6話
現実に戻ってきた俺と詩織と蓮太は帰りながら話していた。
「みんなスキル何があった?」
「私は弓術と火魔法と風魔法とかがあったよ」
詩織は魔法使い向きと言われていたから魔法は覚えるべきだろう…
「俺は魔法はなかったけど身体強化って言うのがあったよ」
蓮太は盾持ちって言われてたから体を強くすればするほどいいだろう…
それに比べて…俺は…
「翔太は?」
「俺は…魔法は水魔法があって身体強化もあったよ…」
俺は…どっちつかずだ。
いつもそうだ…現実でもどっちつかずで得意なことは特にないけど苦手なことも特にない…これといった個性がある訳でもない。
現実とは違う世界なのに…なんで…なんで現実と似てしまうのだろう…
「凄いじゃん翔太、どっちもあるなんて」
蓮太は純粋に褒めているだろうけど俺にとっては最大の侮辱だ…
「とりあえずスキルは自分の好きなのを取るってことでいい?」
詩織が俺を気遣ってか話題をそらす。
「俺はそれでいいよ」
「2人がいいなら俺もいいよ」
そしてその日は家に帰った。
しかし家に帰って寝ようとしても寝れるわけが無い…
あんなに興奮したのを忘れて寝ろとは無理な話である。
そしてこっそり家を抜け出した。
足音を立てぬように家を出ようとしたが家に両親がいないことを思い出して普通に歩く。
また両親は夜勤だ。
俺の小さい頃からずっとこうだ。
だから俺はいつも妹と2人家でひっそりと夜を超えることが多い。
妹はもう寝ているだろう。
時計の短針が右半分に侵入しているのを横目で見ながら家を出た。
どこに向かう訳でもないが気の向くままに街を歩いた。
人の居ない街は静かに明日への準備をしている。
月明かりから逃げるように歩いた俺は結局家に辿り着いていた。
そのままベットに潜ると気づいたらアラームがなっていた。
「おはよぉー」
欠伸をしながら挨拶をしてきたのは蓮太だ。
「おはよぉー」
俺も眠い目を擦りながら答える。
ちゃんと寝れば良かったと後悔してももう遅い。
今日は学校に着くと詩織はもう来ていた。
「あ、おはよー」
俺と蓮太に気づいた詩織はスッキリとした声で答えた。
でも俺たちはそんな声出せず、怠そうな声で答えるしかない。
「おはよぉー」
クラスの中では昨日扉に入った人達が集まって話している。
「どうするよ…」
「なんのスキル取る?」
「大島氏また入るでござるか?」
ザワつくクラスは他の教室とは異質な雰囲気を醸し出していた。
三村くんたちは昨日の放課後に部活があってあまり入れなかったから今日の朝に早く集まって入っていたらしい…元気だ…
「静かにしろーホームルーム始めるぞー」
もう誰も興味のない佐々木先生の話は流されている。
「高2の時期が1番差が出るんだぞここで勉強するかしないかで将来が……」
可哀想な程に誰も聞いていない
「わかったかお前ら…じゃあ1限の準備しておけよ」
そう言ってクラスを出ていった佐々木先生を誰も見ていない。
クラスのザワつきは落ち着くことがなく1日が過ぎた。
「今日はどうする?」
俺が詩織と蓮太が部活に行こうとしている所を引き止めて聞く。
「…俺は今日はパスで」
蓮太は残念そうに言ったのに続けて
「今日…寝不足だし、やっぱ…大島の怪我が気になっちゃって…今度は俺たちの中で怪我人が出るんじゃないかって思うとやっぱりあんまり無理はしない方がいいと思うからね…」
…やっぱり蓮太は良い奴だ。
きっと自分は入りたいと思っているだろうに俺たちのことを気遣って入らないようにするなんて…
「じゃあ今日はなしでいい?」
詩織は俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。
「うん…」
本当は入りたいけどそこまで言うなら…
「じゃあ部活頑張ってね」
そうとだけ言って特に急ぐ必要は無いが足早にクラスを出た俺は家に向かって歩いた。
家に着いて勉強机に向かうが集中は出来ない…
できるわけが無い…
今の時間は…まだ5時前だ…急いで家を出て学校へ向かう…あの世界へ向かう。
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