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ぶた。

作者: 明日朝明日
掲載日:2025/11/02

ぶた!

私は朝起きたら、豚になっていた。

豚の顔になっていた。


私は鏡が大嫌いで、家でも学校でも、どこでも顔の映るものは避けて生きていた。

顔が大嫌いだった。

私の顔が。


醜くて、歪んでいて、まるで人間に見えなかった。

友達みんなが私を笑っているような、蔑んでいるような気が毎日起きていた。

私を産んでくれたお母さん、お父さんに顔向けできないような話だけど、

二人とも大好きだけど、やっぱり私の顔は大嫌いだった。


そんなとき、なぜか私は朝目が覚めると、豚の顔になっていた。

そう訴えると家族みんな驚いて、怖がっていた。

何かの病気? 何かに取り憑かれた?

原因も対処も分からなかった。


学校に行けば、友達、先生、知らない人から顔を見られた。

でも、でも私はなぜか、なんでか分からないけど、

顔が変わってから鏡を見ることに、顔を見ることに、何の抵抗もなくなっていた。


以前は憎いほどに嫌いだった私の顔が、

むしろ大好きに、愛おしくなったのだ。


みんなに顔をからかわれても、豚みたいと言われても何も感じない。

実際に豚になったわけなので、傷つきもしない。


私は自信を持つようになった。

みんなに向けられた視線は、私の美意識を高めた。

きちんとメイクをして、服装を整えて、髪の毛もきれいにする。

以前なら考えられなかった。


人並みの営みを、当たり前にできるようになった。

顔は豚のままだけど、豚のままだからこそ、

私は逆に、それが“私”だと思えるようになった。


少し経つと、みんなが私の顔に慣れたのか、友達が増えはじめた。

気さくに話しかけてくれるようになった。

私も少しずつ人と話す力が伸びてきて、

なんと驚いたことに、彼氏ができた。


人生初の彼氏。

彼は私のすべてを愛してくれた。

一緒にダイエットのためのランニングもしてくれたし、一緒に勉強もした。


なんて幸せなのだろう。

前を向いて歩けるようになることが、こんなに幸せなのか。


そしてあるとき、友達たちから「一緒にプリクラを撮ろう」とせがまれた。

人生で初めての体験で、心が躍った。

何枚か撮り、印刷された写真を見てみると、そこには――


人間の顔の私がいた。

満面の笑みで笑っていた。

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― 新着の感想 ―
 人間は見た目じゃないってことですよね。  多分そのことに自他共に気づけたことで呪い(?)が解けたということでしょうか。  これがそんな劣等感からきた呪いだとするのなら、今度は自信がお呪いとなり美人に…
想像していたストーリーとは違いますが、でも豚が題材なので良いなと思いました。 そうなんです。細かいことを気にしなければ幸せになるっていう話ですよね、たぶん。
なかなか屈折していて、だけどラストにはストーンと落ちていて、なぜか納得させられるという不思議な論法でした。 最初の「ぶた!」がかわいい(*´艸`*)
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