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繋がれた誓い ―白の誓い―  作者: 鏡 黒兎
4/10

共通ルート、その4、もしくは別名、序盤従者イベント

そして連れてこられたのは、衣装部屋ではありませんでした。


「あなた、わかってらして?私たちは、親切心で忠告してさしあげてるのよ?」

「最低限のパートナーの他に、従者の一人もつけてもらえないなんて、とっても可哀想な子にちがいないもの。」

「そうそ、キネア公の妹といっても、母親が娼婦じゃねえ?」


――クスクス


連れてこられた部屋は寝台も置かれた休憩室らしく、そこそこの広さがありました。

一、二、三……全部で六人のご令嬢が、私を含めれば七人いても、まだ余裕があるほどに。


――ガチャリ


扉が開き、更に3人ほど、追加で入ってきました。

部屋にはまだ余裕があります。


――カツカツカツ……


黒と紅のドレスをまとった、一際美しいご令嬢が目の前にきました。





――パシンッ


「――この泥棒猫が!」





「……痛い。」


思わず、つぶやいてしまいました。

扇子で頬をはたかれるなど、お義母さまが亡くなられて以来です。

あまりに久しぶりすぎて、呆然としてしまいました。


「あなた、お名前は?」

「……ミスリア・イル・キネアです。」

「まあ、キネア公の噂のできそこない?ずいぶん不作法だから恥ずかしくて外に出せないらしいとは聞いてましたが、本当ですのね。ほら、そんな風に床に座りこんでいるから、ドレスが汚れましてよ?それとも、その染みが目立たないようにさらに汚したいのかしら?でしたら手伝いましてよ。」


――グリグリ


ドレスの裾が、さらに汚れていきます。


――クスクス


誰も、助けてくれるわけがありません。

そういえば、あの時も……あれ?あの時とは、いつの話でしょう?

確かに昔、同じようにお義母さまに頬をはたかれて、何かがあったような気がするのですが……。


――ガチャリ


「――どちら様?」

「そちらにおわしますキネア公の妹君ミスリア様を護衛しております、ギイニと申します、アレア様。」


唯一の扉から正々堂々と入ってきたギイニに、何人かのご令嬢は驚き戸惑っています。


アレア様――ギイニのお陰で、貴族の事情に疎い私にも、目の前のお嬢様がどなただかわかりました。


アレア様は、王太子殿下の婚約者です。

もちろん、国内でも最上位の貴族に属します。

そのご高名は、私でも耳にするくらいです。


ならば、彼女がお怒りなのもごもっともでしょう。


私のような者が、王子様と踊ったりしたのですから――。


「あなたがパートナーというわけね?

――ええ、何も心配なさるようなことなどありませんよ。

私たち、ミスリア様がこのような場に慣れてないとお聞きして、いろいろ教えてさしあげてましたの。ねぇ、みなさん?」

「はい、アレア様の言う通りですわ。」

「衣装部屋にむかう途中で転んでしまわれたから、こちらでお休みしながらお話しておりましたの。」


ギイニの登場に動揺していた方々が、口々にアレア様に続きます。


私は、呆然としてしまいました。

なにも言うことが、できません。


――カンッ



鋭い金属音で、みなさま一斉に黙りました。

それは、ギイニが腰に下げている剣の鞘を打ち鳴らした音でした。

「――まあ、威嚇音を鳴らすなんて、無礼じゃなくて?」

「失礼いたしました。ですが、ミスリア様が転んだというのでしたら、一刻も早く医師に見せたく思いまして……失礼いたします。」

「え、きゃっ――。」


腰が、地面から離れました。

えぇっと……みなさまの視線が痛いです。恥ずかしいです。


「――下ろしてください、歩けます。」

「ダメです。足をひねっているともわかりませんから。では、失礼いたします。」


ギイニが、にこやかに告げます。

私の抗議を聞く気なんてこれっぽっちもありません。


私は恥ずかしくてみなさまがどのような顔をしてたかもわからないままに、その部屋を連れ去られるのでした。


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