01
今私と彼はベッドの上にいる。私は横たわっていて彼は端に腰掛けている。
二人の間に漂う空気は痛々しい。
いわゆるお互いが初体験とやらの直後で大方のカップルがそうであるように私たちのカップルも成功なんだか失敗なんだかよく分からない終わりを遂げ、そして事後から二人の間には会話がまだ、無い。
…いや確かに常に会話が無いカップルではあったものの、それにしても今この状況より少しは会話というものは有り(主に私が尋ね彼はああだのううだの答えるだけだが)二人の緩衝材として働いてくれていたのだが…今はそれがなくただただ苦しい空気が漂うだけ。 ああ、もう。
別にこんなことを考えたかったわけでも愚痴を零したかったわけでも無く、ほら私は女の子特有の空想を(またの名を妄想と言うのだろうが)エッチとやらに抱いていたわけでありまして……いやいやエッチに抱いていたっていうか事後の甘い時間?というのかな、本当はもっとロマンチックに彼が私の体をいたわって優しくキスしてくれたり二人の関係を確かめあって更にラブラブになるものだとばかし考えていたんですが…嗚呼なんて私は馬鹿なんだろう。
「けん太」
「・・・」
なに?と振り向く彼の目は鋭い。何よ、何で傷ついた目をしているの。男のくせに。
その目にびっくりして言うことを忘れてしまった。そして沈黙。この空気の中にいるだけで心臓に針が刺さる。
「なに」
「・・・なんでもない」
何か言わなくちゃいけない。何か言わなくちゃ。頭がぐるぐると高速で回転するが回転するだけで何もイコールをうまない。
彼はそんな私を見限るかのように立ち上がってぽつりと呟く。
「失敗だ」
シャワー室に向かう彼の背中は後悔という二文字でうまっていた。