すーぱーのう゛ぁ
「す」
「人が死んだらお星様になるって、どう思う?」
唐突に振られた質問に、眉間をしかめた。目の前の同じ制服を着た彼女は、どういう意図でこの質問を投げつけてきたのか。まったく見当がつかない。そんな俺に察したのか、彼女は続けた。
「昨日のドラマで父親が死んで、母親が子どもに『パパはお星様になったのよ』って言ってたからさー」
納得のいかないような顔をしながら、彼女はペンを握った手を動かし始めた。 今は放課後。教室内は閑散としている。俺は、日直だったことを忘れて日中の仕事をすべて彼女に押しつけてしまった罰として、こうして日誌書きに付き合わされて、いや、付き合わさせてもらっている。
「それの何か不満なの?」
彼女に問いかけると、目線だけちらりとこちらを見てはすぐに日誌に戻し、「んー」と唸った。
「形あるものはいつか消えるでしょう?」
日誌の上を走るペンは止まっていた。彼女の目はどこか寂しそうに見えた。何か事情があるのかもしれないし、俯いているからそう見えるだけで、もしかしたら気のせいかもしれない。けれど軽い話題ではないし、返す言葉に慎重になってしまった。
「確かに、そうだね」
「星もいつか死ぬし、そしたら今度は何になるんだろうって思って。……あれ、今日遅刻したの誰だっけ?」
「俺です」と小さい声で言うと、「そうだった」と彼女は小さく笑って、日誌の遅刻欄に俺の苗字を書き込んだ。
星の死なんて宇宙で起こることを、地球人はそこまで深く考えていないだろうと思った。ただ、手の届かない、会うことはできないところに行ってしまっても、身近にいてほしいと願う人間のわがままを「お星様」に押しつけているのだろう。だがこんな回答を彼女が望んでいないことは、なんとなくわかっている。どんな言葉で場を繋ごうか考えていると、彼女が口を開いた。
「太陽とかの恒星って、死ぬとき爆発するんだって。もし私が爆発したら、破片を拾ってくれる?」
「……肉片って、こと?」
「まあ、そうなるね」
学校という狭い枠組みの中でしか関わりのない人間の肉片を集めるのは嫌だ。しかも、さほど仲の良いわけではない人とこんな話をするのも、決して心地よいものではなかった。
それからは、ただ文字を書く音だけが教室に響いた。この気まずい空気感に耐えることが、日直の仕事を放棄した罰なのかもしれない。できることなら、今ここで俺が爆発したいくらい、厳しい罰のように思えた。