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11.黄金の女王蜂、るえか。


「撃て撃て撃て撃て!!」


バンッ。バンッ。バンッ。バンッ。


るえかは、テレウァンの掛け声と同時に引き金を引いていた。

銃声が重なり、弾丸が次々と人工衛星に撃ち込まれる。


人工衛星は衝撃に押され、どんどんと後方へ下がっていき、窓際へと追い詰められた。


「窓を撃て! 私が行く!」


テレウァンは地を強く踏み鳴らし、一直線に人工衛星へ走り出す。


それと同時に彼の影から、ギラギラと輝くミラーボールが顕現した。


「え!嘘!夜風くんもそれ出せんの!?」


「ボサっとするな!」


バンッ。


るえかが一発、窓に撃ち込むと、ガラスは乾いた音を立てて砕け散った。


「シンクレイッ!!」


走りながらテレウァンが叫ぶと、ミラーボールは裂け、


バラバラバラバラ…。


と、プロペラ音が廊下に響き渡った。


姿を現したヘリコプターの取っ手を掴むと同時に、伸びた触手が、テレウァンの身体をがっちりと支えた。


速度を上げ、そのままヘリコプターは人工衛星へと衝突した。


ガシャンッ!!


人工衛星は光を溜め始めたが、間に合わず、テレウァンとヘリコプターの体当たりをまともに受け、窓枠ごと外へ弾き飛ばされた。


だが、


「これはっ!?」


窓の向こうには、ビルの屋上と青空があるはずだった。

しかし、飛び出した先に待っていたのは、駅のホームだった。

振り返ると、そこには待合室のドア。

顔を上げると、ホームにいる人たちが恐怖に凍りついた顔でテレウァンを見ていた。


「なるほど…、やはり厄介な能力だ……。」



****************



一方その頃、とあるビルのテナント階。


「え!え!?ええ!??夜風くん、どこ行っちゃったの!?落ちた!?え?マジ!?ヤバくない!?てかいないんだけど、どゆこと……?」


るえかが振り返ると、背後には四基のパドルが浮かび、まるで獲物を睨みつけるように照準を合わせていた。


「るえか達、もしかしてハメらちゃった!?」


返事の代わりに、パドルが輝き始め、光を吸収し始める。

反射的に、るえかの手が太ももへ伸びる。

スカートの内側に巻かれたホルスターに指がかかり、するりと銃が引き抜かれた。


「……あ、見ないでね?」


走りながら、四基のパドルへ向けて両手に握った銃の引き金を引いた。


バンッ。

バンッ。

バンッ。

バンッ。

バンッ。


銃声が連なり、弾丸が金属の外装を崩していく。

完全に破壊はできないが、それでも確実に効いていた。


るえかは壁を蹴り、軽やかに宙へ跳ぶ。

身体をひねり、最も近い一基へと距離を詰める。


そして二つの銃口をぴたりと押し当て、至近距離で撃ち抜く。


バンッ。


「一つ!」


火花が散り、金属がひしゃげ、一基のパドルは力なく落下した。


カチャ。


力の抜けた金属音。


「……ありゃ。弾切れか」


るえかは一瞬だけ口を尖らせてから、弾の切れた一丁を床に放る。

その瞬間、

三方向から、光の筋が放たれた。


「っ!!」


るえかは跳んだ。

三本の熱光線は、るえかの間を縫って、すべてかわされた。

宙を舞うその姿は、まるで優雅な白鳥が水面をなぞるような、美しい軌道だった。


「うーん、この銃弾じゃあ決定打にはならないなあー…。」


一瞬、るえかは顔を下げ、メガネ越しではなく、裸眼で廊下の状況を見渡した。


「仕方ない。るえか爆弾、参りますか。」


るえかは一丁の銃を両手で構え、発砲しながらパドルへ前進した。

パドルとぶつかる直前、スライディングで床に転がったもう一丁の銃を掠め取るように拾い上げ、グリップ脇に仕込まれた改造レバーを、親指で押し上げる。

その銃を後ろへぽいっと投げ、すぐさま手元の銃で撃ち抜いた。


その瞬間、銃が弾け、爆風が四基のパドルをまとめて吹き飛ばした。


「トリプルキル!!」


るえかはホルスターに銃をしまい、非常口を抜けた。

外気にさらされた非常階段に腰を下ろすと、ポケットから紙巻き煙草を一本取り出す。

少しだけ迷うような仕草のあと、火をつけた。

ゆっくり吸い込み、細く煙を吐く。


熱と苦味が肺に落ちていくのを、しばし味わってから呟いた。


「そんなに強くなかったなあー。」


風に当たりながら、るえかはアミューズメント施設のビルを見る。


「さて、るえかもそちらに戻りますか。」


そう言って、るえかはタバコの火をもみ消した。

非常口を抜け、エレベーターの前に立ち、降りボタンを押す。


カチッ。


「……。」


カチッ。カチッ。


ランプは点かない。

待てども、音もしない。

エレベーターが降りてくる気配も、手応えも微塵もない。


「止まってるやーーーん!!!」


思わず叫び声を上げ、るえかは額から汗を垂らす。

しばらく無言でドアを睨みつけた後、振り返る。

そこには、非常階段の緑のマークだけが、やけに頼もしげに光っていた。


「えーーー……。」


るえかはまるで渋柿を丸かじりしたように、あからさまに顔をしかめ、口元をひん曲げた。


「ん?待てよー。」


ふと、何か思いついたようで、ポンと拳を手のひらに当てた。

視線は、テレウァンが飛び出したきり、消えてしまった窓枠へと向いた。


るえかは、床に飛び散った破片から、できるだけ大きいのを拾い上げ、よいしょ、よいしょと窓枠まで運んだ。


そしてそれを窓から思い切り外へ投げた。


「これ、もしるえかの思った通りにならんかったら、割とヤバい事してるよね…。間違いやったら普通にクビや…。」


そう呟きながら、そーっと顔半分だけ窓の外に出し、恐る恐る、下をのぞいた。


「……ない!やっぱりなくなってる!!」


ぽいっ。


ぽいっ。ぽいっ。


魔法でもかかったのか。

それからというもの、その窓にいくら物を放り込んでも、下へ落ちていくことはなかった。

窓を越えた瞬間、それらは綺麗さっぱり、消えてしまった。


「よーーーし!」


るえかは腹を括る。

後ろへ下がり、軽く息を整え、助走をつけて、思い切り窓枠へ突っ込んだ。


「あいだっ!!」


落下は思ったより早く、るえかの体は地面にペタンと情けない音を立てて落ちた。

顔を上げると、人の視線が突き刺さっているのに気付く。

周囲にいた人間たちが、一斉にこちらを見ていた。

驚き、恐怖、困惑。

感情の混じった無数の目が、るえかに向けられている。


「え、なっ!え?は?ええ…?」


るえかは顔を真っ赤にし、俯きながら即座に立ち上がった。

辺りを見回すと、そこはどう見ても駅のホームだった。


「……!?」


お尻や腕、足を払い、何もなかったという風にそそくさとその場を後にし、出口へ伸びるエスカレーターに乗った。


「ここ…、大阪駅のホーム…?え、駅直結すぎん…?なんで?もう意味わからん…。」


頭の中が追いつかないまま、エスカレーターを抜ける。

とにかく一度、改札を出ようとした、その時。

見覚えのある背中が目に入った。


「夜風くんっ!!」


タッタッタッ。


るえかは小走りで夜風に歩み寄った。


「ねえ!夜風くんっ!!」


るえかは夜風らしき人物の肩をトントンと叩く。


「あ、女!助けてくれ!このバカが一向にここを通してくれん!」


「はえ?」


テレウァンは、改札横の窓口で駅員と揉めていた。


というのも、当然である。


彼は切符を持たずしてホームに現れたからだ。


「あ、そういう事ね!任せて!」


るえかは一歩前に出て、胸を張った。


「失礼します。るえかは警察であります。先程の爆発の件で、ここを調べさせていただいてました。彼は第一目撃者で、捜査に協力中なだけであります。」


「るえかは警察です。先程の爆発の件でここを調べさせてもらっていました。彼は第一目撃者で、捜査に協力してもらっていただけであります。」


「そうでございましたか!大変失礼致しました!」


駅員の態度は、見事に一瞬でひっくり返った。


るえかとテレウァンは改札を出て、そのままアミューズメント施設へと駆け出した。


「ねえ、夜風くん!君、何者なの!?てかなんで窓から飛び降りたら駅のホーム出てきてたの!?いや、大体喫煙所から、あの変なオフィスビルに出てきた時からおかしい!どゆこと!?」


「いっぺんに聞くな!あれは奴のシンクレイの能力だろうな。とにかく、あいつを引っ捕らえたら全部わかるだろ。」


「君のさっきのヘリコプターも?」


「……ああ。」


「楽しみ!やる気出てきた!!」



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