殺人部と弓道部(1)
(...なんだ...)
李霧は昼休み中の廊下を歩いていた。
(...つけられてる?悪霊か...?)
しかし...
(違う、この気配...第一、今は昼休みだ!誰だ?しかも...なんかいっぱいいないか...!?)
自然と歩く速度も早くなる。
しかし、ついてくる気配も合わせて早くなっている。
(俺の本能が後ろを向いてはいけないって言ってる!)
李霧はとりあえず近くのトイレに逃げ込んだ。
すると...
「なんで逃げるの〜!?」
「出てきてよぉ〜!李霧くーーん!!」
「お願い〜♡」
「な、なんだよ...これ!?」
個室には入らなくてもいい事が分かり、李霧は手洗い場から、そのキャーキャーと騒ぐ声を聞いていた。
李霧は顔はかなりのイケメン顏だが、追っかけなんてされたことがなかった。
しかし、女子生徒の黄色い声に混じり、
「李ぃ霧ぃぃぃーー!!!」
男子生徒の太めの低い声が聞こえた。
李霧にはその声に聞き覚えがあった。
「あ...やべ...八尾先輩だ...」
だが、李霧には何か引っかかるものがあった。
(八尾先輩、男なのになんでトイレ入ってこないんだよ!?)
------
「李霧...」
依然として、何故か男子トイレに入らない男子生徒が、自分が探している人物の名を呟いた。
八尾竜賀、弓道部の部長をしている。
八尾には、李霧を探さなくてはならない理由があった。
「李霧!今日こそ練習に出てもらわないとメンバー落ちだぞ!」
------
(あぁ...そうだった...最近殺人部にしか顔出してなかったな...弓道部の方出ないと...ヤバいな...)
幼い頃から弓に触れてきた李霧は、家が厳しく、弓の道を絶つことができなかった。
だが、李霧も弓は好きであるため、そのことに反論はなかった。
しかし、もうかれこれ一週間、弓道部に顔を出していない。
一週間前はちょうど地区大会があって...
(...地区大会?)
そこで李霧は、黄色い声の理由が分かった。
地区大会で李霧は、個人優勝、射道優秀賞、さらに団体の顏となる、大前というポジションで、一躍有名になったのだ。
そして、部長が自分を探す理由も同時に分かった。
「上位大会、個人で出るのお前だけなんだぞ!?今日は絶対来いよ!
分かったな!?」
と、いう声が聞こえたのと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴った。
(でも、かと言って弓引いてない訳じゃないんだよなぁ...むしろ毎日、誰よりも引いてる自信ある...)
とか思いつつ、李霧は人の気配がなくなったことを確認し、トイレを後にした。
新章スタートです!!
ちなみに私は弓道部でした!!
大前でした!!
優勝した事はありませんが!!