共通ルート、その5、もしくは別名、序盤お兄さまイベント
「――足はひねってないようですね。」
「あの、ギイニ、もうだいじょうぶですから……。」
転んだというか、突き飛ばされたというか、扇子の勢いがすごすぎたというか、結果的に倒れたのは本当ですが、足なんてひねっていません。
だから、はやく、ドレスの裾を元に戻してもらえないでしょうか……。
――バタンッ
「ミスリアっ!」
「お兄さま!?」
――カッカッカッ
……ふわぁ……
「心配した。」
「お、お兄さま……。」
むぎゅうと、抱きしめられました。
正直、戸惑います。
エスコートしてるはずの王女さまは、どうしたのでしょう……?
それに……。
「お兄さま、苦しいです。」
「あぁ、すまない。怪我をしたと聞いて心配で。」
お兄さまは、昔から心配性です。
昔、お義母様にはたかれた時も……あれ?私は何を考えていたのでしょう?
あぁ、お兄さまのことでした。
そう、この前も、少し咳きこんだだけでしたのに、医者だなんだとずいぶん大げさでした。わざわざ領内唯一の女性のお医者さまを呼んでくださったのです。
なんと、お優しいお兄さまでしょう。私は、卑しい妾の子だというのに。
「疲れたろう?今日はもう帰ろう。」
「ですが……お兄さま、王女さまはだいじょうぶなのですか?」
「あぁ、だいじょうぶ、心配ない。ずいぶんお疲れになってしまわれたようだから、もう部屋にお戻りになられたよ。私も、今日はもうミスリアと一緒に帰りたい。」
「まぁ……本当に、よろしいのですか?
」
「もちろんさ。さあ、帰ろう?」
「きゃっ!」
……ギイニに続き、お兄さままで。なんということでしょう!
「お兄さま、歩けます。」
「私が運んであげたいんだ。私の我侭につきあっておくれ。」
「それでも……恥ずかしいです。」
大したことない怪我だというのに、年甲斐もなく恥ずかしい心地です。
――チュッ
額に、湿った冷たい感触が、触れました。
……頬が、熱いです。
「お、お兄さま……。」
「可愛いミスリア。」
にっこりと、微笑まれてしまいました。
……頬が熱くて、私は何も言えなくなってしまいました。