親友の居ない冒険 ぱーと1
楽しい雑学のコーナーの時雨は進行上のびくびくモードではありません。
地獄巡り『八寒地獄』第一層
skillの『けいやく』により時雨と契約し、一時的な物という契約ではあるものの時雨のマモノになった謎の騎士改めニュンペー(変種)は時雨と『八寒地獄』を歩いていた。
「何でこんなに寒いのよ!」
「寒い…。」
『湖裏水脈』から落ちてきた当初は感じなかった強烈な寒さが時雨達が襲った。
落ちてきた当初は崩落の穴が『湖裏水脈』の温度を伝え、多少なりとも暖められていた。(『湖裏水脈』は別に暖かい訳では無かったが『八寒地獄』は特別に寒い場所であった為、結果的に暖められる事となった)
それに加えて精神的に不安定であまり周りに気を回す余裕も2人には無かった。
「とにかく出口を探すわよ、地獄のマモノなんて相手出来ないわ。」
「…うん。」
「いい加減に立ち直りなさいよ。死に別れた訳じゃあるまいし。」
「ごめんなさい…。」
「いい加減にしないと、再会した時にあの人形に怒られるわよ。」
「そう…だね。」
時雨とニュンペー(変種)の即席コンビは余り上手くいってなかった。
というのペルが居ない時雨は相当引っ込み思案だったのだ。
ニュンペー(変種)と組んで泣くことは無くなったが、引っ込み思案は治らなかった。
「本当に寒いわ。鎧が分厚いからまだ耐えられるけど…貴様は辛そうね。」
「あっ、そのっ、大丈夫…です。」
「だから早く調子を戻しなさいよ。貴様は私を相手に大立ち回りを演じたんだから…貴様がそんなだと私も惨めになるじゃなない。」
「ごっ、ごめんなさい…。あの、松明とか燃やせる物ありますか?」
「燃やせるもの?この寒さじゃ火がつかないわよ。」
「大丈夫です…多分。」
ニュンペー(変種)は「本当ぅ?」と疑うような顔をしながらも松明を取り出して時雨に渡した。
すると時雨は「フゥッ」と火の息を吹いた。
時雨は火吹き芸も出来るのだ。松明に炎が灯った。
「おっどろいた!竜種みたいなことするわね貴様は。」
「僕の芸は奥義扱いになっていたので…出来るかなって思って…。」
この世界は時雨の居た世界とは根本的にルールが違う。skillや奥義等の産物は、この世界のルールがにより通常の物質や現象より上位の存在である。
故にこの世界において奥義等の能力は特別である。単に技術として出来るという事と、奥義やskillやabilityとして使えると言う事は大きな差があるのだ。
履歴書のskillとabilityの欄で人生が決まると言っても過言では無い。その上奥義が使えるのは何かの分野で上級者の域に到達した証であり、実質skillの上位互換である。奥義の火が松明一つ燃やせない道理は無かった。
「その調子よ!貴様の芸は奥義の域に達した一流の技なんだから!あの人形から離れても凄いのよ貴様は。」
「あ、ありがとう。」
ほんの少しではあるがペルと離れてから始めて時雨が笑った。普通の人にとっては当たり前のことだが、時雨にとっては大きな変化であった。
「時雨と」
「ニュンペーの」
「「楽しい雑学」」
「今回は八寒地獄についてよ」
「と言っても詳しい記録とか資料は無いんだよね」
「ただひたすらに寒いだけの地獄よ。」




