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真実を暴露する話

竜の上から真実を暴露する

作者: 氷桜 零
掲載日:2025/10/25

真実を暴露する話、第八弾。

別名、愛の告白。


私、王太子アルトゥールは、長期にわたる国外視察と交渉を終え、約半年ぶりに帰国した。

交渉にはかなりの時間がかかったが、おかげで妥協せずに良い取引が出来た。

満足のいく結果に心を躍らせながら、父である国王に報告をしたところだ。

父としても、満足のいく結果だったらしく、お褒めの言葉をいただいた。


「では父上、これで失礼します。」


「ああ、ちょっと待て。お前に伝えておかなければいけないことがある。」


いつもなら、呼び止められることがないのに。

珍しいことだ。

何故か嫌な予感がした。


「……何でしょう?」


「王太子妃、ルクレツィアのことだ。」


「彼女に何か!?」


「非常に言いづらいのだがな、嫁が実家の領に帰った。」


「……母上が?」


「違うわっ!ルクレツィアだと言っただろう。」


「は?」


「まあ、普段のお前の言動を見るに、仕方がないことだな。」


「なっ!」



彼女が実家に帰った?

私の普段の態度のせい?

た、確かにちゃんと言っていないこともあったが、いつも彼女はわかってくれた。


……本当にそうか?

彼女に我慢させていただけでは?

まさか、このまま離婚……?

それは嫌だ。

彼女のいない日常なんて、考えられない。


「父上、急用が出来ました。竜をお借りします。」


「迎えにいくのか?」


「当然。」


足早に父の執務室を去り、竜舎に向かった。

通常の移動なら馬車を使うが、今は緊急事態なので、竜で飛ぶことにする。

父にも一応宣言したし、大丈夫だろう。


竜舎の奥には、他の竜よりも一回り大きい、白竜がいた。

私の相棒、ヴルートだ。


「ヴルート。ルクレツィアが、実家の公爵領に帰ってしまった。急いで向かいたい。」


〈離婚か?〉


「そんなわけあるか!」


〈ははは!まあ、良い。連れて行ってやろう。〉


「頼む。」


ヴルートに手綱と鞍をつけ、飛行場にでる。


「殿下!?」


「緊急事態だ。」


「護衛は!?」


「要らん。」


竜の世話役が聞いてくるが、問答している時間も惜しい。

後ろで騒いでいるが、今はそれどころではないので、無視する。


ヴルートに跨り、身体を固定した。


「行くぞ。」


〈うむ。〉


「殿下ーーー!」


ヴルートの羽ばたきで、一気に上昇する。

ヴルートが全力で飛んだら、公爵領まで30分。



ルクレツィア、どうか公爵領にいてくれ。

君に伝えなければいけないことが、たくさんあるんだ。



私は手綱を強く握り締め、空を睨んだ。




公爵領の上空に入り、少しずつ速度を落とす。


深呼吸をして、緊張で強張った身体を落ち着かせた。

だが公爵邸が見えると、どうしても力が入ってしまう。

公爵邸の二階のテラスに、よく知った姿を見つけた。

半年ぶりのルクレツィアだ。


早る私は、竜に乗ったまま、ルクレツィアに声をかけた。


「ルクレツィア、帰ってくるのが遅くなってすまなかった!決して、君を蔑ろにしたわけじゃない!君に似合う月色の絹を見つけて、どうしても手に入れたかったんだ!君に着てほしくて!」


「え、あのアルトゥール様?何を……」


「ルクレツィア、私は君を愛している!誰よりも努力しているところ、辛くても笑顔で頑張るところ、社交界で女性をやり込めるところ、厳しい顔で叱責するところ、可愛いものを見ると目を輝かせるところ、甘いものを食べると頬を緩めるところ、二人っきりになったら赤くなって恥じらうところ、拗ねると頬を膨らませるところ、触れると恥ずかしがって逃げるところ!すべて愛している!」


「あ、アルトゥール様!?ちょ……やめ……」


ルクレツィアが慌てて立ち上がり、何かを言いかけているが、自分のことが精一杯で全く気づかなかった。


「刺繍が苦手で唸っているところ、私の肖像画を大切に隠し持っているところ、こっそり夜食を作ってくれるところ、遅くなっても寝ないで待っていてくれるところ、小さな背や胸も、顔も、唇も、手も、全て愛してる!」


「お願い、もうやめて。恥ずかしくて、死んじゃいそう……」


ルクレツィアは全身を真っ赤に染めて、蹲る。

それすら気づかないくらい、私は愛を伝えることに必死だった。


「だからどうか、帰ってきてくれ!離婚するなんて、言わないでくれ!ルクレツィアに嫌われたら生きていけない……」


「……え?離婚なんて、一言も言ってませんが!?」


ルクレツィアの叫びが耳に届いた。


「……え?本当に?嘘でも冗談でもなく?」


「本当です!」


「じゃあ、どうして実家に帰ったんだ?」


「それは、その……報告があって……」


「報告?」


ルクレツィアは、真っ赤な顔で、下腹に両手を当てた。



潤んだ目がまた可愛い。

こういう顔も好きだ。

意地悪するのもいいかも……

いやいや、そうじゃなくて。

まさか……



「子ども?」


「……はい。」


はにかんだ顔もまた良い。


「ルクレツィア!ああ、ルクレツィア!ありがとう!嬉しいよ!」


竜からテラスに飛び降りて、私はルクレツィアを抱きしめた。


「良かった。良かった。てっきり、嫌われたのかと……」


「仕方のない方。嫌うなんて、離婚だなんて有り得ません。もう少し信じてくださいな。」


「ルクレツィアのことは、疑ったことはない。自分が信用できないんだ。」


お腹に負担を与えないように、ギュッと抱きしめる。

腕の中の暖かさに、涙が出そうだ。

そんな私の背を、ルクレツィアはいつまでも撫でてくれたのだった。





それから、公爵邸に数日滞在して、ルクレツィアと共に城に戻った。

戻ったのだが、数日前と城の雰囲気が何か違う。

だが、嫌な感じではない。

むしろ、何だか妙に生暖かいような。

ルクレツィアもそれを感じ取ったのか、不思議そうな顔をしている。


父に問いただしたいことと報告があるので、ルクレツィアと共に執務室に赴いた。

出迎えてくれた父は、ニコニコ、いや、ニヤニヤした顔だった。

非常に腹の立つ顔だ。


「父上、ルクレツィアと帰還しました。が、どういう事ですか!?一時的に、公爵邸に戻っただけではないですか!」


「別に、離婚とは言っていないだろう?実家に帰ったことと、お前の言動を責めただけだ。お前の早とちりだな。」


「うぐっ、た、確かにそうですが……」


「いや〜それにしても、盛大な愛の告白だったな!」


「「え?」」


ルクレツィアと私の声が被る。

何故、父が知っているのか。

嫌な予感がする。


「心配になって、魔道具でずっと聞いていたんだ。それにうっかりしていて、放音してしまったんだ。王都中に。」


「はあ!?」


「いや〜、王都中お祭り騒ぎだったよ。未来の国王夫妻の仲が熱々でな!城のみんなも大喜びだった!はっはっはっ!」


「ち、父上ーーー!!」


にやけ顔の父、怒り心頭の私、真っ赤になって固まるルクレツィア。

執務室は、カオスな状態になっていた。


それから城内を歩いていると、年配からは揶揄う視線を、若い層からは微笑ましい視線を向けられて、しばらく恥ずかしい思いをしたのだった。



別の作品もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
一言だけ、最高に良いです。
王都では「王太子様&王太子妃様アツアツご懐妊おめでとうフェスティバル」が開催中! 「小さな背や胸も」って言ってたけど胸が小さいってディスってるのかな?それともチッパイ好きかな?嫁に怒られなくて良かった…
これまでの真実と違って、これはほっこりする真実ですね。 国内に愛が周知されてみんなからなま暖かい目で見られ、末長くお幸せにバカヤロー、などと祝福の声が絶えないでしょうね。 お子さんの誕生を国民が楽しみ…
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