幕間 説明会を超えた作戦会議
「それじゃ戦闘の打ち合わせをするわよ」
「は、はい」
時雨はニュンペー(変種)とのドキドキ異世界講座(仮)を終えて地獄探索の打ち合わせに入った。
結構長い長い間話し合っていたが仕方ない。
地獄に限らず遺跡内部は全て戦場だ。
戦場で意思を疎通出来ない事は死を意味する。
意識の擦り合わせは大事である。
「で、何か案はあるの?」
「は、はい?」
「はい?じゃないわよ。貴様は自力で戦えないじゃないの。『マモノツカイ』は基本指揮官役よ。」
「ぼ、僕でいいんですか?りぃだぁ。」
「いいのよ。私は基本力尽くで何とかするタイプだし向いてないから」
「はぁぁ…」
少々困惑しつつも時雨は思考を巡らせた。
今真っ先に決めるべき事を考え優先順位づけしていく。少し時間が経つと時雨は考えを口にした。
「ま、先ず…逸れた仲間やニュンペー…さんの兜をどうするか決めましょう。はっきりしておかないと、いざと言うときに仲違いの原因になり得ます。僕は助けたいし探したいですけど…ニュンペーさんはどうです?」
「助けたいし探したいのは貴様の仲間?それとも兜?」
「両方です」
即答だった。悩む素ぶりは一切なかった。
「それはまた…どうして?仲間は兎も角、兜はただの道具よ?」
ニュンペー(変種)の疑問は最もである。
自分の命のかかった極限の状況では他者を慮ることは難しい。道具など尚更である。
その道具がさっき会ったばかりの…しかも殺し合った相手の物ともなると尚の事だ。
「だ、大事な物…なんでしょう?」
「え?」
「な、無くなったって気づいた時…取り乱してた…」ニュンペー(変種)は絶句した。
さっきも書いた事だが、命のかかった状況で他者を慮る事は難しい。
その上ニュンペー(変種)はさっき会ったばかりの相手で敵同士だった相手だ。
しかもニュンペー(変種)が兜が無い事に気付き取り乱していた時、時雨もまたペルの不在に取り乱していた。
そんな状況で尚も相手を見ていた。そして慮った。
どう考えたって異常である。
ニュンペー(変種)は時雨と言う人間の底にある部分に触れた気がした。
「ああ…そうね。大事な物よ…とても」
ここに来て初めてニュンペー(変種)は目に見えて優しげな表情を浮かべた。
その根底にあるのがどの様な物であっても、他者の思いには思いで答える。
ニュンペー(変種)の…彼女の礼儀であった。
「じゃあ探し出して回収するわよ。私の兜も…貴様の仲間も」
この後スムーズに話が運び、ハンドシグナルによる情報伝達を決定。
直ぐに探索を開始することになる。




