10話
「あっちありそうじゃない?」
森まで来た俺たちは目的のたるふ草を探していた。
剣を持った蓮太を先頭に詩織を挟んで俺が最後尾で森の中へ進んで行く。
あの後蓮太と話し合って目的の20束の半分の10束集めたところで俺と役割を交代することになっている。
「あれ…違う?」
詩織が指さした方向には本で見たよりも蛍光色は強いが確かにたるふ草だと思える草が木の根元に2束咲いている。
「よいしょ…できた」
詩織がたるふ草の茎を持ってゆっくりと土から離して行く。
詩織ができたの横目に見ながら同じように俺もたるふ草を抜くと意外と簡単に綺麗に抜けた。
ユーリさんに入れてと言われた特に特徴のない普通の布の袋に2つ入れてまたたるふ草を探す。
俺はこの間にずっと気配察知のスキルを使っていた。
ずっと使っている理由は2つある。
1つはスキルを発動する練習をするためだ。
ずっと使っていることによって使っているのが当たり前になって1人で依頼をする時に魔物に気づかないことが無くなるからだ。
もう1つは魔物に合わないようにするためだ。
俺的には魔物にあっても全然いいが、詩織と蓮太を危険な目に合わせるのはやはり1番避けたいことだからだ。
俺のおかげか、1度も魔物に会うことなく半分の10束を集め終え、蓮太と役割を交代した。
交代したからと言って敵に遭遇はしないようにしている。
けど…疲れてきた…。
思ったよりもずっと気配察知を使っているのは精神に負担がかかる。
気づいたら気配察知を解いていたなんて事が無いように常に意識し続けないといけないのがだいぶキツい…
「よし…これで20束だ」
蓮太が最後の1本を布の袋に入れながら街の方へターンをした。
次は俺を先頭にして進んで行く。
「…!」
俺の気配察知に反応があった…
魔物…?いや、人間だ…
人間なら別に避ける必要はないだろう。
ここで避けていればあんなことは起きなかったのに…
「おい…人が来たぞ!」
俺たちが向こうの視界に入った途端に向こうはコソコソと何かを隠し始めた。
「ねぇ…あれ三村くんたちじゃない?」
俺の後ろを歩いていた詩織が気づいた。
一気に隣を通り過ぎるのが面倒くさくなった。
向こうもこっちがクラスメイトだと言うのに気づいたらしくジロジロ見てくる。
黙って気づいてないふりをして隣を通り過ぎようとする…
「おい…お前ら…何やってんだ?」
静かに通り過ぎようとしただけなのに話しかけられてしまった。
「薬草を採ってただけだよ…」
「お前らは?」
俺は答え言ってすぐにその場から離れようとしたが蓮太が話を続けてしまった。
「いや…何も…」
何故かみんなニヤニヤしながら答える。
ドシッと音が聞こえた。
あいつらの後ろの木の奥に置いてあった【もの】が倒れた。
…なんだあれ…
…人…か…?
…あれは…栗原…?
倒れた【もの】はボコボコにされた栗原だった。
俺たちはその場で数秒固まった。
理解が出来なかった…顔が腫れ上がって身体中には剣で傷つけられたであろう切り傷が至る所にある【もの】が人間だと言うことに…
「お前ら…それはなんだ…?」
蓮太が怒りを抑えてか震えた声でそう聞くとあいつらはケタケタ笑いながら
「栗原に決まってんだろ」
と答えた。
ゴリッと鈍い音が森に響き渡った。
蓮太の右手の甲は三村の右の頬にめり込んでいた。
後ろに思いっきり飛ばされた三村はそのまま木にぶつかって倒れた。
「おい…何やってんだ?」
三村の取り巻きたちがこちらを睨みながら拳を構えているが、意味がなかった。
三村がいて勇気があったやつらだから三村が倒れている今誰も殴りかかって来れる訳が無い。
俺が剣を持っておいて良かった…もし蓮太が剣を持っていたら今頃三村は怪我では済まされない…もしかしたら…
「ねぇ…大丈夫?」
「……」
詩織が襲ってこない三村の取り巻き達はを無視して、栗原の頬を叩きながら質問する。
その質問には栗原は答えないが息があることは確認できた。
「翔太そっち持って」
「…うん」
俺と蓮太で栗原を持って森を離れる。
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