10 新パーティの初仕事
新規メンバー参加後の初仕事の結果は?・・・
それは、蹂躙だった。
圧倒的なまでの暴力の前には、何もかもが無力だった。
刃は折れ、矢は尽き、盾は打ち砕かれた。
火炎が、氷槍が、水流が、疾風が、電撃が、無数の刃となって、敵に襲い掛かった。
元より脆弱な者たちは、為す術もなく、大地に骸を晒していた。
「初撃、成功です。
予定通り、ゴーレムはいったん引き上げましょう!」
「了解!
ゴーレムちゃんたち、戻りなさい!」
エンゲの言にしたがい、指示を出す、ビステテュー。
草原を並んで進んでいたゴーレムたちが、一斉に踵を返して戻り始める。
わずかに生き延びたゴブリンどもが、おっかなびっくり背後から攻撃をしかけるが、装甲で覆われているゴーレムたちに、損傷を与えることはできない。
「さて、我らの出番かね。」
「掃討戦とは言え、まだ隠れている数は多いようです。
安全重視で、よろしくお願いします。」
「おうよ!」
特製の皮鎧に身を包み、金属の爪を埋め込んだ両手の手甲を打ち合わせつつ、ニナが駆け出す。
少し遅れて、重装のギルガが追いかける。
すっかり手に馴染んだ長剣と盾は、たちまちゴブリン共の鮮血で染まっていった。
「援護、よろしくお願いします!」
背後のシャーナにそう言いつつ、自身も弓を構えるエンゲ。
ゴブリンを蹴散らしながら進むギルガとニナの頭上を越えて矢が奔り、天上から火炎弾が降り注ぐ。
着々と、ゴブリンの数は減っているようだ。
「そろそろ・・・かしらね?」
ビステテューのつぶやきに応えるかのように、その視線の先に煙が上がった。
ゴブリンの巣の、事前に調査済みの抜け穴のうち、もっとも大きく出入りの多いものを除いたすべてに、それぞれゴーレムが二体ずつ配置されている。
その一方が火炎を放出し、もう一方が穴の内部に風を送る。
炎と煙に巻かれたゴブリンたちが脱出する場所は、たった一つだ。
「逃げ足が速いのが、もう出てきました。
今のところは、雑魚ばかりのようです。」
「リーリアさん、準備はできてますね?」
「いつでも、大丈夫です!」
「ホブゴブリン、来ます!」
「火炎魔法を集中してッ!」
「獄炎弾!連撃!」
ホブゴブリンの数だけ火の弾が放たれ、目標を打ち抜く。
「お見事!」
「頭目はまだッ?」
「まだ・・・いや、来ます!」
その者が出現した瞬間、明らかに空気が変わった。
まるで、太陽さえ光を減じたように、大気は冷え、口腔に苦味が広がった。
敵は防御結界を張りつつ、呪術魔法の詠唱がかすかに聞こえてくる。
「リーリアさん!」
「抗呪結界、広域展開!」
その瞬間、太陽の温もりが蘇った。
視界から、黒い霞が吹き払われる。
「止めよ!ドラムちゃん!」
「火炎防御!」
最後尾に控えていたドラゴンゴーレムから、火炎ブレスが迸る。
「熱ッ!」
リーリアが展開した防御結界で相殺しきれなかったのか、エンゲの悲鳴が上がる。
「ぎゃあああががががががあっ!」
つい先刻までゴブリンの首魁が立っていた場所から、火の柱が吹き上げた。
よく見ればそれは小柄なヒト型をしていたが、程なく、炎の中で崩れ落ちる。
「やった・・・か?」
「まだ、気を抜かないで!
一匹でも逃がしたら、またすぐに増えるわ!」
「分かってますって!」
焦げた髪から手を離し、エンゲは意識を周囲に巡らせる。
大きな魔力を持つ敵は、もはや存在せず、逃げ惑うゴブリンは、一匹、また一匹と討たれてゆく。
程なく、草原の地下に住処を構えていたゴブリンどもは、一匹残らず掃討された。
残念エルフのエンゲ「なんか、あっという間に終わっちゃいましたね。」
男前ドワーフのニナ「残り一回、まだ、気を抜くんじゃないよ!」