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鉄壁のギルガⅢ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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04 ニナの決意

地上に出たエンゲとニナだが・・・

 目が、合ったような気がした。

 ゴーレムに、目玉があったとするならば、だが。

 走る、ニナ。

 同様に駆け出しかけ、エンゲはすぐに足を止める。

「何やってるんだい!?」

 呼びかけるニナに、エンゲは背中を向けたまま、

「ここはボクに、任せてくれ!」

「なッ?」

「土壁、生成!」

 地面から生えてきた、いくつもの土の壁が、たちまちエンゲとゴーレムの姿を隠してゆく。

「エンゲ!」

「行くんだ、ニナ!

 君だけでも・・・」

 ドンと言う、轟音(ごうおん)一閃、打ち砕かれる、土の壁。

 エンゲの姿は、見えない。

 目前に飛んでくる土くれを、ニナは手甲(てこう)で叩き落す。

 治っている筈の背中のキズが、ズキリと痛んだ気がした。

 手の甲に残る感触の余韻が、熱い。

 ギリッと、奥歯を噛み締める。

 彼我(ひが)の能力差は、比較することさえ、おこがましい。

 それでも、いや、だからこそ・・・

 改めてニナは、ゴーレムに相対(あいたい)する。

 不思議と、エンゲの心配はしなかった。

 ドワーフの基準からすれば骨と皮しかない、脆弱(ぜいじゃく)すぎる体躯(たいく)の青年が見せた男気が、ニナの身体に力をくれた。

 正直言って、エンゲを当てになど、してはいなかった。

 他人に何かを期待すれば、必ず裏切られる。

 だから、自分の道は自分で切り開くしかない。

 そうやって今まで生きてきたのだし、これからもそうだろう。

 もしも今、ゴーレムによって(ほふ)られることになったとしても、自分で選んだ自分の道だ。

 唯一つ、思い残すことがあるとしたら・・・

(あいつと一晩でも、一緒に過ごせたら良かったかな。)

 ドワーフ基準では醜男(しこお)以外の何者でもないエンゲだが、ニナとしては、それも有りだと思っている。

(とまれ、余計なことを考えるのは後だ。

 全身全霊をかけた一撃を、放つのみ。)

 ニナは胸の前で、手甲に包まれた拳を交差する。

 エンゲのことを考えたおかげか、不思議な程に落ち着いている。

 目前のゴーレム以外のものが、意識の外に消えてゆく。

 ゆるりと、左足が前に出て、右腕を後ろに引く。

 待ち受ける、ゴーレム。

 まともに打ち込んでも、すべての打撃は弾かれ、魔法はその滑らかな表面で四散するのみだろう。

 それならば、力を一点に凝縮し、正面から強固な装甲を穿(うが)つだけだ。

 余計な思考は、集中を阻害する。

 悲しいことも。

 辛いことも。

 嬉しかったことも。

 悔しみも。

 心地よかったことも。

 すべての想いを収斂(しゅうれん)して、己が拳を叩き込む。

()して、参る!)

 ニナの足が、地を蹴った。

 いや、そうしようとして、周囲が影に包まれていることに気がついた。

(上?)

 見上げた瞬間、後ろ髪がそそけ立った。

 天を半ば覆う程に巨大な影は、まさしく・・・

「ドラゴン?」

 ニナは、言葉を失っていた。

残念エルフのエンゲ「たまにはボクも、カッコいいところを見せないと。」

男前ドワーフのニナ「結局、足止めにはならなかったけどね。」

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