契約I
かつて人間は架空生物と共に平和な日常を過ごしていた
だが現代、架空生物より力を持った人間は人間以外の存在を<悪>とした
ーー『 』ーー
アカイ・・・
アカイ・・・アカイ・・・
村がアカイ・・
燃えてる・・・私の村が燃えてる・・・
イタイ・・・
アツイ・・・イタイ・・・
身体が動かない・・・
『***!』
***が叫びながら私の名前を呼ぶ
目から大量の水を流し、服は真っ赤になって、私を抱いているその手はフルえて・・・
『***、***!!』
***が何度も私の名前を呼ぶ
聞こえているよ・・・
でもね、身体が動かないの・・・
今すぐにでも***の大量の水を拭ってやりたい・・・
フルえる手を握ってやりたい・・・
なのに・・・
『***!!!』
あぁ・・・視界が真っ暗になってきた・・・
ねぇ、なかないで・・・
***の溢れ出る水の顔を最後に私は意識を手放した・・・
ーー『***』ーー
「ねぇ、ハル・・・また見たの?」
「・・・うん。」
リリィが心配そうに私に聞いてくる。
誕生日になると必ず見る夢。
身体は動かなくて、村が燃えていて、誰かが泣き叫んでいる悪夢。
「毎年だよね?」
「・・・うん。」
そう、毎年だ。
この悪夢を毎年誕生日の日に必ず見ている。
どーしてこんな夢を誕生日に見なきゃならんのだ!!
この夢を見た日は身体がとても重く感じ気分は最悪だ。
「もうそれってさぁ、未来とk」
ペシッ!!
私は透かさずリリィにチョップを入れる。
リリィの言いたいことは分かる。
どーせ「未来とかで起きることだったりして」とかだろう。
そんなことあって堪るか!!
リリィはチョップが入ったみたいで頭を抑え涙目になった。
「いたい・・・。痛いよハル・・・。
ちょ~痛いんですけど!!」
リリィは頭を擦りながらプルプルしている。
聞きたくなかったとはいえちょっと強くやりすぎたか?
ここは「ごめん」だよね?
・ ・ ・。
「そんな怖いこというからでしょ!!」
・ ・ ・。
ちっがーーーーう!!!
ばかーー!なんてことを言ってるのだ私は!!
痛がっている子に向かってこの言い方。
最悪じゃねーか!
リリィの様子は・・・
「でもさぁ、その夢ホントなんだろねぇ~?」
??
怒ってない?
リリィはいつもの事だって感じで笑っている。
よかった・・・私はホッとする。
リリィと私は家族の様な関係だ。
だから、ギスギスしたくない。
リリィはジッと私の方を見ながらそう呟くと静かにため息をついた。
『私立陰陽師学園』
その名の通り陰陽師になるための学園であり、陰陽術で架空生物を滅する勉強をしている。
身寄りのない子供たちを陰陽家に入れ、力のある子供を本家に、力のない子供を分家に分け生活している。
のだが・・・
ボフン!!!
背後から凄まじい爆発音が聞こえる。
またか・・・
「刹那、大丈夫か?」
「だ・・・だひひょうふ・・・。」
目を回しながら答える刹那。
その横で笑えるのを必死に隠そうとしているが、隠しきれていないリリィ。
どうやら刹那は<契約召喚>をしようとして失敗したらしい。
「なら、私がお手本ってのを見せてやるよ!」
「リリィ!やm」
『我の願いを叶えし者よ
我を主とて汝、我の命に応えたまえ
従順契約召喚』
ぽふん~。
しまった・・・遅かったか・・・
リリィはドヤ顔で私を見ている。
そこから現れたのは・・・
「ナノ~。」
もっこもこの身体で手に収まるサイズの小さな架空生物。
リリィが召喚した架空生物だ。成功したらしい。
いや、失敗か・・・
どうやら、召喚の仕方が悪かったみたいで、この子は喋れないみたいだ。
でも、リリィ。君はみんなと違うだろ?
「フファハッ!!」
刹那が笑いだす。
架空生物には下級・中級・上級に分かれており、召喚は本来であれば中級の子が出てくる。
なのに出てきたのは下級の子。
つまり<失敗>だ。
「笑うな!!」
リリィは笑われていることに恥ずかしいみたいだが、少し嬉しそうにしている。
・・・リリィはMじゃないよ?
リリィも今まで召喚が出来なかったからこの子が出てきて嬉しいんだよね。
「おっかしーなぁ??
なんで、下級の子が出てきたんだろ?
ねぇ、ハル?」
リリィが私に聞いてくる。
何度も言ってるんだけどなぁ・・・。
「リリィが使った術は従順契約じゃなくてその場だけの契約だから、根本から違うの。」
「なるほどねぇ~。」
リリィは頷いている。
アンタ絶対分かってないだろ。
私はこの説明を数え切れないほどしている。
なのに間違えるなんて・・・
「まぁどっちでもいいや!君の名前は「ユキ」な♡
雪ん子みたいだし!」
ん?どうやら契約が完了したみたいだ。
ユキがリリィの言葉に反応している。
「ナノナノ~!」
「これからよろしくな!
私の召喚獣さん!!」
リリィはホント嬉しそうにユキに向かって喋っている。
ってか召喚獣って・・・しかも雪ん子だからユキって・・・。
「術も命名もセンス皆無だね。」
「うっ、うるさい!」
私は少しため息をつきながらリリィに言う。
リリィは顔を赤くしながらユキを肩に乗っけている。
そんな私たちの様子を見ていた刹那がふと言いだした。
「そー言えば明日、ハルは妖怪の封印するんだよね?
どんな妖怪なの??」
刹那は不思議そうに聞いてくる。
そう明日は私が妖怪を封印する日。
リリィの方へ目をやると、リリィは下を向いている。
「『紅狐』
500年前に陰陽師本家の裏にある森に封印された上級妖怪で
上級架空生物の中でもかなりの強さで森の封印が解けかけているの。」
リリィの顔が曇っている。
「んで、森に封印しても無駄だと思った頭首は人間を器として封印する儀式に変えた。」
リリィの手は震えている。
そりゃーそうだよね。
人間を器にして成功した例がないもんね。
みんな架空生物の力で死んでしまうか、彼らに精神を乗っ取られるか。
この儀式で助かった人間はいない。
でも・・・
「大丈夫だよリリィ。
私はこの学園で一番力があるんだよ!
だから、頭首は私を器にしたんだよ!」
私はリリィに言い聞かせる。
いや、私自身に言い聞かせる。
森の封印を解くことが出来る妖怪だ。
そんな妖怪に私が耐えれるのか?・・・怖い・・・すごく怖い・・・
だから、自分に言い聞かせようとしたが、リリィの言葉は私の心に突き刺さる。
「ちがう!あいつは!!
あいつはそんなこと考えてない!
あいつは自分のことしか考えてない!
・・・ハルのことなんか何も・・・!」
「リリィ!!」
私はリリィの言葉を止める。
・・・知ってる。
・・・分かってる。
でも、頭首の命令は絶対だ。逆らうことは出来ない。
ここは学校だ。今の言葉を聞かれてないか私は周囲を見る。
・・・よかった。大丈夫みたいだ。
「その『あいつ』が私たちを拾って育ててくれたんだよ。」
周囲に聞こえないよう小声でリリィに言う。
リリィは頷くだけだった。
隣にいる刹那は困惑しているようだ。
「刹那ごめんね。
リリィはこの話嫌いだからさぁ。」
「いっいや!
私こそ何も知らないからって変なこと聞いたし・・・
ごめんなリリィ。
私は分家だから本家の話はあまり聞けなくて・・・」
「・・・いや。
私もごめんだからさ・・・。」
・・・静まる。
この沈黙は嫌だな。
それなら!!
「よし!
この話は終わり!
ついでに放課後練習も終わり!!
リリィも刹那も帰ろう!」
私は勢いよく立つと二人に向かって言ってみる。
どうやら二人とも私と同じことを思っていたらしい。
二人は立ち上がると荷物を持って、
「んじぁ、帰ろうか。」
「うん、帰ろっか。」
私たち三人は家の方へ歩き出した。
これからよろしくお願いします。
よければ好きな架空生物を教えて下さい(=゜ω゜)ノ