17話
1話目から読んで頂きたいです。
隣に蓮太がいると安心する。
そう思い始めたのは高校生になってからだった。
中学生まではクラスの同じグループにいる少し空気の読めない奴って印象だった…でも高一になって関わりが深くなるとただ単に空気が読めないやつではないのだとわかった。
人に優しいのだ…優し過ぎてよく周りが見えてないだけだった。
だから…優しいから一緒にいると安心する…けどそれはただ自分が蓮太に気を使わせて勝手に気持ちよくなってそれを安心と勘違いしているんじゃないかと思う。きっとそうなんだ…俺は優しくない。
だから…俺は蓮太から離れたくなかった…蓮太は優しいから俺の事を裏切って離れるなんてしないと分かってはいたがもしそうなれば俺にはもう何も残らない…
優しすぎるが故に俺の元を離れたらどれだけ俺が蓮太に気を使わせていたかが分かってしまう…それが嫌だった。
だから俺も蓮太に気を使い、蓮太が俺の元からいなくなってしまうのを避けた…これは俺の優しさなんかじゃない…ただの自己満だった。
けどそんな自己満の俺を蓮太は助けてくれた。自分の左腕を犠牲にしてまで助けてくれた…なら…ならば俺も蓮太を守り、蓮太と戦いたい。
…優しい蓮太を守りたい…
「蓮太…俺は右から行く」
「分かった…はぁはぁ俺は左だな」
コクっと頷いた俺は田村の右側目指してに走り始めた。
それを見た蓮太は左側に向かって走る。
向こうは剣を持っている…こっちはボロボロな俺と片腕のない蓮太が拳で戦おうとしている。
誰がどう見ても俺たちに分はなかった…けどやれそうだと思った…俺らなら出来ると思った。
「はあぁぁぁあああ!」
叫びながら殴りかかる。
叫ばなければ恐怖で怖気づいてきっと何もやれない。
「うぉぉおおおお!」
隣で蓮太も叫んでいる。
「ははは殺してやる!」
田村はそう叫ぶと蓮太の方へ向けて剣を振り上げる。
蓮太が片腕がないからって…
「死ねーーーー!」
振り下ろされた剣を蓮太は間一髪で避けた。
その隙を見て俺は田村の右頬に向けて右ストレートを放つ。
「グハッ」
俺右ストレートをダイレクトくらった田村は3mほど地面を転がった。
「チッ…ペッ」
舌打ちをして口の中の血を出した田村は立ち上がると今度は俺らの方をジッと見て俺が動くのを待っている。
でもここで動いたら向こうの動くツボだ…
「はぁはぁ…はぁはぁ…はぁはぁ…っ…」
隣の蓮太は息が激しくなってきているやはりもう限界が近いらしい。
「蓮太…俺が1人で行く…お前は後ろにいろ」
「まだ…はぁはぁ…まだ俺はやれる」
蓮太の今にも倒れそうな体を支える足はもう限界が近いのが俺でもわかる。
「栗原!蓮太を止めといてくれ!」
「わ、わかった」
そう言って栗原は蓮太の腰を後ろから掴んだ。
「俺は…俺はまだやれる…はぁはぁ…離せ!はぁはぁ」
そう叫んでいるが蓮太は栗原に簡単に連れて行かれるほど体に力が入ってなかった。
「おいおいいいのかよ?1人で戦う気か?2人で仲良く俺の前で死んだ方がいいんじゃないか?ははは!」
田村は挑発してくるが向こうにもダメージはある…
「第2ラウンドだ!」
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