王子ルートその1 地下室にて
1日目、地下室を選択
地下には、倉庫があります。
キネア領の備蓄として、日持ちする食糧品や、様々な特産品が蓄えられているのです。 昨晩のパーティで殿下にお送りした品も、この中から選びました。
「お疲れ様です。この前はありがとうございました。」
「おぉ、お嬢さま、どうなされました?」
「選んでいただいたワインを殿下にとても喜んでいただけたので、お伝えしようと。」
「わざわざありがとうございます。殿下にお喜びいただけたのでしたら、何よりにございます。
しかしワインもそうですが、殿下はお嬢さまの刺繍もたいそう喜ばれたのではないですか?」
「それは……えぇ、はい。」
お世辞かもしれませんが、お褒めいただけました。あの時の殿下の優しい微笑みが、頭に浮かびます。思い出すだけで、少し照れてしまいます。
――いけません。殿下には、婚約者がいらっしゃるのです。
「つかぬことをお聞きしますが……お嬢さまは、王太子殿下に拝謁なさるのは、初めてなのですか?」
「ええ、はい。お城にあがったのも初めてで、とても緊張してしまいました。それにしてと王太子殿下は、噂通りの、とても優しい素敵な方でした。」
「それはそれは……とても楽しい一時をお過ごしになられたようで、何よりです。」
「えっと……はい。」
楽しい一時、と言われ、即答できませんでした。
確かに殿下との一時は、夢のようなものでした。しかしながらそのせいで、アレア様のお気持ちを傷つけてしまいました。素直に、喜んではいけないような気がいたします。
「おや?何かあったのですか?私でよければお聞きいたしますよ。」
「いえ……ご心配いただきありがとうございます。だいじょうぶです。」
心配させてしまいました。
ですが……昨晩のことは私が悪いのです。
お話するようなことではないでしょう。
※ ※ ※ ※
「――それでは、おやすみなさいませ。」
「おやすみなさい。」
――パタン
静かに、扉が閉められます。
布団に潜り込み、枕に頭を沈めます。
――カサリ
「なにかしら?」
枕の下を探ると、何か紙があるのがわかりました。
取り出し、手探りで明かりをつけます。
「……お手紙?」
どなたからでしょう?
宛先も差出人もなく、封もされていません。
……?
ふぅわりと、何かの香りがしました。
昔、どこかでかいだような……。
……白い、薔薇……
……だめです。思い出せません。
とりあえず、中を読んでみましょう。
――愛しのミスリアへ
ただ一言、それだけが書かれていました。
お兄さま、でしょうか……?
……なんとなく、ちがう気がしました。
根拠はありませんが。
※ ※ ※ ※
――ミスリア、ねぇ、あそぼ?
うれしい
白いバラが、きれいね
――ふふ、ミスリアかわいい
かわいい?わたしが?ほんとうに?
――バラなんかより、ミスリアのがずっとかわいいよ
ふわりとしたえがお
……ねぇ、あなたはだぁれ?