願うことはただ1つ~兄の願い~
今回も短編でのお話で兄視点です。
拙い文書ですがよろしくお願いします
俺の名前はティルフ・ヴィーゼ。
爵位は男爵で今は王都に騎士見習いとして来ている。
我が家は貴族になる前からシュテルン公爵家に仕えており、爵位を持った今でも公爵家とは交流がある。
公爵家は二人兄弟で兄のレイヴィンは俺より4つ下で俺になついてくれて弟みたいな存在だ。
ただし、レイヴィンは無口でやる気がないというか覇気がないというか。
なんでもすぐ諦めてしまう感じで俺は心配していたが、妹のアリアと話すときは多少表情が変わる。
まー、アリアが規格外なお転婆で何をするかわからないからかもしれないが・・・・。
あれは俺が14歳、レイヴィンが10歳、アリアが8歳の時だ。
レイヴィンを連れて我が家に到着した時、
「お に い さ ま ぁ !! お か え り な さ ー い」
って声に辺りを見渡しても妹の姿はなかった。
どこに?って思ってるとレイヴィンが不意に上を指差した。
指先をたどるとアリアが屋根の上で手を振っていた。
「アリア!?」
「お兄様。今日はお天気よくて風も気持ちいいですよ」
って呑気に答える妹に頭痛がしてきた。
「アリア。今すぐ行くからそこでおとなしくまってろ」
「え~?自分で降りれるから大丈夫よ」
そういうがアリアは屋根をかけ、家の側の木に移ってスルスルおりると俺の元に走ってきた。
「あ、レイヴィン様こんにちは ぎゃん」
レイヴィン様ににこやかにあいさつするアリアの頭に俺の拳固が飛ぶ。
「アリア?この前木から落ちて高いところには登るなといってはずだ!!」
「え~。登ってないしあがっただけだもん」
涙目で頭を押さえながら反論するアリアにため息が出る。
その時、玄関の扉が勢いよく開き、冷気をまとった母上にアリアは連れて行かれた。
ふと後ろを見ると俯いてるレイヴィンの肩が震えていた。
珍しいことにレイヴィンが笑っている。
俺が思わず眺めているとレイヴィンが俺に気付いて顔を上げた。
「ご、ごめん・・・・。でも、アリアはいつみても面白いね」
苦しいとばかりに笑いつづけるレイヴィンを俺はポカーンと見続けていた。
殿下達と一緒にいるレイヴィンを何度かみたけどその時でさえ笑顔をあまりみたことなかったのにこんな年相応な笑顔に明日は槍でも降るんじゃないかと思ったくらいだ。
ただ、残念ながら俺と二人の時は笑顔になることはなかった・・・・。
それから8年経って、俺は王立騎士団に所属しレイヴィンとはほとんどあわなくなった。
ただ、殿下の周りにレイヴィンの姿をみなくなったのと遠目で見かけたレイヴィンの表情が前にも増して感情がなかったのが気になってアリアに手紙を頼んだが、返事は『問題ない』の一言だった。
ちなみにアリアはあの後。母上に3時間程お説教をくらい、母上監視のもとマナーと作業の日々が続いた成果か、前に比べれはおしとやかにはなっていた。
剣術も習っているので完全な淑女とはいかないが・・・・・。
アリアに様子を聞いてもレイヴィンの状態はあまりよくないと判断し、次の休みに会いに行こうと思った矢先、アリアが怪我した上に肩に呪印があると聞いた時には凍る思いだった。
この世界にはかつて精霊がいたといわれているが、西の最果ての国にはいるという伝承があるくらいで今ではは精霊の姿をみたものはいない。
ただ、精霊の力宿った火・風・土・水の宝玉を武器と融合することでそれぞれの属性に特化した武器になるが、宝玉の数が少ないのと扱える者が少ないので滅多にみることはない。
そしてその4属性とは別に光と闇の属性があるが光の属性は教会で管理し、闇の属性は危険が多いことから宝玉などはすべて封印してあるはずだった。
アリアの呪印は闇属性の呪印だった。
本人には適当なことをつたえてあるが、闇の呪印は放ったものを殺すか光の属性での治癒でしか消えない。
さらに呪印は命を蝕んでいくことがほとんだ。
だが、この国の教会の光属性では治癒は難しく隣国に行かせることになった。
そして封印してあるはずの闇の力がでたということは一大事でもある。
厳重に保管されてるはずの闇の宝玉は盗まれた形跡もなく、どこから発生したのか調査中だ。
これはトップクラスの者しか知らず、俺はある役目からその情報を知ることができた。
だが、知ったところで俺にはアリアを救うことはできないと悔しい思いをしてた時、レイヴィンがアリアと共に隣国に行くと言い出した。
今まで無気力だったのが嘘のように積極的に行動し、陛下とシュテルン公爵と父上に了承を得ていた。
そして殿下達とも笑顔で話しているのを見て俺は色々な意味で安心をした。
まー、レイヴィンが生き生きするようになった原因がアリアであるというのとアリアの呪印解決がレイヴィンにかかっているっていうのが悔しい限りだが・・・・。
願わくは2人の笑顔が消えないことをいのるばかりだ。
最後までありがとうございました。