幕間 前。
夜風の部屋の窓が少しだけ開いていた。
外から吹き込む風に押されて、カーテンが揺れる。
風に流れて部屋に夜が、入り込んでくる。
そのたびに窓の外の星の光が、部屋の中央に二つ並んで敷かれた布団に落ちる。
仰向けになったテレウァンは、腕を組み、天井を見つめている。
ワタリは横向きになり、テレウァンと反対側に顔を向けていた。
「テレウァン。」
ワタリが呼ぶ。
「お前、夕凪ちゃんに言ってないだろ。」
「何の事だ?あと、テレウァン王子と呼べ。」
テレウァンは目を閉じたまま答えた。
ワタリは小さく息を吐く。
「ボクらは、人間にとって毒だってことだ。ボクらが転生して一ヶ月経てば、本体は転生に対する同期の負荷に耐えられず、体の組織構造がぐちゃぐちゃになる。その体も、もう残り三週間くらいが限界だろ?」
「ああ。言えばあいつ、癇癪を起こすだろうな。」
「そんなの、隠し通せないぞ。」
ワタリは天井を見上げた。
「いい。」
テレウァンははっきり言い切った。
「その頃にはまた、別の人間に転生している。他人同士になるだけだ。」
風が吹き込み、カーテンが大きく膨らむ。
「絶対に、夕凪には言うなよ。」
ワタリは上体を起こしかけて、やめた。
「お前は、間違っている。」
声が少しだけ強くなる。
「夕凪ちゃんは、ボクが幸せにする。もう誰も、お前に殺されてほしくない。お前は人の死や痛み、感情がわからないんだ。」
テレウァンは、ようやく目を開けた。
星の光が、彼の頬に乗る。
「その間に、必ずミナミディスコを見つける。」
「お前にミナミディスコは、絶対に渡さない。」
「私が手に入れなければならない。私でなければ、意味がないんだ。」
テレウァンは、天井に向かって呟いた。
「……あとさ。」
「なんだよ。もう寝ろよ、鬱陶しい。」
「瑞羽って人に、ルマルマの事教えたか?」
「いや、この世界に来てから口に出したことはない。」
「……そうか。」
「それがどうしたんだ?」
「なんで彼女、ボクらの種族の名前を知ってたんだ…?」
答えは導き出されず、再び沈黙が二人の間に訪れる。
二つの布団の間を、夜風が静かに通り抜けていった。




