8話
倒したスライムの核を集めながら気配察知の練習をしてみる。
「気配察知…」
強く念じると辺にいる動物や魔物のたちの気配が手に取るように感じた。
「これは…使えるな」
1番近くにいる魔物の気配は100m程前方だ。
似ているような気配が至る所からするから多分スライムだろう。
「よし…身体強化」
強化した体に力を入れて一直線でスライムへ向かう。
「…なんだ…??」
走り出した途端にスライムの近くによく分からない気配が現れたと気づいた時にはスライムの気配はいなくなっていた…
俺がその場に着くとそこには見知った顔がいた。
「あ…えーと…」
クラスでいつも三村グループにキツいいじりをされている子だ…誰だっけ??
「く…栗原ですひ…平井さんはどうしたんですか??」
「えーと…俺はスライムを倒しに来たけどいきなり消えちゃったんだ…」
「も…もしかしてけ…気配察知を使ってました?」
「使ってたけどなんで?」
「ぼ…僕の気配遮断がD級なんでひ…平井さんの気配察知がE級ならぼ…僕が気配遮断を使っている時にひ…平井さんはぼ…僕を見つけられないはずです」
なるほどな…
「ぼ…僕が今倒したス…スライムの核は貰って下さい…」
「いいの?」
「ひ…平井さんが倒そうとしていたのをぼ…僕が奪ってしまっただけなので…」
「…分かったじゃあありがたく頂きます」
「…じゃあさようなら…」
そう言って栗原君は森の奥に進んで行った。
依頼が完遂した俺は街へ向かって帰る。
城門ではまだサボっている衛兵を横目にこの世界が案外平和なことを確認した。
ギルドに着いてユーリさんの元に依頼のスライム3体の核を提出する。
「はい。依頼通りスライム3体ですね。ではボードに手を置いて下さい」
言われた通りにボードに手を置くとユーリさんは機械を少し触ってから
「ありがとうございます。もう手を離していいですよ」
と言ったからボードから手を離しながら聞いてみる。
「今何したんですか?」
「今のは依頼が完了したことを照明手形に記録させて頂きました」
やはりユーリさんは嫌な顔1つせず答えてくれた。
いい人だ…
「それとこれが報酬の5000knから剣の貸出料を引いた3500knです」
「ありがとうございました」
貰ったお金は500円玉ぐらいの大きさの銅貨が10枚だった。
そのままギルドを出てドアに向かう。
そろそろ現実の家で俺を待っている妹が心配するかもしれない。
ドアを通りあの家からクラスに戻ると外は暗くなっていた。
クラスに備え付けられている時計は7時近くを指している。
「少し急ぐか…」
早歩きで家に向かう。
「ただいま」
「おかえりー…お兄ちゃん遅かったね」
「ごめん待たせた?」
机の上には2人分の料理が並べられている。
待っていてくれたのだろう…
「今できたとこだよ。温かいうちに早く食べよう」
机を挟んで向かって座る。
「いただきます」
2人で声を揃えて言った後にすすった味噌汁は冷めていた。
お兄ちゃん遅いな…
いつもなら5時までには確実に家にいるのに今日はもう6時30分を回っても帰ってきていない…
お母さんとお父さんは夜勤続きで家にいる事がほとんど無い。もし家にいてもずっと寝ているだけだ。
小さい頃からそうだったから私はいつもお兄ちゃんに甘えてしまっていた。
ご飯、掃除、洗濯、家事の全部をお兄ちゃんがやっていたからお兄ちゃんはあまり遊びにも行けなかった。
私はお兄ちゃんの力になりたくて中学校に上がるタイミングでご飯は作ると言った。
最初慣れないことでなかなか上手く出来なかったけど失敗する度にお兄ちゃんが私を手伝ってくれた。
最近になってやっと3食1人で栄養まで考えて作れるようになってきた。これでやっとお兄ちゃんが自由に遊びに行ったりできるようになる…
「ただいまー」
お兄ちゃんの声だ。
作り終わって少し時間のたった夜ご飯は机の上で今か今かと食べられるのを待っている。
お兄ちゃんはやっと自由を手に入れられたからその自由を奪う訳にはいけない。
「今できたとこだよ。温かいうちに早く食べよう」
きっとこの嘘は直ぐにバレるだろう…でも…でもお兄ちゃんには自由を謳歌して貰いたかった
あけましておめでとうございます。
今年から頑張って行こうと思います。
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