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指揮棒”タクト”
棒を手に取ったタカは、目の前に表示されたメッセージの”?”ボタンを押した。
表示された”指揮棒”の説明を見ながら、亡くなった父親のことを考えていた。
「指揮棒か、、そうえいえば指揮者になるのが夢だったらしいね。」
父親との記憶は持っていないので、直接聞いたわけではない、母親から聞かされた父親の夢。
なぜ夢が叶わなかったのか、詳しい話は聞いていない。それが理由か分からないが、タカの家庭では音楽が日常的に存在していた。悲しいことに、音楽にも楽器にもタカが興味を示すことはなかったのだが。
「最近は、父親の事を考えることもなかったのに、まあ、指揮棒で戦うのもいいかもね。父親が生きていたらぶん殴られそうだけど、実際に指揮もできるみたいだし。」
そしてタクトは、”指揮棒”を選択した。
その瞬間、部屋が白色の光に包まれ、白い髪の小さな男の子が目の前に立っていた。
「こんにちは!ぼくはタクト!!デバイス”指揮棒”のガイドAIだよ☆」