1話 旅立ちの日
「あなたは不慮の事故により、死んでしまいました」
俺が死んだ?
そうか……って、なんで俺普通に受け入れてんだ?
現実味がないからなのかな。
「なあ、俺はこれからどうするんだ?天国にでも行くのか?」
「いえ、あなたは次の世界に転生します」
もしかしてこれって、最近流行りのあれか?
うぉ~、なんか興奮してきたー!
「……何私を見てニヤニヤしてるんですか?気持ち悪い」
女神が俺を引き気味に見ていた。
結構口が悪いな。
「次のあなたの名前は、『エライデ・ハイスキルマエード』です」
エライデか。
いい名前だ。
前の名前はなぜか忘れてるからつけてくれて嬉しい。
てか、名前って神がつけてんのか?
そして俺は異世界に転生した。
ある村の中で生まれた。
あれから数年が経ち、俺はもう立派な成人に育った。
ちなみにこの世界では十六歳で成人だ。
まあ俺は前世の記憶があるから、生まれたときから心は成人なんだけどね。
ある日、家族で食事をとっていると、
「エライデ、この先どうするつもり?」
この人は俺の母さんだ。
名前は、『ミリス・ハイスキルマエード』だ。
結構歳とってるのに、かなりの美人さんだ。
俺にはもったいないくらい。
「どうするって?」
「ほら、あんたもう成人なんだから、就職に就かないと」
「ああ、そうだな。」
「この村で農民としてくらす?」
「う~ん………」
この村でスローライフを送るのもいいけど、やっぱり刺激が欲しいよな。
必死に考えて出た答えは、
「決めた。俺、冒険者になるよ」
「冒険者?やめといた方がいいわよ」
母さんが止める理由はわかっている。
冒険者は結構危険な職業だからな。
「ああ、危険なのはわかってる。でも、俺はそれがやりたいんだ」
「そう………あんたがやりたいなら仕方ないわね。結局決めるのは自分自身だから」
「で、いつ旅立つんだ?」
この人は俺の父さんだ。
名前は、『ウィール・ハイスキルマエード』。
見た目は頑固ジジイだが、意外と温厚だ。
「そうだな………明日くらいに行くか」
「「明日!?」」
「?うん」
「明日って急すぎるわよ」
「じゃ、じゃあ、一か月後くらい」
二人とも安堵のため息をついた。
俺が離れる心の準備みたいなのが欲しいのだろうか。
それから一か月が経過し、俺は外に出る支度をした。
「エライデ、これ持っていきなさい」
渡されたのは、巾着袋だった。
持った瞬間、ズシッとかなりの重さを感じた。
「これは?」
「金貨十枚よ」
「そんな、いいよ」
返そうとしたが、押し返された。
「いいから持っていきなさい」
「……じゃ、じゃあ、ありがたく貰っていくよ」
ちなみにこの世界の貨幣は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の四つにわけられている。
これを日本円にすると、
銅貨……10円
銀貨……1,000円
金貨……10,000円
白金貨……1,000,000円
になる。
だから、十万円をもらったことになるな。
「ありがとう。じゃあ、いってくる」
「いってらっしゃい」
「寂しかったら帰ってきていいんだぞ?」
「頑固そうなのに、そんな悲しそうな顔すんなって」
すると、少し気が和らいだようで、父さんも母さんも笑顔になった。
場が明るくなったところで、俺は家を出ることにした。
俺は扉を開け、外に踏み出した。
「またねー!」
「元気でやるんだぞー!」
「ああ、父さんも母さんも元気でな!」
俺は大きく手を振ってわかれた。




