽しいです。創作とはいえ、詩乃の趣味が現実的なものに寄っているらしく、感情移入がしやすいものが多いです。


 今日は何にしますかね……。意外と量があって毎回気になるのを探すの大変ですし、ここは一つ、適当に出た物を読む感じでいきましょう。


「よっ、と……これは……?」


 私が手に取ったのは、妹がメインヒロインの大人気シリーズだった。



 ──────────



「う、うぅ〜……」


 顔が熱い。猛烈に、今このベッドの上にいる事が恥ずかしくなってくる。


 だって、だって、こんなの……。


「私と、同じじゃないですか……」


 影響されすぎとか思うかもしれません。でも、この中に書いてある事が、ぴったり私が詩乃に思ってることに当てはまってるんです……!


 ぽかぽかするとか、離れたくないとか、家族愛なんかじゃなかったです……。いや、家族愛もそういう風に感じるものですが、私のはそうじゃなかった。


「好き、私が、詩乃の事を好き」


 キューっと胸が締め付けられるみたいです。気づいてしまったら止まれない、なんてお母さんが言っていましたが、やっと意味がわかったかもしれません。


「好き、好き、好き、好き」


 好きな人と、一緒に暮らせている。こんな幸せなことはないです! 妹とか勘違いしてましたけど、それでぐいぐいいけていてよかったです! 気づいちゃったからですけど、今の私じゃあんな風に膝の上に乗って抱きついてなんて、あぅ……。


「あ、でも……」


 前に告白されても付き合わないって言っちゃいました……。ど、どうしたらいいでしょうか!? 撤回しますか!?


「う〜!!」


 あからさますぎるし、恥ずかしくて言えないですー! 絶対バレますもん! いや、もしかしたらあの勘違い発言の時にバレてるかもしれないですけど!!


 だってあれ完全にただの告白でしかないじゃないですか、なんですか『隣にいると心地いい』って、しかもその上で『これが家族愛だと思うんですよ!』なんて!


「私のバカぁ……!」


 あの時の私を抹消して家族愛とか言う謎発言を撤回しましょう! そうすれば全て丸く収まるはずです!


「なんて、無理ですよね……」


 撤回できたところで詩乃はきっと付き合ってはくれないでしょうしね。


 ……はぁ、なんでテレビに出ちゃうくらい有名な企業の令嬢なんかに生まれてきてしまったんでしょうか。そのせいで、詩乃との距離は近くても、絶対壊せない壁をはられてしまいます。


「その点、二人はいいですよね、二人も令嬢という立場は変わらないですけど、努力で詩乃の壁を壊せそうで」


 二人には、詩乃が私と付き合わないための免罪符は適応されませんからね。二人には兄弟もいて、ご両親から自由な恋愛を、なんて言われてますからね……。将来のために、なんて言葉はききません。


 それに比べて私は、両親に許しをもらうこともできず、今の状態は保護であって同棲ではない。いつか迎えがくれば詩乃は私の手をきっと放してしまう。


「……いえ、諦めるのはまだ早いですよ千代ケ崎葵衣。考えればいくらでも選択肢は出てくるものです」


 ネガティブなんて私らしくないです! 切り替えて、どうにかできる方法を探しましょう!


 ……そのために、まずは二人に私の気持ちをお話しましょう。二人はお互いの気持ちを知った上で対等に戦っているようなので、私もその中に加わります。きっと二人なら、私にも手を差し伸べてくれるはずです。


 それじゃあ、スッキリしましたし、やることも決まりました!


「おやすみなさいぃ……」


 気づいただけで十分私は偉いです。なのでこの件に関しては明日から頑張りましょう……。

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