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鉄壁のギルガⅢ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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05 救援

万事休すかと思われたエンゲだったが・・・

(まだ、生きてる?)

 どうやら、土壁が衝撃を吸収してくれたらしい・・・と、エンゲは見てとった。

(強運と言うべきか、不運と言うべきか・・・)

 意識は、はっきりしている。

 身体も、わずかにかすり傷を負ったくらいのようだ。

 幸い、崩れた土壁の陰になって、ゴーレムはこちらを見失っているらしい。

 とは言え、ほぼ魔力を使い切ったエンゲには、もはや戦う余力はなかった。

(ニナは、逃げ出せたろうか?)

 ゴーレムの気配は、動いていない。

 ニナの気配もまた、動きを止めていた。

(なぜ、逃げなかった?)

 あろうことか、ニナの気配がより強くなっている。

 つまり、魔力を集中しているということだ。

(意図は分かるが、僕らの魔力程度では・・・)

 無駄な努力と思いつつ、仕方がないかなという諦めもある。

(我が力及ばず、この地に果てるか・・・)

 惜しむらくは、もっとニナと(ねんご)ろになっておくべきだったと思う。

(ドワーフは、房事(ぼうじ)には存外に淡白と言う話だったが・・・)

 そういう視点でドワーフを見たことがないエンゲだったが、少なくとも、ニナの温もりは悪いものではなかった。

 毛深いけども柔らかい、ニナの温かい肌の感触を思い出しているエンゲの周囲が、不意に陰った。

(なんだ?)

 見上げた先に、あったもの。

(まさか・・・)

 エルフよりも、さらに古き時代より生けるもの、即ちドラゴン。

(なんなんだよ、もう・・・)

 もはや、一介(いっかい)のエルフ如きにできることはない。

 ゴーレムの足留めのために魔法を放った時には、あるいは万が一という可能性も考えなくもなかったが、ドラゴンが相手では、可能性は皆無だ。

 頭の中が真っ白になり、文字通り凍りついた(てい)のエンゲの目前に、ズンと、音をたてて何かが落ちてきた。

 それがヒト族の青年であることに気がつくまでに、数瞬。

「おケガはありませんか?」

 エルフよりも背が高く、ドワーフよりも厚みのある偉丈夫(いじょうふ)が、人当たりの良い、柔らかな笑みを浮かべている。

「えっ?

 いや、大丈夫です、全然。」

「それは良かった。

 それじゃ、すぐにここを離れましょう。」

「いや、でも、僕は・・・」

 腰が抜けて立てないとは、さすがに恥ずかしくて言い出せなかった。

 するとその青年は、

「これは申し訳ない。

 それじゃ、背中に乗ってください。」

 そう言って青年は、背中の盾を手に持つと、エンゲに背を向けてしゃがみ込む。

 躊躇(ちゅうちょ)しているエンゲに、

「さすがにゆっくりとはしていられないので、少し手荒くさせていただきますよ!」

 そう言うなり、青年はエンゲの腰に手を廻し、抱え上げざま走り出す。

「うわっ!えっ?えっ?」

 エンゲの体重などまったく苦にすることもなく、決して平坦とは言えない草原を駆ける青年。

「そう言えば、名乗るのを忘れてました。

 僕はギルガです。」

 相当な速さで走っているにも関わらず、その口調には揺らぎがない。

「ボクは、エンゲ、です。」

 抱えられているエンゲの方が、声を出すのもようやくという(てい)たらくだ。

「もう一人、ドワーフの女性が、近くにいたはずなんですが・・・」

「ドワーフですか?」

 走りながら周囲を見渡すギルガは、すぐに走る方向を転じ、

「よいしょっと。」

 走りながら肩に抱えているエンゲの身体の位置を微調整すると、立ち尽くすドワーフを、背後から胸の中に抱きとめる。

「・・・えっ?」

 何が起こったのか分からないまま、ギルガの厚い胸板に顔を埋めることになったニナに、

「僕はギルガです。

 貴女は?」

「ニナ・・・です。」

「無事でよかった。」

 ギルガの右手がエンゲを抱え、左手はニナの臀部(でんぶ)を下から支える。

 ギルガの無骨な顔を、ニナはすぐ近くから見上げる格好になった。

 ニナの心臓が、ドクンと一つ、大きく鳴った。

残念エルフのエンゲ「あれ?実はボクって、ヒロイン枠?」

主役をさらうギルガ「人には、誰しも担うべき役割があるものですよ。」

男前ドワーフのニナ「ヒロイン枠ってのは、否定しないんだ。」


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