キャラ崩壊は作者のミスだけど許して
視界も暗い。どうやら眠ってしまっていた様だ。
異様に身体が重い。苦しい。一体どうなっているのだろうか?
そこまで考えて時雨は重たい瞼を開けた。
「…誰?」
瞼を開いた先に広がった景色は、見知らぬ女の顔であった。
遺跡崩落によって自分の上に落ちて来たのだろう。
それはわかる。しかし相手に見覚えが無い。
女はまだ眠っていた。
当たり前の事だ。起きていたらとっくに時雨の上から退いていただろう。
「起きろー」
時雨は女の頬をぺちぺち叩いて言った。
時雨は自力で起き上がれなかったのである。
女の身体が重たかった為である。体重の問題とか言うレベルでは無い。鉛でも纏っているんじゃないかと思う位である。
「んんっ…姉さんもっと優しく…」
「男の子だよー」
女の寝言に律儀に返事を返しつつ、時雨は頬を叩いて起こそうとする。
「んー。何よ全く…起きる…起きるわよ…」
女がそう言い目を擦りながら瞼を開けた。
「おはよう」
時雨は女に対してにこやかに言った。
すると女は驚愕の表情を浮かべ、時雨の上から飛び退いた。
「き、貴様ァ!わ、私にななな何をする!」
「え?酷くない?」
飛び退いた女の言葉に、時雨はちょっと不満げな顔をした。
女は見覚えのある格好をしていた。あの謎の騎士の鎧である。
「大体!私と貴様は敵同士で…あれ?兜は?」
「落っこちる途中ですっぽ抜けたんじゃない?」
時雨は女が謎の騎士の正体だとは思えなかった。
謎の騎士と対峙した時、時雨は恐怖の余りまともに思考出来ていなかった。
戦いが出来ていたのは殆ど無意識の内の行動である。
芸人の経験と技術の染み付きが成した技である。
「どこいったんですか〜私の兜ちゃん〜!」
「キャラが迷子だよ?…あれ?ペルも迷子?」
そこで初めて時雨は自分の手の異変…腹話術人形のペルが居ない事に気づいた。
「…ふぇっ」
「泣かないでよ〜私だって泣きたいのに敵の貴様まで泣かないでよ〜。」
時雨は数秒ほど自分の手を見て、急に泣き出した。
昔から時雨は泣かない子どもであった。
しかしそれはペルと出会ってからの話である。
ペルが心の支えであった為、一度ペルから離れた時雨ははっきり言って泣き虫であった。
「ひっぐ…えっぐ…ペェルゥ〜…ひっぐ」
「だから泣かないでって〜私と貴様しか居ないのに〜!」
女は慌てた。敵と2人きりで、お気に入りの兜はどこかにいってしまい、挙げ句の果てに敵が泣き出したのだ。はっきり言って何をどうすればいいのかさえわからなかった。
「だってペルが〜…ペルが〜!」
「あーもうっ!わかった!わかったわよ!私が変わりに一緒に居るから!だから泣かないでよ〜!」
女は混乱した挙句、ヤケクソ気味に言った。
普段なら絶対に言わない事であったが、しかし女は急な状況の変化に混乱していた。その上女達が居る場所も問題であった。
「ひっぐ…えっぐ…いっしょに?」
「『湖裏水脈』ならともかく、その下の遺跡を一人では歩けないし…出るまでは利用し合いましょう?」
女は時雨に手を出し、時雨はその手を見つめ恐る恐る手を取った。
ペルが行方不明になり時雨が泣きだしてしまった為、「楽しい雑学」のコーナーはお休みです。




