第十九話
「ん、しょっと」
ふぅ、布団もリビングに持ってきたし、これであとはここで俺が寝るだけ。シングルベッドだから三人で寝るには狭いかもしれないけど、内二人が小さいからなんとかなるかな。
いやー、それにしても晩飯が賑やかだと楽しいな。葵衣と二人でもめちゃくちゃ楽しいけど、やっぱりみんなで食卓を囲むってのはいいものだ。料理がおいしくなる。
「なんでここに布団敷いてるのー?」
葵衣と緋彩とテレビを見ていた叶恵が振り返って、不思議そうな顔で俺を見る。
「いや、なんでってそりゃあ、ここで寝るためだけど」
三人と寝る訳にもいかないし、それこそ誰かと一緒にとか言ったら喧嘩が始まるかもしれない。それに三人で話したい事とかもあるだろう。
うん、気が利くな、俺。いや、別に逃げたとかそんなんじゃないぞ?ただちょっとなにかありそうな気がするだけで……。
「ふーん、そうなんだー、じゃあ私もこっちで寝ていー?」
「「は(い)?」」
はい地雷。俺が反応するより先に、冷ややかな声が叶恵にかけられる。でも今回は俺は関係ないぞ、まだ飛び火してないからな!?
叶恵の言葉に爆速で反応した二人。ゆっくりと叶恵の方に置かれた手はこれでもかと言うほど力が込められてるし、目からはハイライトが消えている。
「え、えっと、妹よりは、彼女の方が上でしょー? 私、詩乃の彼女に──いたたたた!?」
冷や汗を垂らしながら俺を巻き込もうとした叶恵の肩に緋彩の爪がくい込んだ。普段表情の見えない緋彩の口角がつり上がって、ケタケタとめちゃくちゃ怖い笑い方をしながら、ゆっくりと叶恵の耳元に顔を近づけていく。
「……嘘、ユルサナイ」
「ヒィッ!? ごめんごめんごめん痛いから、痛いから緋彩ー!」
肩を抑えながら全力謝罪、涙を目じりに溜めながら緋彩から逃げようと必死で手を叩く。
「……カナ、その嘘は、よくない」
「ごめんなさーい! 許して、ほんとにごめんってー!?」
「わー!! ひーちゃん待って待ってそれはいけない! かなちゃん泣いちゃう!!」
壊れたロボットのようにメリメリと爪をくい込ませる緋彩を慌てて一緒に圧をかけていた葵衣が止めにはいって引き剥がす。
「……はっ!? ごめんカナ、怪我ない?」
「うー、大丈夫だけど、痛ぁ……」
緋彩の握力が弱いのと、すぐに葵衣が引き剥がしたため多少赤くなった程度だったが、大事は取るべき。保冷剤にタオルを巻いて、叶恵に手渡す。
「ありがと。ごめんね緋彩、舞い上がっちゃってふざけたこと言っちゃった」
「……私も、悪ふざけって分かってたのにやりすぎた」
しょぼーんとする二人、さっきのやつにフォローを入れられなかった分こっちで元気づけなければ!
「まぁまぁ、喧嘩するほど仲がいいって言うし、いいんじゃないか? ほんとに俺と寝たいなら、考えない事はないし──」
「「「じゃあ、私達《ひーちゃん達》二人で!」」」
「まぁそんなことないだろう──って、は?」
落ち着け、落ち着いて確認したら違うかもしれない。三人同時に喋ったから、変な風に聞こえたのかもしれないしな?
「もう一回、一人ずつ言ってくれ、3人同時だったから聞き間違えたかもしれない。叶恵から頼む」
「私と、緋彩で添い寝してあげようかなーって、普段から葵衣と一緒に寝てるんでしょー? 葵衣からぽかぽかするーって聞いてるしね?」
うん、聞き間違えじゃなかったわ、後で葵衣はお説教な? 家でのことをすぐ周りに言うもんじゃありません。言っちゃダメだとも言ったと思うんですけど! 特に俺と何があったとかそういう事は!
「……私も、叶恵と同じ。今、やらかしてしょんぼりな私達を癒すのはうたのんの役目」
真剣な顔だと思われる顔でこっちみてるけどさ、自分でしょんぼりって言っちゃう? 緋彩さんや。てか我が家の最大の癒しは葵衣では……?
「私も二人と同じです! ほんとはぽかぽか譲りたくないですが、二人は私と違って異せ──むぐっ!」
「ん? なんで口封じ?」
「……あおちん、それ以降先は私達がいつか自分で伝える。黙ってて」
「詩乃も気にしないでいーよー? こっちの話ってやつだから!」
よく分からないが、本人達が言うならいいか……。
「って、まじで俺と寝るの? 俺男だよ?」
「「「もちろん」」」
「……逆に、超絶可愛い葵衣と一緒にいて手を出さない精神力の持ち主が、私達に手を出すの?」
珍しく早口でいつもより長文だね緋彩。あと超絶可愛いのは葵衣だけじゃなくて君ら二人もだから普段からこういう事がない分、手は出しちゃうかもしれないんだけどまた初めて葵衣が来た時と同じ苦痛《天国》を味わわなきゃいけないんですかね?
おっとこちらも早口長文失礼。でもそんだけ二人共魅力的で困るんだよなぁ……。だからといって二人とどうこうなりたいとかいう気持ちは今のところはないのだけれど。
でもまぁ、今日は寝ることが目標だな……。




