上手の旋律者(1)
メッセージの送り主は八尾だった。
実は、八尾と乱は幼なじみの関係にあった。連絡先ももちろん交換してある。
よく連絡を取り合うくらい仲はいいのだが、最近来る八尾からのメッセージはいつも同じ内容だった。
李霧のことだ。
八尾が部長を務める弓道部と、乱が部長を務める殺人部。その二つを掛け持ちしている李霧を、八尾はなんとかして、弓道部に本属させようとしているのである。
そのためか、八尾は殺人部をよくは思っていない。(乱と李霧がいるから激しくは嫌っていないようだが。)
その八尾から、殺人部に助けを求めるメッセージが来たのだ。
昔からの友人を放っておける訳ない。
乱はすぐさま、
すぐ行く。待ってろ。
と、返信した。
弓道場に走って向かう最中、乱は一人の生徒を捕まえた。
泉弥だ。
泉弥は生徒会のメンバーと外で話していた。ダンボール入りの資料を届けた後、捕まっていたのだ。
楽しそうに話している泉弥の腕を掴み、乱は弓道場に向かった。
泉弥は訳が分からないまま、生徒会メンバーに「じゃあな!」と声をかけて乱に引っ張られていった。
「ちょぉおお、乱んんんんん!!!どこ行くのおおおおお」
泉弥は何が起きてるか分からず、乱に説明を求めた。
「悪霊が弓道場に出た」
泉弥を引っ張りながら全力で走る乱は、手短に、かつ適当に答えた。
弓道場は校地内の奥の方にある。
安全面の考慮からだ。泉弥を引っ張ってから2分くらい走ると弓道場が見えた。ぼんやりと灯りがついている。通常の完全下校はとっくに過ぎている。この時間居ていいのは、先生と特別な許可を得ている殺人部だけだ。
弓道場が目に入ると同時に、那衣斗と李霧の姿が目に入った。
「那衣斗!李霧!!」
「乱!?」
帰ったと思っていた乱と泉弥の姿を見て李霧と那衣斗は目を丸くした。
「説明はあとな、今は........」
乱は悪霊の方を見やると、若干の恐怖を覚えた。なぜか。
いつもと違うのだ。
青白い肌はいつものことだが、漂う霊気が感じられないのだ。さらに生徒と同じ格好をしてるから、少し顔色の悪い人間と変わらない感じだったのだ。
「覚悟はしてたが...やべぇな、こいつ」
と、乱は呟くと同時に気を手に集中させた。すると、武器の大鎌が光を帯びながら現れた。
他の3人も同様に武器を出現させた。
『四人揃ったのか...もっと楽しくなりそうじゃん!』
「何言ってんだ。お前は今ここで浄化されんだよ」
『...俺も舐められたもんだな。』
「?」
『いいか、説明してやろう』
と言うと、悪霊はニヤニヤしながら話し始めた。
『俺ら、お前らが悪霊って言ってる存在には組織がある。その名も“ノアールプリュム”。そして、階級もある。今までお前らが浄化してきたのは雑魚のFirst。First以上は名前も与えられるんだぜ?ちなみに、俺は四天王の一人、バファモット。覚えとけな』
「...知らなかった....」
悪霊の話を一通り聞いて、乱は呆気にとられていた。他の3人も同じだった。
泉弥はハッと我に返り、時計を見た。
「あと15分しかない!行くぞっ...!!」
泉弥がハンマーを大きく振り上げた瞬間...
「うわぁぁあああああああ!?」
泉弥の体は一瞬のうちに宙に浮いていた。そして思い切り地面に叩きつけられた。
バファモットが泉弥に向かって衝撃波を送っていたのだ。
バファモットは泉弥に向かってニヤッと笑う。
その隙を那衣斗は見逃さなかった。
銃声を響かせながら四発の弾がバファモットに当たった。
「!?」
指と指の間に銃弾を挟み回避していた。
『やめてよね?傷つきたくないんだ♪...あ!そろそろ時間なの??じゃあ俺も本気出すかな!』
バファモットはそう言うと、一瞬黒い霧に包まれた。
霧が晴れると、バファモットはいかにも悪霊、というより悪魔のような格好になっていた。ヴィジュアル系のようにも見える。
するとバファモットはいきなり、決めポーズをすると、
『みんなを地獄の果てまで突き落としてやる♡上手の旋律者バファモットだよ〜☆』
「...」
もう、何が何だか。
『俺をもっと楽しませてよね☆』
「あいつ、キャラ変わった?」
「さぁ...」
「と、とりあえずまずはあいつの浄化だ!」
『バカなヤツらだな...いくよ!!
ギターソロだ!』
というと同時に、超音波が四人を襲った。言葉通りの“悪魔の旋律”だった。
「ぐぅあぁぁあ!!」
乱が呻く。
「...!!!」
那衣斗は声も出ない。
「...んあぁぁあ」
泉弥は地面に膝をついて必死に耐える。
その中、顔を歪めながらも、立ち上がったのは李霧だった。
「先輩たちを苦しめた罪は重いから...な...!」
ヴィジュアル系大好きな作者の趣味です。
バファモットは女形です。一人称は俺ですが。
短編で四天王の活躍を書きたい。