男子高校生の鬼ごっこ(4)
...ッバァンッ...
その音と、新たな男子生徒の声で悪霊の意識はその男子生徒に向いた。
『だれっっ!?』
「ふふっ...そのうち仮は返してもらうからね?泉弥...」
限りなく真っ暗に近い教室で顔はほとんど見えなかった。
しかし、その特徴ある高めの声。そして銃声。
誰かすぐに分かった。
「那衣斗......」
泉弥は半泣き声でその銃使いの名を呼んだ。
「もっと警戒心持って行動しろよな?」
「うぅ...悪りぃ...」
「泣くなよ、みっともない。ってか、乱はどこ行った。アイツも3階いるよな?」
「あー...まだ2-Fいんのかな...」
やっと冷静になった泉弥は、そういえば、と那衣斗に聞いた。
「那衣斗、部室護衛してたんじゃ...?」
「乱に連絡着かないから、李霧が俺に行けって。李霧の能力本当すげぇよなぁ。」
「乱どうしたんだ...ろ...」
泉弥は携帯を開くと同時に目も見開いた。
時刻が19:23を指している。
そして、
『酷いよぉ〜、僕を置き去りにするなんてぇ!もう知らないっ!』
と、なんと悪霊が教室を出てってしまった。
「やっべぇ!!!」
泉弥と那衣斗も続いて教室を出た。
だが。
教室を出た二人が見たのは...
「ハハハハハハ!!見ィつけたぁぁ!!!!」
と、大鎌を器用に周りに気をつけながら悪霊を切り裂く乱の姿だった。
悪霊は切り裂かれたり、打たれたりしても血はでない。悪霊だから。
その代わり濃い紫色の霧が噴き出す。
「乱っ!?」
泉弥は、心なしかいつもより濃い紫色の霧で隠れてしまってる乱を呼んだ。
「すまねぇなぁ!泉弥!!!悪霊が教室出るタイミングずっと見計らってたんだよ!!」
悪霊の姿はもう分からないほど切り刻まれてる。霧が異常に濃いのもそのせいだ。
「なっ...!?」
「浄化完了!!」
乱は高らかに叫んだ。
それと同時に...
「ぐぁっ!?」
「ふざけんな!ふざけんな!!ふざけんな!!!俺超怖かったんだぞ!!お前も浄化してくれるわァ!!!」
と、泉弥から飛び蹴りを食らわされる羽目になった。
那衣斗はそんな二人を余所目に、自分の携帯を開くと、
下校延長もう効かないからな?
俺もう帰る。
李霧のメッセージで初めて気づく。
(あ...)
時刻はもう19:35を指していた。
下校延長は19:30まで。
「お前ら帰るぞ!!!」
と、喧嘩する二人の腕を強引に引っ張り、荷物を取りに部室へ戻った。
そして、警備員に事情を話して、昇降口で待つ李霧と合流し、四人は真っ暗な学校を後にした。
校舎内をすりぬける、濃い紫色の球体に気づかずに...
男子高校生の鬼ごっこはこれで終わりです。
次回、顧問登場。