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鉄壁のギルガⅢ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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08 調査依頼の終結

自ら死地に飛び込んだビステテューの、命運や、いかに?

 光と風と、石礫(いしつぶて)の乱舞。

 もしも直接それを喰らっていたら、とても無事では済まなかったろう。

 しかし、無数とも思えた石礫は、すべてドラゴンゴーレムの体表で弾かれていた。

(しまった!

 ドラゴンゴーレムがこちらに来たということは・・・)

 ビステテューを守る者がいないということだ。

 同じことを考えたのだろう、見上げるリーリアと目があった。

 首を振るリーリアが、

「魔法を行使するには、ビステテューさんと相手が近すぎます。

 それに、視覚が遮られていては・・・」

 リーリアの悲痛な表情が一転、笑みが浮かび、

「でも、ビステテューさんの魔力は(つい)えてはいません。」

「無事ということですか?」

 そう言うなり、ギルガはドラゴンゴーレムの陰から飛び出した。

 ちらりと振り返ってみると、ドラゴンゴーレムの体表には傷一つない。

 損傷はなかったのか、あるいは瞬時に修復されたのか。

 いずれにせよ、ドラゴンゴーレムが健在となれば、召喚主のビステテューは無事と言うことだ。

「あれは?」

 敵ゴーレムがいた場所の胸の高さほどのところに、光を放つものが浮いている。

 それはゆっくりと高度を下げ、やがて光を失った後に、残されていたもの。

「ビステテュー・・・さん?」

「ふぅ。

 死ぬかと思った。

 いや、死んだ?

 確実に。」

「ビステテューさん!」

 背後から、リーリアの声がする。

「あの・・・その子は?」

 ゴーレムの残骸の中に立つ、ビステテュー。

 その腕の中にあるもの・・・

「わたしにも、分からない。

 一つ言えることは、あのゴーレムは、この子を守る揺り篭(ゆりかご)だった。

 でも、今は・・・」

「これは・・・報告するのが大変そうね。」

 駆けつけたシャーナが、ため息がちにつぶやく。

「もう、危険はないんですよね?」

 尋ねるエンゲに、

「何しろ、調査対象が爆散しちまったものな。」

 ニナは、周囲の様子を窺がっている。

「結局、何が目的だったんでしょうか?」

 誰にともなく尋ねるリーリアに、

「そうですね。」

 中途半端な答えを返すギルガ。

「仕掛けた者の痕跡は、残ってはいないようだね。」

 ニナは、足元の土くれを踏んで崩している。

「で、その子はどうするんですか?」

 尋ねたエンゲに、ビステテューは無言のまま、腕の中のものを押し付ける。

 エンゲが抱き取った途端、それは、声を上げて泣き出した。

「ぼ、ボクはこういうのは苦手で・・・」

 エンゲが、おっかなびっくりニナに引き渡す。

「えっ?あたしだってダメさ。」

 次に受け取ったシャーナは、

「ん~無理ッ!」

 一見、お似合いに見えたリーリアだが、

「わたしだって、無理です~!」

 最後にたどり着いたのは、ギルガだった。

 一同が見守る中、ギルガが受け取った途端に、泣き声は収まった。

「・・・って、えっ?

 どうして?」

 納得いかない顔のリーリアを他所(よそ)に、ポンポンと、やさしく背中を叩くギルガの手つきは、まるで熟練の母親のようだった。

「年の離れた兄弟がいたので、良く、子守をやらされたものです。」

 逞しいギルガの腕の中で、赤ん坊が、朗らかな笑い声を上げていた。

ヘタれ冒険者ビステテュー「最後に主役を持ってかれた・・・」

毒舌魔法使いのシャーナ「ギルガに?それとも、赤ちゃんに?」

天然神官のリーリア「ギルガさんの特技が、また一つ明らかになりましたね。」

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