11話
「おいおい…起きろ」
クラスまで運んできた栗原は傷は消えているものの意識は途切れてしまっていた。
栗原の頬を軽く叩いて蓮太が起こそうと必死になっている。すると
「……っ」
ゆっくりと栗原が目を開ける。
「ここは…く…クラス…?」
「おい…大丈夫か?」
「あれ…た…橘くん?」
栗原は目を覚まして起き上がると目をつぶり何かを考え出した。
「た…助けてくれたの…?」
「うん…そうだよ…」
俺がそう答えると驚いたように目を丸くしながらお礼を言ってきた。
「…ありがとう」
「それよりなんであんなことされたんだ?」
蓮太がイライラしながら聞いている。
栗原にでは無くアイツらのしたことに対してだいぶイラついているみたいだ。
「ぼ…僕がいけないんだ…ドン臭くて…言われたことも出来ないような僕が…いけないんだ」
下を向いてしまった栗原は泣きそうな目をグッとつぶり笑顔で
「…だから…だから…もう大丈夫だから僕のことは心配しないで…じゃあね」
と言って教室を出ていった。
外からは廊下を歩く足音とそれに混ざったすすり泣く声が聞こえてきた。
「…どうするの…?」
栗原が出ていって3分ぐらい経ってから沈黙を破ったのは詩織だった。
「そりゃ…助けるだろ」
「でもどうやって?…そもそも栗原さんは助けを欲しがってないんじゃない?」
「…」
蓮太が栗原を助けたい気持ちは分かるが詩織の言うことはもっともだ。
栗原は助けてと言ってないから助ける必要があるのか?
…違う…そんなんじゃない…ただ俺は栗原を助けるのと田村グループと喧嘩になることを天秤にかけた時に栗原を助けることよりも田村グループと揉めることを避けたかっただけだった。それなのに…栗原が助けてと言っていないのを理由にするなんて…俺は最低だ…栗原が助けがいらないわけがないのに…
「詩織は栗原がどうでもいいのかよ?」
「は?そう言ってる訳じゃないでしょ」
イライラしている蓮太は行き場のない怒りをしおりに向けてしまった。
「俺は栗原を助けるぞ」
蓮太はそう言うと俺たちの答えを聞くことなく教室を出ていった。
「…どうする?」
「…流石に今回は蓮太に合わせることは無理かな…」
詩織の質問には正直に答えた。
そしてい心地の悪くなった教室を出る。
「じゃあね…詩織…」
「うん…じゃあね」
もうどちらも上手く笑えていなかった。
明日きっと蓮太は栗原のことを助けるだろう…俺はどうするべきなんだ?
助けた方がいいのか?
いいってなんだ?
いいって俺に都合のいいことになることなのか?
それとも人からの信頼を得ることなのか?
いいってなんだ?
助けることはいいことなのか?
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