殺人部と弓道部(3)
ッパンッッ...
「なんだよ、李霧。お前、劣ってるどころか逆に上手くなってね?」
「俺が練習してないとでも思ったか?朝昼献上して、一人で引いてますからー」
「さすが、我が部の期待のエースだな!!」
五人立ち(団体戦で行う、五人一組となって順番に引いていく試合形式)を終え、軽くミーティングすることになった。記録を見ていると、李霧は自分がいなかった一週間の記録を見つけた。
(...俺が上手くなった、というよりこいつらが劣ったんじゃ...)
大会が近いのにも関わらず、五割を超えてる部員が一人もいなかったのだ。
李霧の記録は、18/20中。ダントツだった。
「悪い、李霧。最近こんな感じなんだよな...」
「一週間前は全体的にもっと的中ありましたよね?」
「まぁな...でも、全員スランプになったのはいきなりなんだ。」
八尾によると、先週から大会も近いので顧問に黙って自主練をしていたらしい。しかし、練習すればするほど、的中が落ちるという。
李霧は話を聞きながら、その原因が何なのかすぐ分かった。しかし、何か引っかかる。
(奴らは校舎だけにいるわけじゃないのか...!?)
今まで、校舎外に悪霊が出るなんて事はなかった。
弓道場は校地内には建てられているが、校舎にくっついているわけではない。
(奴らは校舎内、じゃなくて校地内にでるのか!?)
李霧はすぐにでも殺人部の方に行きたかった。しかし、この雰囲気の中出て行くのは八尾が許さないだろう。なんせ、今頼れるのは李霧の的中だけなのだから。
李霧はかけられている時計を見た。
部活終わりまで、あと40分...。
(仕方ない。終わったらすぐ行こう...)
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一方、
殺人部の活動拠点、廃教室。
いつもなら入り口の札に「殺人部」と書かれているのだが、それは裏返され、代わりに「ボランティア部」と書かれていた。
那衣斗と泉弥は冊子を作っていた。
部屋に響くのはホッチキスで紙を留める音と、紙を整えるトントンという音だけ。
パチンッ...パチンッ...
「んー!!終わったぁぁ!!」
泉弥が思いきり伸びながら叫んだ。
「集中すると案外早く終わるな。それにしても、生徒会の奴らは仕事してないのかよ...」
那衣斗はついさっき終えた仕事の跡を見ながら呟いた。
「あいつらも人使い荒いよな!生徒総会の資料くらい、自分たちで作れっての!」
「激しく同意。よく1000人近くの資料作ったよな、2人で。」
「くっそー!後で文句言ってやろ!」
2人で不満をぶちまけていると、
生徒会役員の女子生徒が訪ねてきた。
「終わった?」
「はいはい。どうぞこれ。」
泉弥が皮肉を込めながら、資料を渡そうとした、が。
段ボールいっぱいの資料は、女子生徒一人で持つにはあまりにも重すぎる。
「...俺持ってくわ」
と、言うと泉弥は同じ階の生徒会室に、資料が入った段ボールを軽々と持って行った。
「泉弥...あいつやっぱり怪力だな...」
感心してるのか、はたまた、呆れているのか。そんな感じで那衣斗は呟いた。
すると、
ピロンッピロンッ
と那衣斗の携帯が鳴った。
(メッセ?誰だ?)
と、ディスプレイを覗くと、
まだ学校いる?
話したい事あるから完全下校まで残っててくれ。
李霧からのメッセージだった。
しかも個人メッセージ。
いつもならグループメッセージ機能を使うはずだが...
(なんだ...?)
不思議な意味を含んだメッセージに、那衣斗はただ疑問を抱くことしかできなかった....