家
「やあ、遅かったじゃないか」
「さも自分の家のように振る舞うんじゃねえ。 何故ジュースを飲みながらソファでくつろいでいるんだ」
「小さいことを気にしてるとモテないぞ」
「うるせえ帰れ」
帰宅すると陸がいた。
俺は無言で手を差し出す。
陸は無言でその手を握る。
「違えよ合鍵を渡せ」
「合鍵などない!我は2階の窓から入ってきた!」
「2階の窓は今朝しっかり施錠したし、万が一入れるとしたら換気口くらいだ」
「じゃあ換気口から入ってきたってことで」
「いいから合鍵を渡せ」
「へいへい、語は仕方ないなあ……」
そう言うと陸はズボンの中に手を入れる。そして股間のあたりでもぞもぞと手を動かす。
「あったあった」
そしてそこから鍵を取り出した。
「どこに入れてんだよ!?」
「どこって、パンツの中だけど。落としたら困るし」
「おまえのパンツはどんな構造になってるんだよ。むしろ落とすだろ」
「わかってないなあ語。これはな―――」
「いやいい、わかりたくもない」
俺は鍵をティッシュ越しに受け取り、包んでその辺に置いておく。
「で、何をしに来たんだ?」
「……ただ来ただけだよ?」
「……帰れ」
「断る」
「帰れ」
「断る」
「……」
「……」
「警察呼ぶぞ」
「その時は語の恋人です!って言って誤魔化す!」
「やめろ!!!」
こいつと話していると疲れる……。
結局陸はこの後、何事もなかったかのように帰っていった。