殺人部と弓道部 (5)
「何してんの八尾。」
突然、話しかけてきたのは副部長の五條音緒だった。
李霧は確信した。
取り憑かれているのは五條先輩だ、と。
根拠は自らの生まれつきの能力が語っている。
「五條先輩...」
「何?」
八尾だと疑ってた分、話が切り出しづらい。
そんな李霧の顔を見てからか、那衣斗は察し、
「そこの先輩サン、悪霊に取り憑かれてるよ。」
と、ハッキリ言ってしまった。
その瞬間だった。
五條の顔つきが一変した。
そして、薄笑いを浮かべながら
「あーあ、バレちゃったかぁ...」
と、五條の口から黒紫色の霧のような塊がでてきた。それはどんどん形を変えて、人の形になっていた。
五條は自分からでてきた謎の物質にびっくりした様子で、腰を抜かしてしまっていた。そこに八尾がすかさず駆け寄る。
「な、何...あれ...」
「あの2年が言ってた、悪霊なのか!?」
八尾と五條が驚きをそのまま口にしている中、
「こいつ、かなり強い気を感じる...なのにどうして俺は気づけなかったんだ...!?」
「...憶測だよ。こいつは気を隠すことができるくらいの力持ってたんじゃないか?そして、外でも実体でいれるのは相当じゃないか?」
「この前の鬼ごっこの奴より遥かに強い...のか?」
「鬼ごっこクンは正直格下だよ。泉弥はビビってたけど。」
「そうか...。」
そうこう言ってるうちに、悪霊の形は完全に人の形となっていた。
『こいつらが落ちぶれていくの、見てるの楽しかったなぁ...。もう少しで大会だったのに...残念...!』
「ふっざけんな!お前のせいで、みんな困ってたんだぞ!?」
李霧が珍しく大声をあげた。
「先輩!逃げてください!!ここは、俺と那衣斗でなんとかしますから!!」
「...!?あ、ああ...行こう、五條」
「え、あ、うん...」
「仕方ねぇな...」
ひょい...
「ちょっ!八尾!?」
「暴れんなよ、ほら行くぞ」
八尾は腰を抜かした五條をお姫さま抱っこして、道場に入った。
「さぁ、一仕事しますか...」
「...那衣斗行こう!」
『紫月李霧...羽鳥那衣斗ね...ふふっ、楽しめそうじゃん?』
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「...さすがにいねぇか」
部室の前には乱がいた。
部長会議のあと、担任に呼び出され、レポートの提出がないことをこっぴどく怒られていたのだ。
時刻は19時をとっくに過ぎている。
しかし、殺人部の活動時間内である。誰かしら部室にいると思い、乱は部室に足を運んだのだった。
「帰っかな...」
誰もいないのを確認し、その場から去ろうとしたその時...
ピロンピロン
携帯のメッセージ通知が入った。
内容をすかさず確認する。
そこには...
李霧とその連れが危ない
弓道場に来てくれ
と書いてあった。
(弓道場...?)