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鉄壁のギルガⅢ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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09 後始末

調査依頼は完了したが・・・

 ビステテューからの報告をもって、魔物調査の依頼は完了した。

 ゴーレム出現の原因、場所、召喚者、意図など、すべては不明。

 しかし、曲がりなりにも学園の教師として実績のあるビステテューからの報告ということもあり、冒険者組合はそれを受理し、予定されていた報酬は支払われた。

 調査&報告の報酬は、六パーティ分の合計で小金貨三十枚だったが、結果的にゴーレムは破壊されたので、討伐報酬として小金貨百枚が上乗せされていた。

 学園の食堂に集まった一同に、ビステテューは一人当たり二十枚ずつの小金貨の山を割り当てた。

「ほとんどお役にたてなかったと言うのに、こんなにいただいていいんでしょうか?」

 と、ギルガ。

「討伐報酬分は、余計じゃないかい?」

 こちらは、ニナ。

「多いことには文句はありませんが、ビステテューさんは、それでよろしいのでしょうか?」

 リーリアの言いように、シャーナが頷く。

「でも、ビステテューさんが決めたことなんでしょう?

 それならボクは従いますよ。」

 淡白な語り口のエンゲは、小金貨の一つを取り上げ、クルクルと指の上で廻している。

「エルフのクセに、ずいぶん金物(かなもの)に執着するんだね。」

 あきれたようなニナの言いように、

「郷に入れば郷に従えですよ。

 エルフだからと言って、(かすみ)でお腹は(ふく)れません。」

 そうは言いつつも、さらに言葉をつないで、

「とはいえ、慈善事業ではないんですから、どうして山分けする気になったのか、その理由を知りたいところですね。」

 ピンと指先で弾いた金貨が、金貨の山の頂上に着地し、クルクルと廻っている。

「器用なもんだ。」

 ため息がちのニナだった。

「みんなに、お願いがあるの!」

 目前の五人のやりとりを眺めていたビステテューが、両手を組んで懇願のポーズを取る。

「お願い・・・ですか?」

「女性の頼みとあれば、可能な限り応えたいとは思いますが・・・」

 すぐに反応した男性陣に対し、女性たちは黙ったまま、ビステテューの続く言葉を待つ。

「ここにいる全員で、パーティを組んで欲しいの!」

「何か、事情がありそうですね?」

 ギルガの質問に、唇を噛み、(うつむ)くビステテュー。

「思い切って、話してみたら?

 学園には、何かとお世話になっているもの。

 余程のことがない限り、協力することに、(やぶさ)かじゃないわ。」

 珍しく、助け舟を出すシャーナ。

 五対の目に見つめられ、意を決したように、ビステテューは話し始めた。




「つまるところ、うち()に、あんたの盾になれと?」

 身も蓋もないニナの言いように、

「そういう言い方は、ないんじゃない・・・」

 エンゲの言葉は、ニナの一睨みで、尻すぼみに口の中に消えてゆく。

「他に、頼める人はいなかったの?」

 シャーナの質問に、ビステテューは頭を振って、

「学園の生徒には頼めないし、同僚たちは生徒への指導で忙しいし、冒険者組合には、あまり知り合いはいないし・・・」

「なる程、今回の依頼を受けたのは、仲間になってくれそうな人材を、探すためでもあったんですね。」

 穏やかだが、痛烈な一撃を放ったのは、ギルガだった。

「それって、ホント?」

 シャーナの質問に、ビステテューの顔が強張(こわば)る。

「図星ですか?

 確証はなかったんですがね。」

 あくまで穏やかな表情のギルガの、心の(うち)は読み取れない。

「無害そうな顔してるクセに、結構、腹黒(はらぐろ)よね。」

 シャーナの容赦ない言いように、ビステテューの目から、たちまち涙が溢れ出す。

「だって、だって、わたしの知り合いって、みんな、とんでもないバケモノばかりなんだもの。

 あんなのと一緒に戦ったら、わたしなんて、たちまち粉微塵(こなみじん)になって死んじゃうわ!

 若い身空で、まだ、結婚だってしてないのに。

 なんで、なんでわたしばっかり、こんな目に・・・」

 ポロポロと涙をこぼすビステテューだが、同情の眼差しを送っているのはエンゲだけだった。

「あんまりイジめなさんなよ。」

 呆れ顔のニナに、

「ビステテューさんの、飾らない、素直な物言いは、美点だと思います。」

「ものは言いようだよね。」

 悪意の欠片もない微笑(ほほえ)みを浮かべているリーリアと、皮肉な笑みのシャーナ。

 すると、一同の表情を(うか)がっていたギルガが、

「つまるところ、みなさん、パーティ結成には賛成のようですね。」

「えっ?これって、そういう流れ?」

 納得できないという顔をしているのは、エンゲだけのようだ。

「誰も、反対とは言ってなかったさ。」

 ニナが、口元を歪める。

 決して上品とは言いがたい表情だったが、目が笑っている。

「でも、これでますます、防御特化のパーティになるよね。」

 シャーナが、悪戯(いたずら)っぽい笑みを浮かべている。

「盾士のギルガさん、防御魔法のわたし、土壁のエンゲさんが守り主体で・・・」

「火炎魔法のシャーナさん、近接特化のニナさんに、ゴーレムは・・・」

「結局、まともな戦闘はしなかったけど、あのドラゴンゴーレムって、何ができるの?」

 リーリア、ギルガの言葉を引き継いで、シャーナが尋ねる。

「火炎ブレスに、氷弾ブレスに、電撃ブレスに・・・」

「えっ?それマジ?」

「一応、全属性攻撃は可能なんですけど、威力は大したことはないんです。

 デーモン辺りが出てきちゃうと、お手上げです。

 まともに相手できるのは、トロールとか、オーガくらいでしょうか?」

「それだけできりゃ、充分だよ。

 大体、うちらの階級じゃあ、ぎりぎり中級の魔物の単体討伐が精一杯さ。」

「あ、それなんですけど、実は、あのゴーレムさんは特級以上の魔物ということで、全員に評価点が加算されてます。

 つまり、みなさん昇級可能だそうですよ。」

「えっ?

 ホントかい?」

「てことは、全員中級冒険者ってことか。

 なんか、あんまり実感ないよね。」

「階級なんて、実績を積み上げれば勝手に付いてくるものです。

 むしろ、より強敵と会い見える可能性が高まるということですから、もっと、鍛錬に励む必要がありますね。」

「あーやっぱり、そうなりますよね~」

 肩を落とすビステテューに、

「何言ってるんだい!

 このパーティの最強火力なんだから、しっかりおしよ!」

「それじゃ、守りの方は、くれぐれもよろしくお願いしますね。」

「おう、任された!」

 そう言ってニナは、胸を張って応えた。

ヘタれ冒険者ビステテュー「鍛錬てことは、また、学園長に・・・ガクガクブルブル」

毒舌魔法使いのシャーナ「リザさんに、もっと鍛えてもらわなくっちゃね。ワクワク」

天然神官のリーリア「即死さえしなければ、おおむね助けられますので、がんばってくださいね。」

ビステテュー&シャーナ「・・・・」

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