表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄壁のギルガⅢ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
7/12

06 ドラゴンを従えしもの

突然現れたドラゴン。

その正体は・・・

「睨めっこでも・・・してるんでしょうか?」

「どうなんだろ?

 ゴーレム同士で、なんか特別に、戦いの前の作法があるとか?」

 リーリアの問いに、シャーナは生真面目(きまじめ)に応えるが、実際のところ、そういう理由ではないだろうとは思っている。

 まったく、あんな桁違いの魔力を持ってるクセに、戦闘はからきしって、あり得ない。

「ギルガさん!」

 リーリアが声をかけた方向に、シャーナは顔を向ける。

 二人を抱えてなお、人並み以上の速さで駆けてきたギルガが、エンゲとニナを地面に下ろした。

「お二人とも、おケガはありませんか?」

 尋ねるリーリアに、エンゲは頭を振って、

「ボクは大丈夫だが・・・ニナは?」

「あたしも大丈夫だよ。

 それより、もっと離れなくていいのかい?」

 ニナが、睨み合っているゴーレムとドラゴンの方に顎をしゃくってみせる。

 長弓の最大射程よりは遥かに距離はあるものの、魔法攻撃なら、相手が視認できる範囲であれば届いてしまう。

「防御結界は展開済みですし、フィノさんも出張(でば)ってくれてます。」

 リーリアがそう言うと、足元からニャアと、呑気な声が返事した。

「最悪、僕が殿(しんがり)で、皆が引き上げる時間は確保できます。

 それよりも、むしろ今は、強者同士の戦いから、何かを学ぶべきです。」

「確かに。

 人のやり方を見て覚えるってのは大事よね。

 でも、あの人の戦法って、真似できるようなものなのかしら?」

 シャーナの言いように、ニナが疑問を顔に浮かべて、

「あの人・・・って、誰さ?」

「!」

 顔を見合わせる、リーリアとシャーナ。

 苦笑しつつギルガが、

「ゴーレムのずっと上の方に、風船のようなものが見えませんか?」

「えっ?」

「あ、本当だ。

 あれは?」

 目の良いエルフだけに、それを先に見つけたのはエンゲだった。

「ゴーレムの召喚主です。」

「えっ?」

「どうして?」

 わけが分からないという顔をするニナとエンゲに、

「お二人には、ドラゴンにしか見えないでしょうね。

 僕も、最初見た時には、我が目を疑いました。」

「あのドラゴンが、ゴーレム?」

「ええ。

 そして、あの風船の中にいるのが、ドラゴンゴーレムの召喚主の、ビステテュー先生です。」




「怖い怖い怖い怖い・・・」

 ビステテューは、ぶつぶつと呟きながら、ゴンドラ型のゴーレムの手すりにしがみついていた。

 そもそも、ビステテューは高いところが大の苦手だった。

 それに加えて、戦うこと自体も、好きではない。

 だから、自分の身を守るために、あるいは自分の代わりに戦ってくれるようにと、ゴーレムを召喚する。

 元々、召喚術の素養があったことに加え、探究心旺盛なビステテューの気性に、ゴーレム召喚の魔法は相性が良かった。

 学園長に才能を見い出され、学園で学んでいた頃は、授業そっちのけでゴーレムの研究にのめり込み、魔力が尽きて倒れ()し、そのまま朝を迎えるということが度々あった。

 だからこそ、冒険者ではなく、学園の教師になる道を選んだのだ。

(でも、あの子ったら、なんで攻撃を仕掛けてこないのかしら?)

 怖がりつつも、ビステテューは、敵対するゴーレムから目を離していない。

 直接攻撃は届かないが、数歩踏み出せば接触可能な距離をとって、巨大なヒト型のゴーレムと、ドラゴン型のゴーレムが対峙(たいじ)している。

 ビステテューは、ゴーレムを召喚し、命令を出すが、細かい動作まで指示することはない。

 長年の鍛錬により、ビステテューの呼び出すゴーレムは、召喚主たるビステテューの意図を理解し、自分で判断して適切な行動ができる段階に至っている。

 もっとも、学園の教師となってからは本業が忙しすぎ、魔力強化という、基礎中の基礎と言える鍛錬を怠っていたことは否めない。

 それ故に、冒険者組合より、調査支援依頼の連絡を受けた学園長から、せっかくの機会なので参加するようにとの指令を受けたのだった。

 以前取得したものの、どこかにしまいこんで行方不明となった認識票を再発行してもらうのと、強すぎず弱すぎない、都合の良い冒険者パーティを見つけるのとで、出遅れてしまったビステテューだった。

(もしかすると・・・)

 ビステテューが思念を送ると、ドラゴンゴーレムは、敵ゴーレムに顔を向けたまま後退する。

 敵ゴーレムは、追って来ない。

(わたしの命令は、『冒険者パーティを守れ』だった。

 もしも、あの子も同じような命令を受けて行動しているのなら・・・

 こちらから仕掛けなければ、反撃もない?)

 とは言え、反撃がないからと言って、敵ゴーレムをこのまま放置はできない。

(仕方ない、こうなったら・・・)

 ビステテューは、手すりの上に立ち上がった。

 目標は大きいが、何しろ高さに目がくらむ。

 その上、足元がガクガク震える。

 ともすれば腰砕けになりそうな自分に気合を入れつつ、ビステテューは空中に身を躍らせた。

「ドラムちゃん!

 わたしを受け止めて!」

 ビステテューの決死の叫びは、果たして・・・

ヘタれ冒険者ビステテュー「実は、わたしが主役だったり?いや、主役でしょ。完璧に。」

毒舌魔法使いのシャーナ「天と地がひっくり返っても、それだけはないわ。」

天然神官のリーリア「ビステテューさんって、悪い人ではないんですが・・・」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ