君のためにI
ーー『リリィ』ーー
あれから軽く一時間が経過する。
「いいこと思い付いた!」っと言って森へ行ったハルはまだ帰ってこない。
・・・暇だ・・・暇すぎて死にそうだ・・・。
ユキはまだ寝ている。
ハルはいつになったら帰って来るのだろう?
明日には儀式が待っている。
早く帰って来て欲しい。
もしかしたらハルと一緒にいれるのは最後かもしれない。
怖い。もし明日の儀式で失敗したら?もしハルがいなくなったら?
私は生きていけない。
・・・考えたくない。なのに頭の中はいっぱいになる。
暇だからだ。暇だからこんなことしか、考えられなくなるんだ。
ねぇ、ハル。早く帰ってきてよ。
私を一人にしないで!
一人は怖い。
一人でいたくない。
一人は嫌だ。
怖い怖い怖い怖い・・・
「たっだいま~!リリィ!」
玄関からハルの声がする。
私はハルの声が聞こえると頭の中にあったモヤモヤがなくなる。
ほら、やっぱりハルは凄い!
あんなにモヤモヤしていたのにもうさっぱり消えた。
私は玄関へ走った。
ーー『ハル』ーー
「おかえり~ハル!」
家に着くとリリィが駆け寄ってき、私に抱きつく。
後ろにいる桜夜はビックリしているようだが、こんなのいつもの光景だ。
リリィは一人が何より怖い。
長く私から離れるとリリィはとても不安になるらしい。
多分、昔の出来事に頭がパニックを起こすのだろう。
そんな時は決まって私に抱きつく。
ユキがいるから大丈夫だと思ったが駄目だったか。
私はリリィの頭をなでなでする。
「ただいまリリィ。
長い間一人にしてごめんね。」
リリィはニコッとしながら首を振る。
「ううん!
もう平気!大丈夫だよ!」
あ・・・。かなり辛かったのかな。
こう返事している時は心配掛けまいとしている時だ。
でも、今日でこのやり取りもおしまい!
私は桜夜をリリィの前に押し出す。
「リリィ!
もう、儀式のことなんて考えなくていいよ!
彼の名前は桜夜。紅狐の桜夜だよ!」
「おっ、おい!いきなり押すなよ!」
「へ?」
フフッ・・・
リリィも桜夜もいきなりのことで困惑している。
「・・・え、ハル?何で契約したの?
ハルはもう契約っ・・・」
ん?あれ?
リリィは知らないのか?
まぁ、知らなくてもおかしくはない。
「リリィ、契約は何体とでも出来るんだよ?
まぁ、架空生物が悪の世界で架空生物と契約なんて、皆したくないだろ?
だから、契約をしても大体は一体だけなんだよ。」
私が契約について話すとリリィは頷く。
今回は理解したようだ。
でも、リリィは不満げの顔をしている。
どうしたんだろう?
リリィに聞きたいところだが、その前に頭首に話をしなければ。
もちろん、契約をするまでの流れはテキトーにするが。
「リリィ、ちょっと頭首のところに行ってくるよ。
桜夜と仲良くしときなよ~。」
「えっ!え?ちょっと待てよハル!?」
リリィは私を呼ぶが私は無視する。
ここで振り返ったらダメだ。
止まってしまうとリリィは私を行かせないようにするだろう。
ごめんねリリィ。
私はリリィの呼ぶ声に反応せず部屋を出る。
ーー『リリィ』ーー
ハルが私の声を無視した?
なんで?どうして?
いや、そんなことより何で紅狐と契約なんてしたんだ?
紅狐は三大上級架空生物なんだよ!?
そんな奴と契約したらハルを狙って架空生物がいっぱいきちゃうよ!?
「それは大丈夫だろ。」
!?!?
私がいっぱい考えている中、紅狐が解答する。
なっ、何で私の考えていることが分かるんだよ!
エスパーか!君にはエスパーでもあるのか!
「・・・いや、
そんなに顔に出ていたら誰でも分かるだろ。」
・・・かっ、顔に出ているだと!!
ハル!この紅狐は危険だ!危険すぎる!
契約破棄しないと危ないよ!!
いや、それよりも先に・・・
「紅狐!ハルが大丈夫ってどーゆーことだ!」
取り合えず質問をぶつけてみる。
ハルにもしものことがあったらアンタのせいだぞ!
「ん~多分だが、ハルの目的はそれだと思うよ。
架空生物を集めていくこと。
三大上級架空生物である私と契約したからねぇ。
何事だろう?って思った架空生物が沢山やってくるんじゃないかな?」
紅狐は少し笑いながら言ってくる。
何を笑ってるんだよアンタは!
そんなに架空生物が来ちゃったら今までやってきたことが!
せっかく内側から変えようと動いていたのに・・・
そんなことをしてしまったら頭首に見つかってしまうだろ!
なんてことをしてしまったんだハル~
「・・・君さぁ、リリィだっけ?
さっきからずっとハルのこと考えているだろ?」
ドキッ!
そんなことまで分かるのかこの紅狐は!
また顔に出していたのか私は!
でも・・・当たり前だ。
私にとってハルの存在はとても大きい。
ハルがいなくなってしまったら私はもう・・・
駄目だ。
紅狐と話していると頭がモウモウとしてくる。
「ハルに依存しすぎじゃない?」
紅狐が私の核心に触れてくる。
何も言えない。
「依存」・・・事実だからだ。
分かってる。そんなこと言われなくても私が一番よく分かってる。
紅狐が話を進める。
「昔に何があったのかは知らないけどさぁ。
そんなに依存してたら周りが見えないんじゃない?」
!!
何でそんなことまで!ハルが話したのか?
いや、そんな訳ない。
ハルは自分のことも他人のことも勝手に話したりなんて絶対にしない。
一瞬でも疑ってしまってごめんねハル!
じゃ、何でそこまで分かるんだ?
確かに昔、嫌なことがあった。
でも、それを知っているのはハルだけ。
「周りが見えてない」だって?
私は別にそれで構わない。
ハルがいてくれるのであれば、後はどうでもいい。
そんなことを考えていると紅狐が少し顔を下にして話だす。
「私は強い力があるからね。
ハルは無理だったけど君ぐらいの力なら私は浅くだが心を読むことが可能だ。」
なっ・・・
私の考えていたことが・・・
ぜ、ん、ぶ・・・
私は顔が赤くなるのを感じる。
何か言い返さないと!
このままでは、紅狐の言いたい放題になってしまう!
・・・何か!・・・何か!!
「さっ、サイテー!
人の心を読むなんてサイテーだ!」
とにかく言い返す。
何か言わないと紅狐の力に呑まれてしまいそうだ。
私の考えは余所に紅狐は少しニヤニヤし始めた。
余裕って感じか!
その顔、見ててイライラする。
「何を笑っている!
人の心を読む奴なんかにハルは渡せない!」
そう。渡せない。絶対に。
ハルの心は読めないって言った。
でも、そんなの本当か分からない。
もしも、ハルの心が読めていたら?
読めることによって、ハルを傷つけたりしたら?
そんなこと許さない!
どんな理由であれ、ハルを傷つける奴は許さない。
「フフッ・・・人の心?」
紅狐は笑っている。
その笑みはとても怖く感じる。
私は嫌なことを思いだす。
「そうだねぇ。
でも、流石に私でも人の心は読めないかなぁ。」
!!
この紅狐は私のことが分かって・・・
そんな・・・馬鹿な・・・
どうして・・・
今の私は・・・!
「ねぇ、フェンリルさん?」
読んでくれてありがとうございます(=゜ω゜)ノ
これから暗い話が続きます。
出来るだけ簡単に分かりやすく書くつもりですが質問などあればどうぞです(ーー;)