失踪したと思った?残念俺だ!
衣装とは古来より特別な存在であった。
例えばメイド喫茶。
メイド喫茶はメイドの名を冠してはいるものの、本職のメイドなど居ない。
そんなことは客側も承知の事実である。
この施設はしかし通常の喫茶店とは別の客層を確かに獲得している。
何故か?それはメイド服の力である。
メイド服と言う特殊な服装が非日常的な世界観を演出し、見事にウェイトレスをメイドに客をご主人様にして見せた。
衣装の力は偉大であり特別である。
その魅力に魅入られた存在はどんな時代にも必ず居た。
「ヒャアッフォォォォーーーウゥ!!ヴィクトリアメイドは最高だじぇぇぇぇーーー!!」
ここに居る変態。もとい凄腕遺跡潜りのメイ・サクラギもまたメイド服、ひいては衣装に魅せられた者の1人であった。
「スカート持ち上げて恥ずかしそうに『は、恥ずかしいですご主人様ぁ』っ言った方がいいですか?」
『ノリノリじゃねぇか!』
「は、恥ずかしいですご主人様ぁ…」
「無理にやらなくていいよ」
現在時雨達+ニュンペー(変種)の一行は八寒地獄への忘れ物である兜を回収する為、地獄巡りが出来ると言う凄腕遺跡潜りメイ・サクラギの趣味に付き合っていた。
すなわちコスプレ撮影会である。
「うひひひー!じぁあつぎはそこの鎧のお嬢さんにエプロンドレスを…」
「うぇ!?私がドレスぅ?似合わないわよ」
メイがニュンペー(変種)にエプロンドレスを見せて言うと、ニュンペー(変種)が自分に似合わないと言った。
「ネタ的な意味じゃなくても充分似合うよ。綺麗な顔してるし。」
「なぁ!?」
「そうよー!綺麗なんだからもっとオシャレしなきゃ!えっとニュンペーちゃん?…種族名はややこしいわね。時雨、名前つけたげなさい。契約したんでしょ?」
そんなニュンペー(変種)の自虐に時雨が待ったをかけ、ニュンペー(変種)は思わず声を上げた。
その上時雨に同調したメイが時雨に名前をつけろなどと言うものだから時雨まで驚き、時雨とニュンペー(変種)は2人して動揺する姿を見せた。
「け、契約って言っても仮のやつですから…」
「そうですよ…第1私は人間にとっての敵性種族ですよ?!」
「正式契約しないと地獄めぐりしないわよ?」
「「なぁ!?」」
メイのが呆気無く放った言葉に時雨達は驚愕した。
「約束が違います!」
「いやだってさ?ザコのままじゃ私が居ても死ぬよ?いくら浅い所とは言え君達が生きてたのは奇跡なんだから。」
メイにかみつく様に言ったニュンペーだったが、メイの反論に何も言い返せない。
事実時雨の奥義によってギリギリの所で命を拾ったに過ぎないのは理解していたからだ。
「地獄って遺跡潜りの遺品や落し物が大量にあるからさぁ、物がどう言うのか分かる奴を連れてかないと、どれが目的の物か分かんないよ。」
「……どうする?」
「僕は無理矢理契約しようとは思わない。」
「兜の形やら色は俺達でも分かるし、戦力が必要なら他のマモノを探すなり、修行して鍛え上げるなりする。」
「だから……君が決めて欲しい。僕達と来るか、来ないか。」
ニュンペー(変種)を見つめて時雨は尋ねた。
「…貴様こそ良いの?私はアレよ?貴様を殺しそうとしたのよ?」
「別に?性根は優しいし。一回組んだ時はやり易かったし。」
「そう…じゃあ宜しくお願いするわ!」
ニュンペー(変種)は優しく微笑んで応えた。




