04
「新しい男、紹介する」
飛びつくように彼女は私の肩をつかんだ。え、なんで。意味がわからない。
「私の責任です!」
どうやら彼女は私から無理やり聞きだしたことのあらましの中で語られた、私の悲惨な"初めて"にとてもとても大きな罪悪感を持ってしまったらしい。(大きなお世話だと感じるのは私の心がすさんでいるからか)
「別にいいよ、気にしないで」
「気にするよ!ごめん、私がそんな男だと知らずにあんなやつ紹介したから」
彼女の口から"あんなやつ"とけん太が呼ばれたことに少なからず腹が立った自分にどきりとする。
そもそも私だって嫌いなやつと付き合うほど暇じゃない。好きだった。なんにも喋らなくても私を気遣ってくれていたのはわかっていたし、何しろあのファーストインプレッション。あんなにも鼓動が早くなったのは初めてだった。どちらかといえば内気(自分で言っちゃうけど)な私が「あれ誰?」と衝動的に聞いてしまったのは本当にすごいことで、その後ダブルデートという形で紹介された彼に運命だ!なんて最近の小学生だって思わないことまで考えちゃって。
・・・要するに私はまだ存分にけん太に未練があるらしい。ラブホテルを出て腹が立って投げつけた携帯(後からするから後悔と呼ぶのである)と呼ばれていたものには、こっそりバッテリーの裏に二人のプリクラが張ってあったりするから番号は勢いのまま変えられたが捨てられない。そう、それくらい未練タラタラなのである。
「もう今からセッティングしたから!行くよ、あや!」
素早い。彼女が必死に携帯をいじっていたのはそのためだったのか。
さあ行こうといさむ彼女に、本当いいから、と言っているのだが彼女は聞く耳を全く持たない。結局ずるずると引きずられる。(そうです彼女は中高大とテニス女。所詮図書室通いの女には勝てません)
ああもういいや、なんでも。
そんな気分になったのは校門まで文字通り引きずられた時だった。